第26話あやつ(sideカイト)
「母さん!」
叫んだところで、何も変わらなかった。
大王会長が座る赤紫ソファの足元。母親は跪き会長に挨拶をする。大王会長は、
「マダムーンよ、こちらへ!」
「ハッ!」
母親はその言葉に大王会長の足元から、スッと立ち上がり、会長が座る膝元へと、躊躇せず座る。
「母さん! 何やってんだぁ!」
何度叫んでも、答えは返ってこない。
大王会長が、母親の顔に近づき、淫らに頬を、舐め挙げる様に、舌を出した。そして母親の腰元に、腕を回し、抱きかかえる。何とも見るに堪えない光景。こう言う時は、頭をかきむしり、爪を噛み、苛立ちを抑えようとする気持ちなる。だが、両手は鉄球が付いた格好で固められている。ただ叫びを挙げて、それに対抗する他、なかった。
「母さん!気持ち悪りーことやめてくれ!何やってんだぁ!」
そんな言葉を無視し続ける母親は、大王会長の赴くままに、顔をすり寄せられる。そして……。
「うーん!馨しいこの妖艶さよ!お前があやつの妻だというのがもったいないわ!」
「…………」
「何を言っているんだぁ! やめろぉ!」
「フンッ!
「どういう意味だ!」
「フンッ! このマダムーンは、このワシに心を売ったのだよ・・・」
「だから……どういう……アガアガアッガガガ!」
大王会長は、俺に右腕を向けて、衝撃波を打った!ビリビリと身体中に電流が走り、瞬く間に気力が萎えて項垂れた……。
「ほぉれ見よ! お前がどうなろうと、マダムーンは何も動じないであろう?」
母親の目は通常の人の様ではなく、眼球が紫に輝いて、俺を見ているが、動じもしていない目つきだった。
「フンッ! いい機会だ! マダムーンの本当の姿をお前にも見せてやろう!」
「な……な……んだと……」
「マダムーン! 豹変してみろ!」
「ハッ!」
母親は、大王の言葉にうなづくと顔を天井に向けて一言「超変!」と言って口を開けた。すると、空気の層が、母親の口に流れ込む。それを全部飲み込んでいく。足元から赤紫に変わり、膝元、腰、胴体。そして肩から背中に鎧を
大王会長の膝の上で、豹変した母親の姿は、俺自身が怪人へと変身したものと近い怪人の姿になっていた。
「う……嘘……だろ……!?」
目元は、紫にシャドーが入り、口元は、更に紅く染まっていた。瞳の色は、紫の蛍光色に光って見えた。
「見ろ! これがお前の母親か?こやつの名はマダムーン! ワシの
「大王、貴様ぁ!」
「フンッ叫べ、喚け! どうにかなるものか。お前はもう既に、この家系に生まれたことによって定められた運命だったのだよ!」
「クッ、大王。許さん! 母さんを母さんを改造しやがってぇ!」
「フンッフンッ! これから起こることは、お前にとって、とぉーーーーてっも、無残で悲しい出来事になる! それを糧に大きくなれ!
「何を言いやがる! お前を許さない! 俺はお前を許すものか!」
「出来るか? 今のお前に。叫ぼうが、喚こうが何も変わらんよ。これからこのマダムーンはお前の幼少期の友達の元へと行く」
「な……何故それを……」
「わからぬはずがあるまい。お前は全て、悪の使いの家系に生まれた子孫。そいつをずっと見張っているのは、大王であるワシの役目でもある。まぁ……父親のあやつは、ちょっと厄介だったがな……」
「あやつ?」
「フンッ、知らんでいい。あやつは今は諸外国で活動中じゃ。それより、この日本に於いて、ワシは君臨せねばならない。その第一弾は、お前のお陰でうまく運んだ。後はこのマダムーンが
大王は笑うと、俺に翳していた右腕を母親の胴体の胸元、首元へと、手を這わせいやらしい顔を撫でる。
「カワイイ奴よ、マダムーン!」
そう言うと、顔を
俺は叫び声を挙げた。
見るに堪え難い、有ってはならない出来事に俺は仰天した。
大王の唇と母親の唇が交わるところを……。
俺はそのまま目を白くし、目の前が真っ暗になった……。そして口元から何やらブクブクと吐き出して意識を失った。
最後に聞こえてくる大王の笑い声だけを聞いて……。
「フハッハハハハ、ギャラギャラギャラ!」
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