第31話母を呼ぶ鳴き声(side栄華)

「スナイパー部隊を戦闘区域から5km範囲に配置させろ!」

「ハッ!」

 衝撃波がとどろいた時、防弾ガラスのWORLDビルの窓にヒビが入る。私は、スナイパー部隊を引き連れて、出撃する準備に入った。新型怪人がどれほどのものかは、今の衝撃波で予測はついた。だから私は、スナイパー部隊に、遠くから狙撃手として配置して、奴の急所を狙うことを命じ出撃する。


 スナイパー部隊とは、ロングレンジから、正確に敵を撃ち抜く技術を持つ、6名で編成された部隊。武装にはロングレンジ砲。通常の弾薬ではなく、光の粒子を波動と同じ圧縮率を施したレーザー照射させて相手を撃ち抜く武器だ。これにより相手の体を貫通させる作用を施せる対怪人専用の部隊。


「万が一のことを考えて、私専用のロングレンジ砲とナパーム弾の用意も頼む!」

「ナパーム?」

「この戦闘、長引かせるわけにはいかん。先手を打つのも戦いには必要だ。できれば使いたくはないが、戦闘は一刻一刻で決まる。状況判断誤るなよ?大本命はまだ控えていそうだからな!」

「ハッ!」


 まだ衝撃波が止まぬ間に、私とスナイパー部隊は、爆風吹き荒れる水島市駅付近へとスーツホルダーより出撃した。スナイパー部隊をまず散開させて状況を見守らせる。


 私は、英雄ヒデオたちが繰り広げいてる戦闘区域へと直ちに向かった。大きく揺れる空気の圧が戦いの激しさを物語っていた。新手の怪人と新型怪人が出現してから感じることが出来る悲しさに満ちたような感覚。


 怪人に入ってる奴の波動なのかは分からないが、私はその波動から感じられる異質に気づき始めていた。


「クッ、波動ビーム、衝撃波! 百花モモカ、奴の後ろに回れ。挟み討ちだ!」

「えぇ!」


 戦闘地区に入るとインカムから聞こえる英雄ヒデオたちの戦闘模様を聞きながら、何やら不穏な空気を漂わせている戦闘付近へとたどり着き、英雄ヒデオたちに命令した。

「波動の挟み討ちと上空から私が突っ込むそれまで持ち堪えろ!」

「その声、栄華えいがさん、出撃大丈夫なんですか!?」

「いいから、戦闘に集中しろ。今回の敵は先日のカイトとは少し違うぞ!」

「はっはい!」

 上空に待機している救出カーゴに搬送されていく人々を確認すると、一気に戦闘モードに入る。目の前に見えたのは、甲冑タイプの女怪人。こいつがあの波動を送ったとは到底思えない。重たそうな動きな上に……。否!


「こっこいつは!」


 私はそれを確認すると直ぐさま、その甲冑怪人の下へと回った。

「なにしてんすか。栄華えいがさん、上でしょう?」

「否、こいつの弱点は、多分甲冑に囲まれていない下だ!」


 地面に着地すると、奴の出方を見るために下から波動砲を軽く放つ。あの上空の動きならばヒットするはずと踏んだ私だったが、波動砲は、敢えなく甲冑怪人の足元から拡散していった。

「なっ、何!? バリアか?」


 その瞬間だった。上空から、一気に差し込む光と風と共に三日月の月が雲から現れて閃光が走った。怪人から見れば下方へ流れ込む閃光。それは住宅街へと流れ込み、人間たちにヒットしていく……。

「まずい、バババギャーン。早く全員を救出カーゴへ!」

「はっはい。でも、無理ですぅ!」


 甲冑怪人の上空の三日月が照らす閃光と共に甲冑怪人が鞘から抜いた剣が光り、三日月からその剣へと閃光が流れ込み、その剣を甲冑怪人が振り下ろす。すると人間達に閃光が当たり人間達は、上空へと吸い上げられていく。甲冑怪人の周りに人々達が輪を作り固まりだした。


栄華えいがさん。こっこれでは波動砲打てません!」


 まるでバリアの様に人々を周りに配置させて我々に攻撃をさせまいとする甲冑怪人。そしてその甲冑怪人のさらに上空に大きな波動を持つもの影が現れた。三日月に照らされた頭部に金色の胴体と目が突起した白い翼を持つ怪人。


 その怪人の手がゆっくりと私に向けられた。それを逆手に取り攻撃返しをしてやろうとしたが間に合わず一瞬にして衝撃破を食らった。


 地面が割れ、私の半径10mのアスファルトは吹き飛んだ。私は何とかヒーロースーツに守られたが、インジゲーターの数値が10%減った。何という破壊力だ!


 私のスーツを映画館の後バージョンアップさせたのにもかかわらず、この衝撃に私は、膝をついた。


栄華えいがさーん!」と言う英雄ヒデオ百花モモカの声の後に、大きなうめき声が聞こえた。


「フォオオオオオオオオオオオ!」


そのうめき声は、まるで赤ん坊が母親を呼ぶ様な鳴き声にも聞こえた。

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