第44話:樹と天宮②

 天宮と樹は次の店へとやってきた。

 そこは女性物の洋服屋さんであった。


「桐生さん見てくださいこの服なんて可愛いですよ」


 そう言って天宮は洋服を手に取り樹に見せてくる。

 笑みを浮かべながら洋服を見せてくる天宮に、樹は心の中で呟いた。


(その笑みは反則だろ……)


「ああ。可愛いな」


 樹は両方の意味で答えた。


「ですよね♪」


 天宮か服を選んでいると女性店員が話しかけてきた。


「お客様何かお探しですか?!」

「え、えっと~」


 滅茶苦茶張り切った店員が声をかけてきた。

 そんな店員に困惑する天宮は、救いを求めるかのような目でこちらを見てきた。

 仕方なく店員に声をかけることに。


「あの~」

「はい。彼氏さんですよね? どんな服を彼女に着てもらいたいのですか?!」


 店員の発言に顔を真っ赤に染めた天宮。


「き、桐生さんが私のか、彼氏……」


 何か言っていたのだが樹には聞こえていなかった。

 樹は頬を若干赤く染めながらも店員へと口を開いた。


「い、いや、俺達は付き合ってる訳ではないんだ」

「てっきり仲良しでしたのでお二人はカップルなのかと……」


 申し訳ございません、と頭を下げて謝る店員。


「気にしてませんから。むしろその……」


 最後の言葉は樹には届いていなかったが店員には聞こえており、その意味と表情から、店員の内に秘めている恋愛レーダーが反応を示した。


 ガシッと天宮の手を握った店員は、天宮に聞こえる声量で囁いた。


「あなた可愛いのだから、絶対に彼のハートを掴み取るのよ!」


 店員の言葉に天宮はボンッと顔を真っ赤にさせ、口元をあわあわさせる。


「な、なんでわ、分かったのですか!?」

「あなたの顔に、彼が好きだと書いてあるもの」

「ッ!? き、桐生さん次に行きましょう!」

「えっ? あっ、ちょっと天宮!?」


 天宮にら連れて行かれる樹と天宮に、笑顔で手を振る店員。そして店員は、上司から叱れるのであった。



 樹と天宮は現在カフェにいた。

 二人の顔の赤みは常に引いており、談笑しながらお茶を楽しんでいた。


「桐生さんはどこか行きたい場所とかありますか?」


 天宮の問に樹は考える。

 このショッピングモールには多くの店が集まっているとはいえ、樹は天宮へのプレゼントを探すために来たのだ。それに樹は欲しい物が無かったのだ。


 いつまで経っても答えが返ってこないので天宮が声をかけた。


「あの……」

「あ~悪い悪い。そうだな……特に行きたい場所は無いかな」

「そう、ですか……」


 シュンと落ち込む天宮。


「自分だけ行きたい場所に行っていたので……」

「気にするなよ。俺は天宮が行きたい場所ならどこでもいいから。こっちは気にするな。もしあったら言うよ」

「……絶対ですよ? 絶対に言って下さいね?」

「あ、ああ……誓うよ」

「分かりました。では行きましょう」


 こうして二人はショッピングモールを歩いて、時には店に入り見て行くのだった。



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