第34話VSカイト(side栄華)

 いきなり私の挙動が可笑しくなった。全身黒ずくめにドス黒く光り、モジモジと体をクネらせるしか出来ない私を見て、真面目な顔をして英雄ヒデオが言う。


「なにやってんすか? この状況下で」


 否、違う私の意思ではないと伝えたかったが、出た言葉がまた異様だった。


「シャラップ。オメーに関係あるか?」


 フザケタ口調でノリノリで体を揺らす私自身……。どうにかなってしまったのかと頭では思うが言葉と、体の自由が効かず身勝手に動き出した。

「はぁ? 大丈夫っすか? 栄華えいがさん!」そう呼びかけられたところで、意思とは無関係に上空に手をかざした。


そして。


「あんなもん。バキューン!」


 そう軽い口調で口ずさむと手のひらから波動砲を放ってしまった。クソッ!俺は何をしているんだぁ!と思いきや口元がニヤつき微笑み出した。

「キャタキャタキャタ!」笑い出した……。と、その波動砲を放った先で爆発音が聞こえて閃光が走る。少し動く首を斜め上に向けると救出カーゴに波動砲が打ち当たり炎上していた。なっ!何をしている。私は……。


「お前、何をしたぁ。母さんが乗っているんだぞぉ!」


 目の前のカイトの波動が一気に大きくなり、私に人間の姿のまま襲いかかった。

「そんなもん。バキューン! 否、違う。待てぇカイ……」


 言葉を言い切る間に私はカイトの波動を持ったパンチを喰らっていた。そして軽く10m以上は吹き飛ばされる。


栄華えいがさん。カイトお前」

「違う。よく見ろそいつの体。黒光りしながら悪どい目つきだぞ!」

「何ぃ、栄華えいがさん!?」


 百花モモカ英雄ヒデオが叫ぶ声を倒れながら聞いた。倒れながらも体をくねらせてヌッと奇妙な立ちすくまいで起き上がる。そしてまた私は……。


「あんなもん!バキューン!」


 フザケタ口調で再度救出カーゴに向けて衝撃波を放った。普段の私の口調からは想像もつかないフザケタ口調と態度で腕が動く。目の前が紅く靄にかかかった状態……。


 クソッ。やはり映画館の白い粉末が身体中に回ったか?そう思いながらも、私は何度も腕から衝撃波を今度は英雄ヒデオ百花モモカそしてカイトへ向けて発動した。


「あんなもん。こんなんもん。バキューン!」


 クッソォ、私は、どうしたのだ!!

 英雄ヒデオたちは、その衝撃波をまともに喰らい数十メートル吹き飛んだ。カイトはというとそれを人間の姿で金色ゴールドに光り放ち腕一本で衝撃波を上空へと飛ばした。


「貴様! 口では納得させようとしても、今のお前は何だぁ。言ってることとやってることがバラバラじゃねーかぁ! えぇ!? やっぱり許さん!」


 怒りに満ちた感情で人間の姿のまま私の波動砲を受け流した。それを見て私は確信をした。そしてカイトに叫んだ!


(お前のその怒りは力になる。神技一体。優しき心の持ち主、正義の感情!そして負けないと言うその意志の強さ! お前は、真のヒーローに相応しい!)

 そう言ったつもりの言葉が、カイトには違うように聞こえたのか?否、私自身の口から出た言葉は違っていた。


「シャラープ! シャラープ! ストーップ! そんなやつ! あんなやつ! バキューン! バキューンだぁ!」


 その時だった。頭の中に駆け巡るしゃがれた男の声がした。

【我がしもべよ。憎っくきカイトに天罰を与えよ。それがお前の使命だ】


 なんだぁ!? この言葉は……。どこから聞こえる!? 消え去れ。俺の頭の中の声よ。首を無造作に振ってみたが体はクネクネとふざけたクネらせ方をしているだけだった。


「覚悟しろ。栄華えいが! 貴様の死に場所には相応しい。正義ヅラしたその仮面剥ぎ取ってやる!」


 ドンドンと大きくなる波動の勢い。遠くで英雄ヒデオたちが俺たちを叫ぶ声。しかし私の口からついて出る言葉は異様にふざけていた。


「シャラーップ! アイキャンドゥーイット! ジャストモーメン! ソーリーソーリー!」


 何を言っている私は……。


「おまえなんて……バキューン!」


 そう口から出た瞬間、私は人間の姿のカイトへ両手を翳し波動砲を打つ準備に入った。それをゆっくりと歩み寄りながら光り放つ金色ゴールドのカイト……。そして……。


「やってみろよぉ……おっさん。もう手加減無しだ! 来いよ! おっさん……」

「おまえなんて! バキューンバキューンバキューン!」


 その態度の悪い私の口調に怒り心頭のカイトは力を込めているようにも見えた。一瞬の出来事だった。最大パワーで放たれた私の波動砲は、まともにカイトにヒットした……。


 否!波動砲は金色ゴールドに光るカイトの波動の渦に飲み込まれた。カイトの目つきが一瞬光り、そして金色怪人へと豹変したかに見えた瞬間だった。


「ウギュッ!」


 鈍い音と共に私は呻いた。胸元に強い衝撃を受けて何かが突き刺さっていた。目の前の紅い靄が黒に変わり、目の前の情景が消えた……。遠くで叫ぶ英雄ヒデオ百花モモカの声を聞いた時、白い翼を持った怪人が私の目の前から、羽の一部を落としながら上空へと消えたようにも思えて私は地面に倒れこんだ音を最後に聞いた……。


ドスッ……。

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