第41話大王の声と怪人の心(sideカイト)

 その時だった。

 頭の中に大王の声が鳴り響く。以前の強烈な支配的な声とは違い、ただ頭の中で響いているだけ。体が膠着することもなく、意識は自分を保つことが出来た。それは多分、この白いヒーロースーツを着ているからなのかとも思えた。


【カイトよ! また舞い戻って来て何をする? ワシを倒しにでも来たか?今度は、どこまで耐えられる? この状況、どうやって抜けるのか楽しみだな……。お前の大好きな愛美まなみが目の前に立ちはだかっておるぞ?】


「くそっ! 大王め! 小賢しいことしやがって! 直ぐ様ここに出て来い! そして相手しろ!」


【いくらワシの支配力から逸脱しようが、ワシまでは、たどり着けまい! 殺せるか? 大好きな愛美まなみを! ハハッハ! ギャラギャラ!】


 愛美は繭のロッドを俺に乱れ打つ。俺は、それを何とか躱すが、愛美まなみは俺の名を呼びながら、ロッドを何重にも重ねて、打ってくる。そして、また頭の中で大王の声。


愛美まなみの今の姿に驚いておろう!?それは以前の、お前の姿と似つかわしい姿】


愛美まなみちゃんに何をしたぁ!? 大王! 貴様!」


【ギャラギャラ! お前がワシの言うことを聞かずに、反抗するから!お前の大好きな、愛美まなみを今度は、お前と同じ姿の怪人へと改造してやった。言わばお前の分身だ! 倒せるか!?】


「カイトくん、カイトくん、カイトくん……」


 何もわからずに唯、俺の名を、叫び、攻撃を加える愛美まなみが、可哀想に見えた。

「やめろ! 愛美まなみ! 俺がわからないのか!?」


【叫んだところで、どうにかなるものでもあるまい。ギャラギャラ!】


 俺は、打ちたくない衝撃波を愛美まなみに向けて、手をかざした。渾身の力の50%で、波動を打ち出す。だが、それは白いロッドで簡単に弾かれる。

「くっ!? どうすれば……」

「アハハハハッ! カイトくん! いい顔!」と愛美まなみの声。その笑い方が本心から言っているのか、どうか確かめるために、俺は、瞬間的に移動して、愛美まなみの目の前に姿を出す。そして頭を取った。頭と頭を引っ付けて、こいつの心の中を覗き込む。怪人同士の共鳴。すると、中から聞こえてくるのは「カイトくん助けて! 私は操られている!」と言う愛美まなみちゃんの叫びだった。


「やはり! 大王!」


 急に愛美まなみの怪人が、俺に、ロッドをぶち当てて引き離す。そして……。声は愛美まなみだが、普段言わない口ぶりで俺に促す。


「カイト……付いて来い! 良い物を見せてやる!」


 愛美まなみの怪人は塔の上空へと舞い上がっていく。俺はそれを追いかける様に登って行った。

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