第21話へんげ(sideカイト)

「フォ?フォフォフォ?」(どうなっている?)


 映画館内のすべての人たちがもがき、苦しみ、白い粉末が、口の中へと吸い込まれていく。これが俺の真の姿なのか、と思うと自分に怒りが込み挙げた。


 レッドの成敗は良いにしても、何の罪もない人たちが、白い粉末に、苦しめられているのは、見るに堪えなかった。だから俺は、人々の元へと瓦礫を吹っ飛ばし近づいた。すると、人々がもがき苦しむ中、何かが定着して、光が放たれた。


「グウォオオ、コフォレフォレ!!!!」

「キャァ……アファラヴァラ!!!!!!」

「グエェ……スツゲラヴェラ!!!!!!」


 叫び声が訳もわからない雄叫びへと変わった。放たれた光は神々しい。

 そして頭部あたりから、黒いマスクの様なものへと、変化へんげしていく。俺はその人たちの、腕を取ろうとした。だが、電気がビリビリと伝わり俺の接触を避けた。


 腕を引いて痛みを堪えた。


 バババギャーンの攻撃や、衝撃波など、受けなかった俺だったが、この変化へんげして行く人たちを触ると、衝撃が走る。何やら得体の知れないものへと変化して……???

「フォフォフォッフォ!?」(何ダァこいつはぁ!?)


 頭部から数人、素早く変化していく姿を見たとき、驚愕した。それはバババギャーンTVシリーズに出てくる、怪人が現れる前に、悪の組織の手下、しもべとして、いつも現れては、人間たちにイタヅラや悪事を働く、ジャッカルそのものだった。


 ただ違うといえば、胸元に俺の働く会社の親会社の、ロゴマークと同じ様な『大』と言う文字が現れていた。


「フォフォフォフォフォ?」(なぜジャッカルに変身したんだぁ?)


 倒れていたバババギャーンのブルーとピンク、そしてグリーンが起き上がり、その様子をまざまざと見つめていた。そしてブルーが俺を見つけて声を上げた。


「おっお前の仕業か!怪人!」

「フォフォフォフォフォ!!』(ちっちがう!俺じゃない!)

「怪人め!成敗してやる!」


 グリーンが俺にブーメランの様なものを飛ばしたが、俺は顔面に受けたものの全く痛みを感じず、それどころか空圧の様なものでブーメランの様な武器を弾き飛ばした。悔しそうにさらに攻撃を加えようとするグリーンに対し、俺は手をかざし制止を促したが、またもやブーメランが飛んできた。その行為に対し、俺は怒りを覚えた。その瞬間、思っても見ない空圧が腕から放たれた。そして俺の意思とは別に、鞭の様なものが急にグリーン目掛けて放たれた。


「グォ、やりやがる!」

「フォフォフォフォフォフォフォフォフォフォ!!」

(違う違う。俺の意思じゃない。俺は人たちを助けたいんだ!)


 言葉が通じないが、俺は行動で示そうと人々が変化していくのをどうにかして助けようとしているピンクの元へと飛ぶ。そして俺は、変化へんげしていく人の口から白い粉末を吐き出させようと、腹に一発パンチをお見舞いした。するとそれを見ていたブルー呆れた声でグリーンたちに言っているのが聞こえた。


「おいおい、仲間割れか? それとも何やってんだ? こいつ……」


 その言葉を無視して、次から次へと俺の意思で動く怪人である体を利用して、俺は変化へんげしていく途中段階の腹にパンチを食らわす。電気が走って腹が痺れようとも、人々を助けたいという意思だけで俺は体が勝手に動いていた。それを何度も行っていくと、レッド以外のバババギャーンたちも、助けようとしているのがわかったのか、暢気な言葉をかけた。


「こいつ、本当は助けたいんじゃないのか?」

「怪人が人救いか? ありえんだろ!」

「でも、この怪人何か変よ?」

「よぉし!俺たちも助けようぜ!」

「おぉ!」


「フォフォフォフォフォフォフォフォ!!」

(そうだよぉ。早くしろよ。俺がこんなに頑張っているのに!!)


 何発もパンチを食らわしていくと、その場に気絶して倒れこむ人たち。それで変化は一旦おさまったかの様に思えた。しかしバババギャーンと俺のたった数人では、全ての人たちの変化へんげを抑えることなどできるわけなく……。


「ヒューイ、ヒューイ!」


 次々にジャッカルたちに変化していく人たち。ジャッカルに変化した人たちは、人々にパンチを食らわす俺たちに向かい覆いかぶさる。


「フォフォフォフォフォフォフォ!!」

(くそっ!邪魔すんな!お前らもう人間じゃないのか!?)


 次々と襲いかかるジャッカルたちによって、俺は身動きが取れなくなった。そして一匹のジャッカルが俺の目の前に現れて敬礼。胸元に腕を組みながら「ヒューイ!」といった言葉が俺の耳に日本語となって聞こえてきた。


「カイト様、ご命令を!私どもはあなたのしもべとして遣います!」

「フォフォフォフォ!!!」(命令などしない!さっさと皆を元にもどせ!)

「御意!」


 再度胸元に腕を合わせ、礼をするとジャッカルたちが俺の元から離れたそして今度はバババギャーンに襲いかかる。普通に変化へんげしない人たちにも襲いかかるジャッカルたち。


「フォフォ! フォフォフォ! フォフォフォフォフォフォ!」

(待て! やめろ! 俺はそんなこと言っていない!)


 今度はジャッカルの行動に、想いが通じているのかいないのかに怒りを覚えた。そして俺は身体中の力を込めた。


「フォオオオオオオオオオオオ!!!」(くそおおおおおおおお!!!)


 すると突然俺の体が光、ジャッカルたちを飲み込んでいった・・・・。さらに怒りを奮闘させると今度は頭の中から声が聞こえてきた!


【貴様……。もうよい! それぐらいにしておけよ!?】

(なんだ?この声は……)


 怒り出した俺の波動と呼ばれる空圧は一気にバババギャーンやジャッカルたちを飲み込み……。さらに頭にしゃがれた声がする。


【もうよい!お前の役目は終わった。戻ってこい!作戦は決行された】

(うっ!なっ……なんだ!?)


 今度は、俺自身が光り出し、意思とは無関係に身体が中に浮いた。意識が飛ぶ様な強烈な空圧を映画館上空から受けた。

(こ……この空圧……どこかで……奴らか?)


 夢で見たあの大王会長とその側近である只野主任や小尾荒おおあれさんたちに浴びせられた時と同じ様な波動が俺の上空から迫って、身体の自由が効かなくなり、意識が飛んでいく感覚と、上空に身体が持って行かれる様な感覚を味わった。


「フォフォフォ! フォフォフォフォフォ……」

(ダメダァ! 今の力じゃ逆らえない……)


 上空の光に一気に飲み込まれる様な感覚を味わって俺の意識はぶっ飛んだ……。

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