第24話:長瀞ライン下りからの絶景
電車に揺れること暫し。
景色は街の風景からガラリと変わり、山が多くなってきた。
電車の窓を見た樹は、その光景に声を漏らした。
「綺麗だな」
樹の声に釣られて天宮も外を見て目を大きく見開いた。
「綺麗、ですね」
山の木々は黄色やオレンジ、赤色といったカラーで色鮮やかに彩られていた。
しばらく樹と天宮の二人はその光景を目に焼き付けていた。
『次は長瀞~、長瀞でございます。御乗車は──……』
車内アナウンスが聞こえた。
「もう長瀞みたいだな」
「みたいですね。楽しみです」
「俺もだ」
紅葉は丁度見時のようで樹はホッとした。
これでシーズンを過ぎていたら、天宮に顔向け出来なかった所であった。
長瀞駅に到着し二人は電車を降りホームに降り立つ。
休日だからか観光客はそれなりに多かった。
ホームすぐ近くには宝登山神社があるが、長瀞ライン下りを先にする前に岩畳まで移動することにした。
長瀞岩畳通りを移動しながら、途中の店外で鮎の塩焼きを売っているお店があったり、お土産の店や飲食店が建ち並んでおり、風情ある所となっている。
「色々売っているんだな」
「そうみたいですね。鮎の塩焼きは美味しそうです」
「だよな~、腹が減る」
「ふふっ」
天宮に笑われてしまった。
そこから樹と天宮の二人は先に進む。
河川へと降りる階段まで着いた二人はその光景に息を呑む。
それは電車内から見た景色とはまた格別の景色。
赤や黄色、オレンジなどといった様々な色で木々が彩られていたのだ。
「綺麗です」
「ああ。来てよかったな」
「はい」
そこから少し散策した二人は、長瀞駅近くにあるライン下り本部へと移動した。
そこから無料バスが出ており開始地点まで送迎してくれるのだ。
本部に着いた樹と天宮はチケットを見せ、バスに乗り込む。
ライン下りにはコースがあり、Aコースは親鼻橋から岩畳まで。Bコースは岩畳から高砂橋まで。全コースが親鼻橋から高砂橋までとなってとり、樹と天宮のコースは絶対コースとなっていた。
移動の間はバスから秩父の景色を楽しんだ。
少しして開始地点の親鼻橋に到着しガイドの人から説明を受ける。
船に乗れる人数は十数人となっており、樹と天宮は先頭に座ることになった。
服の上にはライフジャケットを着る。
「緊張しますね」
「全くだ。だけど……」
「はい……」
二人が見る先には秩父の長瀞渓谷ならではの紅葉の景色。そして、ガイドの合図と共に船が動き出す。
この時期のライン下りの見所はなっといっても紅葉である。それと同時に何ヶ所かにチェックポイントがある。
船は川の流れに沿ってゆっくりと進む。
まず最初に見えたのは荒川橋粱である。これは秩父鉄道が走る橋であり、運が良いと走る電車を見ることができる。
それからもどんどん下って行き、亀の子岩、小滝の瀬、秩父赤壁、岩畳の順と見ていき、Aコースの停留所であり、樹と天宮が最初に散策した所まで下ってきた。
樹と天宮は景色の写真を撮りながらと更に下って行く。
急流スポットの大河瀬を通り、金石水管橋を通り過ぎた。少しすると岩と渓谷美が迫ってきた。
紅葉と相まって物凄く美しい景色である。
そこからさらに下りカエルに似たカエル岩を見て、船はとうとう終点である高砂橋へと着くのであった。
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