009 何から手を付けよう?

 と言っても、そう難しくは無い。

 まず“お店を開店する”を基準に考えると、“商品を作る”のはその前。売る物が無いとどうしようも無いから。

 柵と庭も前かな? 外見が悪いと、お客さんが来ないだろうし。

 ついでに、庭の薬草使って商品を作れば良いよね。

 残りの井戸の改善、お風呂、魔道コンロは独立しているから、時間があるときに回せば良い。

「となれば、最初は柵か。商品作りは日が落ちてからでもできるし」

 家の前の柵を軽く蹴ってみる。


 ポコ、ベキ。


 ……うん、あっさり倒れた。これは完全に作り直しだね。

 杭を打って横木を渡しただけの簡単な柵だから、大工さんに頼むほどじゃないかなぁ?

 資金節約のためにも、ここは自分でやるべき?

 錬金術師は錬成具アーティファクト作製の関係で、多少の木工はできるんだよね。

 とはいえ、大工道具は持ってないんだけど。

 学校では実習室を使っていたし、師匠の所ではお店の道具を借りていたから。


 というわけで、やってきました雑貨屋です。

「こんにちは~」

「あ、サラサさん、昨日はすみませんでした! 帰って値段を聞いて、私……」

「あー、こっちこそごめんね? お礼のつもりだったんだけど、気軽にあげるにはちょっと高かったみたいで。逆に私の方も布と綿を貰っちゃったし」

 私の顔を見て、慌てたようにやってくるロレアさんに、私は手をぱたぱたと振って応えた。

「いえ! 是非貰ってください! お父さん、あれでも釣り合わないって言ってました。それくらい貰ってくれないと、逆に私たちがあの布を使いづらいので」

 あー、うん、そういう部分はあるかもね。

 特に今後、あの布をお店で売り出すとなると、半日のお手伝いで貰った、というのは双方にとってあまり良くないか。

「それなら、ありがたく貰っておくね」

「ぜひぜひ。――ところで、今日は?」

「大工道具とか置いてるかな? 一通り欲しいんだけど」

「あ、はい。普通の家庭で使う物ぐらいなら。良い物は直接ジズドさんに頼んだ方が良いですけど。サラサさん、何かするんですか?」

「ちょっと柵を修理しようかと思ってね」

「えっ? ご自分で、ですか? ゲベルクお爺さんに頼まないんですか?」

 ロレアさんは驚いたように言うけど、そこまで意外?

 柵を作る程度、簡単だよね?

「ん~、あのくらいなら自分でもできるかなって」

「えぇ~~、大工仕事って結構難しいですよ? サラサさん、やったことあります?」

「多少は?」

 あまり大きな物や複雑な物は作ったこと無いが、細かい木工作業は錬成具アーティファクト作製にも必要となるときがあるので、学校でも習っている。

 それ以前にも、孤児院では自分たちで何とかするのが基本だったので、物や建物が壊れた場合、直せる物は自分たちでやっていた。

 普段の手伝いを免除してもらっている関係上、こういった突発的な物に関しては頑張って手伝っていたのだ。

 なので、大工仕事の難しさもある程度解っている。

 板を真っ直ぐ切るだけでも結構難しいんだよね。のこぎりの入りが少し曲がっているだけで、切り終わったときには結構斜めになってしまうのだ。

 ただ、家の柵は、杭を打ってそこに細長い板を渡してあるだけなので、自分でもできると思ったんだけど……。

「うーん、一度、ゲベルクお爺さんに相談してみてはどうですか? ぶっきらぼうですけど、親切な方ですから、アドバイスももらえると思いますよ?」

「そう、ね。お店の補修も頼まないといけないし……。ただ、大工道具自体は必要だから、それは買うね」

「はーい、まいどあり、です」


 ロレアさんから受け取った大工道具が思った以上に重かったので、ひとまず家に置きに戻ったあと、ゲベルクさんの所に向かった。

 雑貨屋さんと比べて一見普通の民家だから入りにくいんだけど、意を決して声を掛ける。

「すみませーん」

 ちょっと声が小さかったかな? と思ったのだが、少し待つとゲベルクさんが奥から出てきてくれた。

「ん? なんだ、嬢ちゃんかい。何か用かい?」

「実は、ご相談がありまして……家の回りの柵を直そうと思っているのですが、木材を分けてもらうことはできますか? それとも、自分でやるのは難しいでしょうか?」

「嬢ちゃんが、か? そう言うってこたぁ、多少はやったことあんだろ? 売ってやるこたぁできるが……まあ、続きは現場を見てからだな。――ほら、行くぞ!」

「は、はい」

 年齢を全く感じさせない歩みのゲベルクさんの後を追い家に到着。

 草臥れた柵を『これです』と示す。

「ふーむ、この柵か。かなりいたんどるな。やんなら、全部作り直した方が良いが、嬢ちゃん、コレを全部一人でやるつもりか?」

 そう言って家の周りをぐるりと指さすゲベルクさん。

 そういえば、結構広い裏庭もあるし、距離的には何十メートルもあるよね……。

 少し大変かも?

「……ちょっと、多いでしょうか?」

「ちょっとか? まぁいいが。嬢ちゃんがどんだけの腕か知らんが、一人でやってどれくらいかかる? その分、錬金術師として働いた方が稼げるんじゃねぇのか?」

「……それも、そうです、ね」

 よくよく考えれば、柵の修繕は人任せにして、早くお店を開いて錬金アイテムを販売した方が、たぶん稼げる。

 孤児院時代から学生時代にかけて、とにかくお金を使わないように、できることは自分でやる、という精神だったので、まず自分で直すと言うことを考えたけど、よくよく考えれば私はもう一人前の錬金術師なのだ。

 誰もがうらやむ、高給取りの錬金術師様。

 それが私!

 私、頑張った! 人生、勝ち組!

 ……いやいや、落ち着け。

 さすがにそこまで言うのはアレだけど、専門外は人を雇うというのも今後は必要になることだよね。その方が、錬金術関係に専念できるし?

「わかりました! では、お願いできますか? あと、ついでにあの看板の補修と壁の修繕も!」

 私がビシリと落ちかかった看板を指さすと、ゲベルクさんもそちらに目をやり、納得したように頷いた。

「ああ、確かにそっちも必要そうだな。柵は今と同じ感じで良いのか?」

「えーっと、お店の前はそれで良いんですが、側面と裏側はせっかくなので、二メートルぐらいの板塀いたべいにしてもらえますか?」

「そりゃ構わんが、なんでじゃ? 板塀はその分、高くなるぞ?」

「いえ、その、私も一応、女の子なので、洗濯物とか、あんまり見えない方が、ね?」

「はっ! この田舎でそんなもん気にするヤツなんぞおらんわ。第一、隣の家とも離れとるじゃろうが。――まぁ、客の注文なら作るがな!」

 うん、まぁ、確かに裏庭に洗濯物を干しても、あんまり見えないとは思う。

 一番近いエルズさん宅ともそれなりに離れているし、回りには木が茂っていて、裏はすぐ側まで森が迫っているため、見通し自体悪い。

 それでもやっぱり、気分的に、ねぇ。

 王都では部屋干しだったけど、ここなら塀さえできれば気軽に干せるようになるし。

 あとは、裏庭の畑を小動物なんかに、荒らされないようにしたいということもある。

 逆に、お店の前はお客さんが入りやすいように、簡単な柵のまま。

 そのあたりの希望も合わせて伝え、打ち合わせた結果、裏側と側面の中程までは膝ぐらいまでの石垣を作り、その上に板塀、それ以外の場所は開放感を重視した柵という構成に決まった。

 また、裏庭へと続く側面の通路には簡単な門を作って、出入りを制限できるようにした上で、裏庭の板塀にも扉を付けて、利便性を確保した。

 看板や壁面に関してはよく解らないので、すべてお任せ。

 その他の細かい部分もお任せ。

 ゲベルクさんなら良い感じにしてくれるに違いない!

 そう伝えたら、ゲベルクさんは「ふんっ」と鼻を鳴らして、「明日から工事を始めるからな」と言い置いて帰って行った。

「あれは……きっと照れたんだよね、うん。気を悪くはしてない……よね?」

 気になるけど……今は時間が無い。

 一日でベッドを作り上げるほど仕事が早いゲベルクさんだから、本当に明日から工事が始まりそう。

 そうなると、柵の周りにある小銭薬草は無駄になる!

「回収しないと!」

 家からカゴを持ってきて、柵沿いに生えている薬草をひたすら抜いていく。

「おっと、これは貴重なやつだ!」

 摘んでしまうのは勿体ないので、根っこごと掘り上げて避けておく。

 あとから植え直そう。

「草は放置で良いよね」

 石垣を作るのなら、ある程度掘り返されるはず。

 わざわざ抜いておく必要も無い。

 そのままぐるりと一周。

 柵の内側、庭になる部分は薬草を回収しながら草抜き。

 そんな作業を、苦手な身体強化も併用しながら、夕方までひたすら行う。

 途中休んだのは昼食の時と水分補給の時のみ。

 ひじょーに疲れたけど、その甲斐もあって、荒れ放題だった庭は見られるレベルまで回復していた。

「いやー、正直私、頑張りすぎじゃない?」

 まだこれから、商品作りがあるんだけど。

 今日採取した薬草はともかく、初日に採取した薬草はそろそろ使わないと効果が落ちてしまう。

 一応、簡単な保存処理はしてるから、明日までならなんとかなりそうだけど、明日は明日で今日採取した物があるわけだし。

「ただ、貴重な薬草が多かったのは嬉しい誤算だったね!」

 普通に買うと結構高い薬草が、何種類も生えていたんだよ。

 もちろん、前の持ち主が植えていたからだろうけど、枯れずに残っていたことが凄い。

 普通の薬草とは価値が違うから、当然全部回収して、きちんと耕した畑に植え直したよ。

 これでタダで作れる錬成薬ポーションの種類が、ぐーんと広がる。

 良いよね、タダって言葉!

「でも今は、少し休憩しよ。さすがに疲れた……」

 私は家に入って軽く身体を拭くと、温かい食事を求めて食堂へと足を向けた。


    ◇    ◇    ◇


 翌日、いつもより少し遅い時間に目を覚ますと、何やら家の前が騒がしかった。

「んぅ~~ん? 何だっけ?」

 昨日の夜は結構遅かったので、頭がはっきりしない。

 当初こそ、程々で切り上げる予定だった錬成薬ポーション作り。

 それが、途中で薬瓶が足りなくなったあたりから予定が狂い始めた。

 薬瓶が無ければ作るしかないよね?

 作るためにはガラス炉に火を入れないといけないよね?

 そうなるともうダメ。

 一度ガラスを溶かすと、使ってしまわないと色々面倒なのだ。

 で、ひたすら薬瓶作り。

 冷えた端から錬成薬ポーションを注ぎ、密封。

 それを繰り返し、最終的にガラスをすべて使い切る頃にはすでに外は白み始めていた。

 おかげで商品は大量にできたんだけど……。

「あー、う~~?」

 のそのそと身体を起こし、窓から外を覗くと……男の人がいっぱい。

 ……あ、そういえば今日から柵を作り始めるって言ってたっけ。

 さすがゲベルクさん、思ってた以上に迅速だよ。

 昨日の今日、しかも朝から始めるとか……。

 すでに家の前には資材が積み上げられ始めている。

 挨拶、しないといけないよね、やっぱり。

 私は疲れた身体に鞭を打って起き上がると、身なりを整えて外に出た。

「おはようございます、ゲベルクさん」

「おう、おはよう、嬢ちゃん。庭、随分綺麗になったな?」

 ゲベルクさんが示すのは、昨日頑張って“荒れ果てた庭”から“少し手入れを怠った庭”にクラスチェンジを果たしたウチの庭。

 まだ草を抜いただけなので、さすがに“手入れの行き届いた庭”にはほど遠いけど、随分マシになったのは確か。

「ええ、まぁ、それなりに頑張りました」

「疲れているのはそれが原因か?」

「解りますか? それも原因の一つですね」

 身なりを整えたつもりだったけど、見て解る程度には疲れが表に出ているらしい。

 どっちかと言えば、寝不足の方が辛いんだけどね。

「それで、えっと、えっと、こちらの方たちは……?」

「こいつらは村の男衆だ。大規模な作業の時には呼んどる。問題ないたぁ思うが、いらんちょっかいかける奴がいたらワシに言え。根性、叩き直してやる」

 そう言うゲベルクさんの右手にはでっかいハンマー。

 それを軽々と、ブンブン振っている。

 それじゃ、根性を“叩き直す”じゃなくて、“叩きつぶす”にならないかな?

 ゲベルクさんの言葉に一部の人が顔を青くしたのは、たぶん気のせいじゃない。

「おはようございます、皆さん。先日引っ越してきた錬金術師のサラサです。よろしくお願いします」

 まだ挨拶していない人たちだったので、この機会に丁寧に頭を下げておこう。

 私がそう言うと、皆さん、和やかに口々に挨拶を返してくれたんだけど……すみません、名前は覚えられそうにありません。

「こいつらのことは無理に覚える必要は無いぞ。どうせ自炊するならそのうち覚えることになる」

 そんな私の困惑を察したのか、ゲベルクさんがフォローを入れてくれた。

 どうやらここにいる人たちは、普段は農業をしている臨時雇いの人たちらしい。

 そのため野菜などが必要になれば、そのうちまた顔を合わすことになる。

 つまり先日、エルズさんに村の案内を頼んだとき、後回しにしてしまった人たちってわけだね。

 うん、頑張って覚えよう。

「それで、作業はもう始めても良いのか?」

「はい、お願いします。あっ、裏庭の畑には薬草が植えてあるので、そこだけは気をつけてください」

 せっかく貴重な薬草を掘り上げて移植したのだから、もしも踏まれでもしたら結構悲しい。

「おう、俺はプロ、こいつらは本業農家、解ってるさ。そいじゃお前たち、手はず通り頼むぞ!」

「「「おう!」」」

 ゲベルクさんの号令に威勢の良い声で応え、男の人たちが動き出した。

 見る見るうちにボロボロの柵が撤去されていく。

 ゲベルクさんの方は家の壁や看板を確認しているので、手分けして作業を進めるのかな?

「あの、私は何かやることありますか?」

「ああ? 面倒くせーこと言わねぇのなら、別に用事はねぇな」

「そうですか? それならお任せします」

 すでにゲベルクさんにお任せしたのだ。

 作業中にあれこれ言って邪魔するつもりも無いし、何より眠い。

 私は素直に家に戻ると、もうしばらくの間、二度寝を楽しんだのだった。


    ◇    ◇    ◇


 次に私が目覚めたのは、完全に日が昇りきって、昼間近という時間帯。

 再びのそのそと起き出し、窓から外を見ると、家の前の簡単な柵はもうできあがっていた。

「うわっ、さすがに仕事が早い……側面は……うん、さすがにまだだよね」

 側面にある窓から覗けば、そちら側はさすがに石垣積みの真っ最中。

 こっちまで出来ていたら、さすがに異常だよね。

「お昼は……適当で良いか」

 食べに行くのも面倒だったので、買い置きの干し肉なんかで朝食兼昼食を済まし、軽く体操をして身体を解す。

「よしっ!」

 家を出て裏手に回ると、石垣は全体の半分程度がすでに出来上がっていた。

「ゲベルクさん、お疲れ様です。順調ですね」

「おう、嬢ちゃん。そうだな、今日中に支柱を立てる所までやって、明日の午前中に板を張って、門扉を作って完成ってとこだな」

「早いですねぇ。助かります」

「壁の方も直しておいたが、看板は数日待ってくれ」

「――あ、本当だ、直ってる。看板も了解です」

 ゲベルクさんに言われて家の方を見ると、何カ所かあった漆喰のひび割れが、綺麗に塗り直されていた。

「それじゃ、よろしくお願いします」

「任せておけ!」

 力強く請け負ってくれたゲベルクさんから離れ、私は辺りを見回す。

 柵に関しては私が手伝うことは無いみたいなので、私は前庭を“手入れの行き届いた庭”にクラスチェンジできるよう、努力しようかな?

 うーん、薬草は無くなったから、あと適当に草を刈り込んで、木の剪定と花壇でも作ろう。

 せっかくの自分のお店、どうせなら可愛いお店が良いじゃない?

 花の綺麗な薬草を植えれば、一石二鳥だし。

 とはいえ、花や葉っぱを使うタイプは花壇に植えるのには向かないから、花が終わったあとの根っこや種を使うタイプじゃないとダメだよね。

「まずは木の剪定から」

 適当に伸びすぎている部分を切り落としていく……魔法で。

 のこぎりは買ったけど、背の高くない私にとって、高木の剪定はちょっと大変なのだ。

 魔法だと細かいことは出来ないけど、木に登る必要も、踏み台を用意する必要も無い。

 切り落としたあとは、引っかかっている枝を風で吹き飛ばし、庭の隅に一纏めにしておく。

 草の方もやっぱり魔法で解決。

 広い部分はザックリと刈り取り、家や柵のすぐ側だけ、手作業で丁寧に。

 普通の魔術師にはできない細かい魔法の制御も、錬金術師にとってみればたやすいことよ!

「ふっふっふ、便利だよねー、魔法って」

 私の華麗な(?)魔法捌きに目を丸くする人たちを尻目に、私は作業を進めていく。

 まぁ、華麗かどうかは別にしても、こういう使い方にはかなりの制御力が必要になるから、できる人は限られていることは確か。

 そうでなければ、錬金術師の数はもっと増えていただろう。

「花壇は……アプローチの脇と、家の壁際で良いかな?」

 位置を決めたらザクザクと土を掘り返し、その周りには丸太で境を作る。

 この丸太は家の裏の森から適当に切り出してきた物で、一応、ゲベルクさんに確認して、このへんの森を切り出しても問題ないというお墨付きはもらっている。

 丸太を担いで戻ってきた私に、男の人たちから驚愕の視線が注がれたんだけど、これ、身体強化してますからね?

 あえて主張はしないけど、素じゃかなりひ弱ですから、私。

「よし、できた~~!」

 剪定された植木と綺麗に刈り揃えられた草、野趣溢れる――いや、素朴な感じの花壇。

 これはもう、“手入れの行き届いた庭”と言っても良いんじゃないかな?

 あとは……。

「花壇、何を植えよう……?」

 手持ちの素材の中で、花が綺麗な薬草を思い浮かべる。

 どの薬草も花は案外綺麗なのだが、種が手元にあるのは種自体が錬金素材になる物のみ。

 私が持っているのは飽くまで錬金術の素材。葉っぱを使う薬草は葉っぱしか持ってないし、根っこを使う薬草も乾燥させた根っこなので、植えたところで芽は出ない。

「時期は良いから、大抵の物は大丈夫なはずだけど……」

 幸い、今は春。

 播く時期としては悪くない。

 ついでに言えば、種を使う薬草なら、花が終わるまで花壇に植えておけるので、観賞用としても悪くない。

 葉っぱや花を使う薬草だと、途中で毟ってしまう事になるので、花壇としては台無しだからね。

 私はしばらく考えて、アプローチ脇には小さくて白い可愛い花が咲く薬草、家の前には青紫の少し大きめの花が咲く薬草を植えた。

「こっちは蔦を伸ばすから、芽が出るまでに支柱も準備しないとね」

 どちらも強い薬草なので、芽が出ないということは無いと思う。

 花に囲まれて営業する自分のお店を夢想して、私は一人笑みを浮かべた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る