悪趣味

 彼女はそれを機に精神を病み、精神科の医師の指示により当時の出来事を事細かに日記に記させられたそうです。

 後に私が見たそれにはその出来事があまりにも細かく記されていました。私は何度も目を覆いながら、何度も、何度もそれを読んだのです。


「……!!……!!!」

「おい!お前の妹ってコレかよっ!!」


 男は怒っていた。

 家を踏み荒らしてまで捕まえたもう一頭が不良品だったからです。


「女は……女よ……」


 皮肉にもそれは彼女がするヘレンへの初めての肯定でした。


「いやぁ、言ってやるなよ兄弟……」「り……リーダー!?」


 片手にナイフを握る男が口笛混じりに男に近づいてきたそうです。

 痩せ型で小柄な男だが、彼女には彼の危険さが肌で感じられたと記されていました。特別震えた字で記された特徴、鋭い目つきはいかにもな悪意を投影し、その手先でくるくると回されているナイフは使い込まれている様で彼の動作からは刃物を持っているという危なげな意識が全く伝わってこなかったそうです。


「いいじゃん♪獣っぽいのとか、たまにはさぁ」

「……へへ……そ、っすよね」


 男は笑った。心からの同意ではない様でしたがリーダーと呼んだ男の目が笑えといった様に思えたから無理に絞り出した。そんな笑みでした。


「お前ら後な……俺、周りが五月蝿いの嫌いなのよ♪」

「……」「……」


 その先には何も記されませんでした。

 そして、私がそこに間に合う事はありませんでした。

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