第43話:樹と天宮①
「まっしーとつっきーばいば~い☆」
「またな樹」
一条と朝比奈は、樹と天宮へと手を降ってどこかに向かう。手を振り返し二人の背中を見届けた樹と天宮は、互いに顔を合わせた。
「俺達も行くか……」
「は、はい」
若干顔が赤いままの天宮。
「どうした? さっきから顔が赤いけど……」
樹は自分のおでこと天宮のおでこに手の平を当て、天宮に熱があるかを確かめた。
思いもよらない行動に、天宮の顔がボンッという勢いで真っ赤に紅潮し俯いてしまう。
「うーん。少し熱っぽ──」
「私達も早く行きましょう!」
「え? あっ、ちょっとま──」
樹は天宮に手を掴まれて引っ張られ連れて行かれた。
顔が赤くなったのが自分でも分かる天宮は、誤魔化すように樹の手を引っ張ったのだが……
(ど、どうしましょう! 勢いとはいえ、桐生さんとて、手を繋いじゃってますよ!?)
予想以上に焦っていた。
どこに行くかも決めてはいない。
(そ、そういえば……)
天宮は思い出し、行ってみたかったぬいぐるみが沢山売っているお店に向かった。
「天宮、ここはもしかして……」
天宮に手を引っ張られ連れて来られた店を見た樹は口を開いた。
「ここって……」
「はい。ぬいぐるみが売ってるところです。少し高いんですけどね」
天宮は少し頬を赤く染まらせる程度にまで治まっていた。今は自然と手を繋いでいるが、天宮は手を繋いでいることを忘れているようだった。
「桐生さん早く行きましょう」
「おう」
ショッピングモールということもあり、ありとあらゆる店が一つの建物の中に入っていた。
なのでドアなども無く入口はオープンの状態であった。天宮に引っ張られる形で店に入った樹。
有名どころのぬいぐるみからオリジナルのぬいぐるみ。それからシンプルなぬいぐるみまでもが、店内にずらりと並んでいた。
「桐生さんコレとか──ってすみません!」
樹と手を繋いでいたことに気づいた天宮は、咄嗟に手を離して樹へと謝罪した。
天宮に謝罪された樹はそのままでも良かったのだが。
「いや、気にしないでくれ。別にそれくらいならいつでもいいよ」
むしろ歓迎だよ、と言う樹に天宮は顔を赤くしてしまった。店内にいる店員とお客からは、天宮へと生暖かい視線が送られていた。それに気づいて恥ずかしくなり一気に顔を紅潮させた天宮だった。
それから顔の赤みが引いて落ち着きを取り戻した天宮は、樹と一緒にぬいぐるみを見て回っていた。
「見てくださいこれ。可愛いですよ」
ぬいぐるみを手に取って樹へと微笑みかける天宮。
ぬいぐるみと美少女。しかもクマさんというのが反則である。ぶっちゃけ可愛過ぎるのだ。
(聖女様。いや……天使様か女神様のようだ! 尊い……)
樹の目には天宮が光り輝いてみえていた。
天使か女神と言われれば樹は直ぐに納得していただろう。
天宮に答えないといけないので樹は口を開いた。
「か、可愛いな。やっぱりクマは茶色が一番かな」
「ですよね!」
それから店内を見て回ったが、天宮には先程のぬいぐるみが一番可愛いようであった。
「そろそろ次の店にでも行ってみようか」
「そうですね。少し長居しすぎました」
二人はぬいぐるみショップを出て次の店に向かった。
そして樹は、先程のぬいぐるみを天宮クリスマスプレゼントにすることを決めるのだった。
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