第32話作戦(side栄華)
「フォォォオオオオオオオオオオオオオ!」
図太く唸る様な、そしてどこかしら悲しみに満ちた赤ん坊が母親を鳴き叫ぶような声……。
戦闘地区に相応しくもあり、相応しくないその唸り声は甲冑の怪人の腕を天に差しだした。何かを求めているかの様に甲冑怪人は上空の金色の怪人へ信号を送っている様にも思えた。
カブトの三日月が金色に光り点滅する。それはまさしく会話の様なモールス信号の合図。私はその様子を見たとき、怪人二匹の関係性に興味を持った。
怪人も元々は人間。それを改造された人を怪人と呼ぶ。まさしくその姿は、元の姿である人間同士が会話をして、何かを共鳴している様にも思えた。甲冑怪人が一瞬にして消え去り、さらなる上空、金色に光を放つ怪人の元に現れた。
戦闘のときの動きの重たさを感じさせぬ動き、この二匹には一体何かが隠されていると私は踏んだ。怪人になってしまえば、戦闘共鳴以外発動しないはずの怪人が今は戦闘以外で共鳴している姿は些かおかしくも思えて仕方なかったからだ。
「
否、あの甲冑怪人はいいとして、金色に輝く大きな波動を持った怪人は、どこかしら嘆く声を挙げている様にも思える。言葉にはなっていないが、本当に赤ん坊が母親を呼ぶ声……。どういうことだ……。
「
私は、
「どうしてですかぁ!?今なら奴らの動きは……」
すると
「あの二人、もしかしたら元々人間同士の時に関係性あったんじゃ?」
「はぁ?
「否、待て、それは大本命の方だろう……。まだここには現れていないがな」
「大本命って、まだあの波動より大きな奴がいるんですかぁ?
「あぁ、そう踏んで間違いないだろうな。一度大きな波動を放った金色怪人だがその後、人間達に攻撃は加えたのか?」
「いえ、自衛隊と戦おうとした我々だけです」
「うーむ。何やら臭うな、動かされてるものの、本当のところでは違う可能性大というところか」
その時だった。上空から大きな波動と共に衝撃破が金色怪人から放たれた。
「避けろ!」
我々はそれを何とか避けたが、住宅街の被害は拡大していった。一瞬にして、住宅街の半径100mを爆風で飛ばす金色怪人。しかし甲冑の女怪人はそれを怒るがごとく金色怪人の腕を取り、三日月の紋章を光らせている。どういう意味だ。仲間割れか?すると、突然私のインカムに司令室のオペレーターから通信が入った。
「自衛隊機接近中!攻撃態勢整っているとの報告です!防衛省からの通信入ってます!」
「回せ!奴らに勝手させるわけには……」
直ぐさま、チャンネルが切り替わり、防衛省の大臣とつながった。
「WORLD
現防衛省トップ稲村大臣、女性ではあるが、怒りのこもった図太い声だった。
「大臣、少しお待ちください。我々にも手があるので……」
「手とはどういったものか、1分で説明し、実行に移しなさい!さもなければ、F35ステルスを直ちに怪人戦闘に向け弾薬投下いたします!」
「なんですとぉ!? それは時期尚早です。我々にも作戦いうものが!」
「だから、その作戦を言いなさいと言っておろうが!」
「チッィ……」軽く舌打ちした後、了解したと申し出た。
説明をしていると、上空に繭の様なものが現れ出す。金色に光る怪人から放たれたものが住宅街へと次々へとなだれ込む様に屋根から突き刺さり、人々を上空へと投げ出す。それを止めるかの様に甲冑怪人は眉を剣で切り裂く。
仲間割れにも似た行動は説明時間の間繰り返された。
「もう、待てん。今の映像で見る限り、お前達の攻撃が、効いている様にも思えんぞ。直ぐさま、お前の言うスナイパー攻撃に移れ。さもないと、我々防衛省にも考えがある。直ちにだ!」
私は、また舌打ちをして、スナイパー部隊に命令を出した。私が飛び込んだ際、
直ちに、三位一体の攻撃を、開始することとなった。両手を腰脇から、波動砲の準備をして、私は、甲冑怪人の近くへと飛び込む。
その際、甲冑怪人の前方後方に、
「今だ。スナイパーレーザー照射!」
私たちの三位一体攻撃が開始された。一瞬のチャンスを狙った攻撃。成功か否かは今後の私たちの活動にも左右されることになる。このチャンス逃すわけにはいかなかった。うまく滑り込めた体を甲冑怪人へと体当たりで体を揺らさせる。
その間に、前後の挟み討ち、そして直前からの波動砲攻撃。これが効かねば私の司令塔としての役目も終わる。それだけの大仕事だと思い飛び込んだ。
「ダァァアアア!」
掛け声一斉に、発動された波動砲、前後挟み討ちの波動砲が甲冑怪人に放たれる。その時、5km先から金色怪人へ向けてレーザー照射が開始された。
一瞬の出来事だった。甲冑怪人のタックルが当たったかと思った瞬間、照射されたはずのレーザーが金色怪人に当たったかと思われた時、もう一つの影がタックル後の私の体を揺らせた。
前後からの波動砲は、波動砲同士打ち当たり、上空へと拡散された。そして私の体にタックルを喰らわせたのは、金色の怪人だった……。
その衝撃で、地面に突き飛ばされそうになりながらも、私は足元のジェットブースターを使い、空中で止まった。甲冑怪人は、金色怪人のさらに上から
後ろから
金色怪人を挟み討ちして、目の前で
「ヤメロ!!!」
そして
遠くから、閃光が近づき、金色怪人の胸元へと6本のレーザーが一点に集中しだした。
「カイトォォォォォォオオオオオ! 避けなさい。それはイケナイ武器よぉ!」
私は、上空に顔を向け叫んだ。
「なにぃ! あれが、カイトだとぉ!?」
レーザー照射が金色怪人、否、カイトへ照射されてから数秒。目の前に現れた甲冑怪人は、
「フォオオオオオオオオオオオ!」
金色怪人が叫ぶ声が、上空から聞こえたかと思えた瞬間……。金色怪人から、位置がすり替わった甲冑怪人に向けて、レーザー照射が続けれた。
「キャアアアアアアアアアアア! あ……あ……あづ……い……」
6本のレーザー照射は、甲冑の胸元を貫通し、空へと光が漏れていた……。三日月の兜だけが、月明かりに照らされて、光りながら……。
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