第40話叫びに応えて(sideカイト)

 自身の放った波動により、体力を奪い、AIアンプルを使い只野主任を人間に戻すことに成功した。残り3本のうち2本のアンプルを、バババギャーンたちに渡し、先を急いだ。


 栄華えいがと共に官邸内へと進む。俺の波動により、意識を失ったジャッカルたちを尻目に先を急いでいると、大荒部長おおあれぶちょう怪人かいじんへと変貌した姿で俺たちの名を呼ぶ!


「カイト、よくぞ舞い戻った! 大王様にやられていて、ここまでよく来たものだ! 褒めてやろう! だが、ここまでだ。覚悟しろ。我の波動には叶うまいて!」

「くっそぉ! ここにきて、こいつ……。かなりの手練……以前の俺だったら無理だったろうが……今の俺は、白のタイツを纏ったヒーローだ!」

「待てカイト! ここは俺が引き受ける。余り時間を食うと、日本中が、ジャッカルだらけになる! 早く大王との最終決着をつけろ!」と栄華が立ち塞がる。

「しっかし! いけるのか? 栄華えいがさん?」

「俺を誰だと思っている?君の小さい頃より、ヒーローをしていたんだぞ?」

「俺にやられておいて……」

「……それは今は無しだ!先を急げ!」


「お前なぞ、俺の敵ではないわ!」


俺は、立ち塞がる大荒部長おおあれぶちょうに衝撃波を一度放ち、その場からジャンプして抜けようとする。しかし食らいつく大荒部長おおあれぶちょう栄華えいがさんの攻撃を脆くも喰らい、俺の名を叫んで崩れた。この戦闘空域を抜けられると、踏んだその時だった。官邸内部の階段。上部へ伸びる塔から、聞き慣れた声。


「カイトくん! カイトくん! カイトくん!」


 スゥッと気配を消しながら空中を飛び、現れたのは、人間であるはずの愛美まなみちゃん。

 だが、彼女は、空中を浮遊しながら、俺の名を優しい声で呼んでいた。


「カイト……く…ん」と言われた時だった……。


 愛美ちゃんの口から何かが飛び出した。繭のようなその物体。以前、俺も経験がある。俺自身が、繭に包まれて……。

 茶褐色に光だした愛美まなみちゃんがいた……。


「こっこれは……」


 その姿に驚愕した。俺が、以前、纏っていた怪人と同じ怪人の姿……。

カブトムシの茶褐色に光っているが、つのが片方だけ長く、後ろから髪の様に伸びる白い繭。まさしく以前の俺の怪人姿の女版と言っていい。

 そいつがいきなり、優しい口調で俺に繭を飛ばした。否、それは硬いロッドだった。


「うわっ!」


 衝撃で、左腕のタイツが少し削られた。渾身の力を込めて、波動を放ってみたが、茶褐色に光る怪人の波動と火花を散らし上空へと払いのけられた。


「こっ、こいつやるぞ!? どうする? 愛美まなみちゃんだろ!? 愛美まなみ!」と叫んだ。


だが、帰ってくるのは、愛美まなみちゃんの「カイトくん!」と言う、優しい口調の彼女の言葉だけ。見る姿は、全く怪人へと変貌していたのだった。

 どうする?俺……。

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