4章 真のヒーロー
第36話母の思い(side美咲=カイトの母)
15年前……。
あの日の出来事は思い出したくもない……。
朝、起きるとアメリア国象徴であるツインタワーの襲撃。ビル群が崩れ去る様をWORLD日本支部のテレビで見ていた私。現実ではありえないぐらいの人々が惨状に巻き込まれた瞬間の映像がその瞬間、生中継で見せられたショックは、私の研究意欲を更にかきたてた。
そしてその半年後に起こったアメリア国から飛び火した日本怪獣襲撃事件。ニューラライザーの開発により、この一件は国家の威信を保つ為、人々の記憶からかき消されたが、創始者であったシェーマス・ジョシュアが言っていた人類存亡の戦いが幕を開ける。
その第一弾として起きたアメリア国襲撃事件とその後に起きた日本襲撃事件。これは世界を混乱に陥れる為の第一歩だったのかもしれない……。
日本襲撃に起きた大王魔王の襲来。怪獣を筆頭に戦うことを決断した私の夫である
名を変え、顔も変え人格自体を操作した為に起きた大王魔王との最終決戦に於いて、精神異常をきたし、ホワイトスーツの開発だけをして、カイト5歳の誕生日の日に、飛び立って行った。
あの方……夫は間違いなく先代のヒーロー、シェーマス・ジョシュアであろうことを私は知っている……。世界を守る為と、付けられたWORLDと言う名の下に集まった人々。その中に世界から選別された優秀な学者たち。その中に組み込まれていた私も含め、あの方は、最期に、言葉を残して戦いに出た。大王魔王は元々製薬会社の会長を務めていた。自分自身の欲の為に、自分自身の心を操り、そして日本の滅亡、それどころか世界の滅亡を望んだ男。その男に対して、あの方は最期に言った。私の欲が生み出した怪物……だと……。だから自分自身の手で始末しなければならないと……。
今まさに大王が戦いの火蓋を切った。今そこで戦っている私の息子カイト。どうにかして助けてあげたいけど……。今の私にはこのカプセルを壊せるだけの力が残っていない……。
あぁ……。カイト……。あなたは戦っているのね……。危ない……あの大王を甘く見てはイケナイ……。あなたは今パワー任せに戦っているだけだわ・・・。お願い私の願い……届いて……。
あぁ……。カイト……。大王に飛ばされて……。
助けないと……。助けないと……。助けないと……。
そう思った時、急に私の目が見開いた。光り輝く目の前、そしてカプセルを破ろうと閃光が走った。ヒビが入り、カプセル内の液体が外に漏れる。誰もいないこの場所。何体ものカプセルの中には、人々が入れられているが、私は目覚めた。
この薄暗い空間に、閃光を放ち私の体が動いた。カプセルから出ると、室外から聞こえる緊急アラームのようなケタタマシイサイレン。私は動きづらい体を無理やりに動かし、部屋の扉を開けようとしたがロックされていて開けない。すると突然、私の目が、また光り輝き、扉を溶かす。人が一人通れるぐらいの、大きさに開き、私は、それをすり抜けた。
そしてだだっ広い空間に窓が一つだけ。私は、自分の胸元に開いた傷口を確認すると、手のぬくもりを感じた。暖かい光……。それが傷口を癒す感覚がする。
カイト!待ってて!私は翔び立つ。窓に向けて全力で突進した。意外にも脆くガラスをけ破ることに成功。だが、人間の私の姿では、落ちる他ないと思った瞬間。全身に鎧を纏った。そして腕には大きな剣。顔だけは、カブトは付かなかった。私の意志で、操作できるこの鎧の体。空を蹴った。すると上空へむけて跳び立つ。
カイト!!
私は空に向かって叫んだ。その瞬間、私はカイトが飛ばされる方向、瞬時に移動できた。この力は何?誰がこの力を与えてくれたの?意識を失い飛ばされいくカイトの肩部分を抱きかかえると、さっきまでいたWORLDビルへ引き返す。WORLDを思い浮かべても先ほどみたく、瞬時に移動ができない……。
仕方なく、私はこのままカイトに頭を合わせ、自分の記憶と能力をカイトへ向けて念を送った。全てを受け入れてカイト・・・。
あなたはヒーローの息子。そして大王魔王と戦った父親である
カイト……。伝わって……。
「うっうっ……」
そう、大丈夫。あなたは、今こんなところで、終わるわけには、いかないのよ。だから、私の意思を、受け継いで・・・。
【かあ……さん……何……これ……】
あぁ……伝わる。今あなたの脳に直接アクセスしているわ。大丈夫。もうすぐWORLDに着くから、それまでに、私の記憶を、全部伝えてるわけね。
【こ……これが……真実の話なの?……かあさん……】
そうよ……。あなたの父親、
【シェーマス・ジョシュア?】
そう、そして今戦っきた大王の父親である、大王魔王と、戦ったのも父親の
【消息……不明……ってことか……おやじが!……大王魔王って?】
シェーマス・ジョシュアと大王魔王はどこかで繋がっている可能性もあるわ。あなたの父親、
【うっ……うっそう……なのか……ホワイトスーツ……】
そう、もうすぐ後100mでWORLDよ!もう少しだけ耐えて、もうすぐだから……。思念をあなたに送るわ!
【なっなに?】
父親の
【どう……いう……いみ?】
WORLDまで50mを切った時、後方にもの凄い波動が近づく気配がした。その2秒も経たないうちに私は、叫び声を挙げていた。
「キャアアアアアアアアアア!!」
何かの一本の閃光が私の胴体を貫いた。最期に私は叫んだ!
「カイト!おねがーい!」
【かあ……さん?どうしたぁ?】
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