第39話俺の波動(sideカイト)

 栄華えいがに言われた通り、スーツフォルダに身を任せた。体に光が纏い、そして、白く輝く。タイツが全身を覆う。ほんの数日前までは、馬鹿にしていたこのタイツを俺が纏っている。


 これから向かう場所。それは大王が、再び待ち受ける場所。一度敗れた俺に、再度チャンスがあるとするならば、母さんが、与えてくれた父さんの情報と、この白いタイツスーツ。俺が真のヒーローになれるかどうかはわからないが、今、大王を倒さなければ、日本は滅ぶだろう。そして世界もいずれ……。


 そんな事は、絶対あってはならない。母さんと、父さんが、守ったこの日本を、今度は俺が守る!気持ちを高ぶらせると、白いスーツが体に定着した。


「行くぞ! カイト! 俺たちと並列について来い! 水島駅周辺の敵をまずは蹴蹴散らすぞ!」

「了解した! 栄華えいがさんだったな? 先導よろしく!」


 俺たちは、WORLD支部を後に、空を滑降していく。白いタイツの足元からは、空を切るバーナーの炎が上がって、体を空中へと浮かせながら空を飛んでいた。


 先にスナイパー部隊の突入なのか、前方で閃光と爆発音が鳴り響く。


「始まった! 俺たちも続くぞ!」


 バババギャーンが叫ぶ。俺も目標に向けて、より力が入る。何より、愛美まなみちゃんの事が気にかかる。あれから、会う事ができていない。彼女は、今どこで、何をしているのだろうか。無事であればいいと思いながら、編隊を組み、水島駅付近。


 地上には、無数のジャッカルたちが、群がって住宅街を埋め尽くし、駅周辺の人間たちがジャッカルたちへと、変貌していく姿。その中に、聞き覚えのある声と、見たことある人物。否、怪人だ。


「ハァハハハハハハ! ジャッカルたちよ。もっと増えろ! WORLDの編隊など切り崩してしまえ!」


 先ほどの閃光と爆発音は、スナイパー部隊がやった攻撃では無いのかと思った。見ればスナイパー部隊が駅周辺に倒れこみやられていた。


「スッスナイパーが……」栄華えいがたちが叫ぶ。


 俺は、その驚愕の声を聞き、渾身の力を込めて、体から発せられる波動を解き放った。


「おっ、おい。待て、カイト!」


 そんな声は無視だった。怪人と白いタイツの力が混じり合ったこの力を試したかった。どこまで通用するのと……。ジャッカルの雑魚どももヤれ無いのであれば、白いタイツを来ている意味など無い。怪人かいじんの俺の力にプラスαで、どうにかしたかった。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 変身はしなくとも、人間の状態で、波動はもうすでに身につけていた。地上へ向けて放たれた波動が、ジャッカルたちを飲み込んでいく。その中に、怪人の只野ただのも一緒だ。


「波動!」


 只野ただのも波動を打ち返す。しかし、俺の波動には、ただの怪人かいじん只野主任ただのしゅにんは、到底及びもしない。そのままそいつは、飲み込まれた。だが、空中で未だに立ち止まって、抵抗を続けようとする姿に、怪人魂かいじんだましいを感じた。


 そこまでして、大王に支える何かがあるのだと……。だから俺は、只野ただのを人間に戻すべく、持っていたAIアンプルを動けない只野ただのに突き刺した。


「ぐうううううおおおおおおお!」叫ぶと同時に光が放たれた。


怪人かいじん 姿の只野ただのから、普通の人間にゆっくりと戻っていく。


「お前ら、これで官邸へと雪崩込めるぞ!」


俺は、波動一発で一蹴したジャッカルたちと、怪人の只野ただのを見て、栄華えいがたちに促した。 これが白いスーツを、着た真の姿かとも思ったが、それにしては、余りにも、俺の体に、定着し過ぎていると、感じていた。

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