第2話 死後転生

 眠気が段々と薄れていく感覚。瞼が開き、ぼんやりと光を受け入れる。

 不思議なことに腕の感覚も脚の感覚も無い。寝起きに目をこすって眠気を覚ましていた習慣があったが、今は不自然なほどに視界がクリアになっていき思考力も戻ってくる。

 私はある事を思い出した。

 寝るまでが1日理論を適用するなら昨夜の事。私は確か私邸の食堂から寝室へ行く途中で意識が途絶えてしまったはずだ。だがどうしてか今は体の境界線をやさしく包み込まれている感覚がある。通常なら固い床か長年使い古した布団に包まれているはずである。

「それは君が死んでしまったからだよ」

 声は突然聞こえてきた。驚く暇もなく眼前に現れたのは少年と形容して問題ないほどの背丈で話しかけてきた存在であった。

 少年はいつからいたのか気付かなかったが、見たこともないほどの美貌に古代ローマを彷彿とさせる1枚布を体に巻き付けた出で立ちであった。

「死んでしまったとは如何に? 私はこうして存在しているのでは?」

「ここは死と転生の間だからね」

 その一言で私の問いに答えたとでも言いたげな納得顔で見つめてくる。

「君は選ばれたんだよ。これから転生させてあげることができるんだけどどうかな?」

 突飛な提案に理解が追い付いていないが文字通り受け取るなら私は第二の人生が用意されているらしい。

「君の功績を称えて次の世界で君は神の能力を一部あげるからね。その力で次の世界で過ごしてみてよ。そこで何をするのかは自由だよ」

 本格的に思考が停止してきた。執政時代に査察した遺伝子研究所の所長に熱弁された人類の進化の可能性についてより難しい。

「まぁまぁ仕方ないさ。人間に理解できるような神は存在しないからね」

「ん?あなたは神であらせられるのか?」

 すると彼は軽く頷き腕を組んで胸を張って見せた。

「神は唯一神であったのか」

「それは君たちが勝手に決めてるだけだよ。僕は0であり1であり無限でもある。数え方なんていくらでもあるさ」

 長年の疑問が口をついて飛び出したが神はそれに答えてくれた。その後幾許かの時間、私は宗教学について解明されずにいた疑問をぶつけ長年の謎を解明する好奇心を満たす時間を味わった。

「じゃあ、そろそろ転生の時間だね。これから行く世界は君のいた地球で言う所の原始時代、ホモサピエンスが全大陸に分布したころだ」

 そう聞いた私の心には若き青春時代に抱いた探求心が芽生えた。

「でも、ひとつだけ違う点があるからね。僕の残滓を強く残してきた世界だから不思議なことがいっぱいだよ」

 私の心は幼少期に冒険譚を読んだ時のごとく浮足立っているのを自覚できる程にメラメラと燃えていた。

「じゃ、楽しいセカンドライフを!」

 その言葉とともに私の意識は加速していき光に包まれたのであった。

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前世の徳は異世界で creator_creation @creator_creation

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