第35話祝福の紅い酒(sideカイト)

【よくやったぁ。カイトよぉ……。その巨大カーゴを破壊して戻ってこい】


「ウグゥ! まだぁ……聞こえる……」


 緑のおっさんを一撃で倒した後、炎上する巨大カーゴにジャンプした時だった。頭の中の声が大きくなり、金色ゴールドに光った波動の光りから体全体に響き渡る。渾身の力を込めて振りほどこうとするが、腕から白い繭が何本も飛び出しカーゴへ向けて放たれた!


「フォオオオオオオオオオオオ!」(やめろぉおおおおおおおおおお!)


 自分自身で放たれた繭の渦は上空の炎上するカーゴへとドリル状に穴を開けようと回転し直撃した。鈍い音ともに更に炎上を繰り返すカーゴ。ジャンプした俺自身の体も繭に引き込まれるようにカーゴへと引き寄せられる。腕を引き放せそうとしたら、スッと繭が戻り、再度繭がカーゴへ向けて突進する。


「クソォ! 俺の腕! どうしまったんだぁ。大王よ! 大王よ! 聞こえるんなら俺の叫びを聞け!」


 無数に伸びる繭を何度も引き離そうと試みたが、結局カーゴに穴が開き、とうとう炎上を繰り返しカーゴは墜落していく……。荒れ果てた地上へ向けてゆっくりと……。


「母さん。母さん!」


 何度も叫んだ。そして最大の怒りと最大の力を込めた時、体の自由が少しだけ効いた。墜落するカーゴの後方部へたどり着き、小さく波動を放った。すると脆くも後方部の扉が砕け飛び中へと侵入することが出来た。中にはバババギャーンたちが消化にあたっていた。


「あんた!何しに来たの!」


 ピンクの鳥居いずみが声を挙げる。母親の居場所はどこだと尋ねると新しいカーゴが到着してそれに乗せ変えるから安心しろと促された。仕方なく俺も消化活動に入ろうとした時、腕から急に白の繭が飛び出し前方の扉を破壊した。それと同時に3人の男の声が悲鳴が聞こえた……。そして再度頭の中に俺を呼ぶ大王の声……。


【よくやった。破壊は成功だ。戻ってこい。祝勝の祝い酒といこう】


 その言葉を聞いた時、意識が持っていかれるような感覚。そして瞬時にしてカーゴの中の情景が変わった。瞬時にして現れた景色は、大王製薬本部ビルの最上部、外から見られる景色に変わった。


 地上には、車が何台も通る大通り。最上部の電灯だけが灯った状態だった。カーテンが掛けられていて内部が確認できないが、異様な波動を放った人物がいることだけは感覚でわかった。


「フォフォフォフォフォフォ」(なんだぁ?この感覚・・・)


 最上部の部屋のカーテンがソッと開けられた。そこには腹を突き出し、人間の姿ではない、口から二本牙を生やし、モヒカン調に上部へと伸びる白髪につり上がった大きな目玉の怪人がワイングラスを持ち微笑んでいた。


【逆らった罰を受ける時だ……。祝い酒と共に……そして最期にワシの君臨する城をとくと見よ】


 頭に響いた言葉と共に、最上階の窓枠が破れ、ガラスが飛び散り、一気に俺に向けて波動が打ち放たれた!腕をクロスにしてガード態勢に入ったが、俺の波動と、大王の波動が激突して、両脇に波動の波が流れた。


 一瞬にして後ろ、側面下方部へと波動が流れて、ビル群が砕け散っていく様が見えた。お互いの、強烈な波動領域の波は、瞬く間に、その半径50m以上を廃墟とさせ、あちこちで人々の悲鳴が聞こえた。


 その状態に、怒りを覚えた俺は、更に、波動を一気に解放させた。しかし、大王の波動は、俺の波動を更に上回り、俺に、衝撃波を与えた。


 そして、その波動の波は、紅紫色をした波動……。いや何やら、以前、飲んだことのあるシャンパンと、ワインと同じ感覚を味わった。


「ほぉーれ、祝い酒だぁ。お前の真骨頂を見せてみろ!」


 頭の中の声が今度は目の前から聞こえた。体の自由が効く!そう感じた瞬間に、俺は、大王に突進していた。喉が枯れるぐらいの、叫び声をあげて……。だが、決着は一瞬の出来事だった……。


 大王の波動の波の中から、大きな空気圧の拳が、突如として出現。ガードをする暇もなく、直接的に、脇側面にヒットした。唸り声をあげて、白い翼が、もがれるような感覚を味わった。


 これほどまでに、大王と俺の力に差があるのかと思ったが、俺も衝撃波の繭を、無数に飛び出し、大王へ向けて放った。


 だが、大王は、また大きな空気の層の拳を翳し、繭を一気に掴み取り、上から下へと投げつけた。その衝撃が俺の体全体に貫き、痛みで意識が飛びそうになった。その時、また頭の中に大王のあざ笑う声が鳴り響いた。


【フハハッ! ギャラギャラ! お前なんぞに負けるわけがなかろう!】

【ギャラギャラ! ワシの時代の到来じゃ、とくと見よ!】


 そう頭に聞こえた瞬間、俺の体が後方のビルに直撃。ビルの瓦礫を突き抜け空へとお追い出される体。翼を広げようとしたが、そのまま大王の波動により吹き飛ばされていく。


 そして意識が遠くなる瞬間、大王製薬本部ビルの内部から巨大な樹木が伸びるように、巨大な塔が出現し本部ビルを破壊した。その最頂部から大王のあざ笑う声が鳴り響いていて意識は遠のいた……。


「だっだいおう……」

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