第45話:考えても難しい

 樹と天宮はショッピングモールで夕飯を済ませ家に帰った。天宮を家まで送って行った樹が家に着いた。


 リビングに行くと、楓と菜月の姿が見えなかった。


「ただいま父さん、母さんと菜月は?」

「おかえり。二人で出かけてまだ帰って来てないな」

「そうか」


 樹が自室に戻ろうとするのを、東が引き止めた。


「樹待て」

「……何か用?」


 振り返った樹に東は口を開いた。


「最近悩んでいないか?」

「父さん、急にどうしたの?」


 悩んでいるのかと問われれば、樹は悩んでいると答えるだろう。父である東には、樹は嘘を付きたくはなかった。なので樹は正直に答えた。


「実は──」



 樹は天宮の名前を伏せ説明をする。


「なるほどな。誕生日とクリスマスが一緒なのか」

「ああ。それでクリスマスプレゼントの方は決まってるんだが肝心の誕生日プレゼントを何にしようかと……」


 樹が話している間の東の顔は真剣であった。

 聞き終えた東は頷いてから口を開いた。


「その判断は正しいな。それと誕生日プレゼントはお前、樹の気持ちが籠っていれば何でも喜ぶんじゃないか?」

「……同じことを友達にも言われたよ」

「そうか。それで……相手は誰だ?」


 唐突に樹へとそう尋ねた東の表情は、笑みを浮かべていた。その相手が誰なのかと、東はおおよその検討は付けていた。


「言うわけないだろ。友達だ友達」

「そうかそうか。そう言うことにしておく」

「だから違……はぁ、もういいや風呂入って寝る」

「おう」


 樹はお風呂に行くのだった。


「気持ちが籠ってれば、か……」


 湯船に浸かりながら樹はポツリ呟いた。

 確かに一条や東が言う通り、プレゼントは気持ちが大事なのだろう。


 なら何にするのか……それを考えていた。

 それからお風呂を出た樹は自室のベッドに横たわり、考える。

 初めて異性に渡すプレゼントだ。

 ネックレスか、と考えたがすぐに首を横に振って否定した。


「明日もあるしゆっくり考えるとするかな」


 電気を消した樹はそのまま眠りに付くのだった。


「お兄ちゃん朝だよ! お、き……てーっ!!」

「ふぐぅぅっ!」


 樹の部屋に入ってきた菜月は、尻から樹のお腹へとダイブした。樹はその衝撃で、肺の空気が口から外に吐き出され目を覚ました。


「な、なんだよ……今日は日曜日だぞ……もう少し寝かせてくれ」


 時計を見ると朝の八時であった。

 あともう一時間寝たいところであった。

 布団を頭まで被り二度寝しようとした樹を、菜月は布団を引き剥がした。


「寒い……」


 ブルブルッと震えそう言った樹であったが、菜月はムスッとした。


「学校が休みでも生活習慣はしっかりしないとダメだよお兄ちゃん!」

「うっ……」


 正論過ぎて何も反論が出来なかった。

 仕方なく起きる樹はそのままパジャマを抜ぎ始めた。


「な、な、何で人前で急に脱ぐの!」


 顔を赤くし両手で目を覆った菜月だが、指の隙間からチラチラと樹の方を見ていた。

 菜月は気になっちゃう年頃なのだ!


「……着替えるんだから当たり前だろ。それと早く俺の上から退いてくれ。着替えずらい」

「ご、ごめんね!」


 すぐに樹の上から降りた菜月はそそくさと部屋を出て行った。


「何がしたかったんだ……?」


 樹は頭に疑問符を浮かべたが、取り敢えず着替え下に向かう。


「おはよう樹」

「おはよう」

「おはよう、母さん、父さん」

「ほら朝食よ」

「ありがとう」


 樹は椅子に座り朝食を食べ始めた。

 東はソファーに座りコーヒーを片手に新聞を読んでいた。

 菜月はスマホを弄っていた。恐らくゲームかトークで友達と話しているのだろう。

 そんなこんなで日曜日がゆっくりと過ぎて行くのだった。




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