第20話戦闘力(sideカイト)
マジマジと見せつけられた。ただ何が起こったのかさっぱりだった。いきなり愛美ちゃんが宙に浮いたかと思えば、白装束の怪人に変身。そして舞台上のバババギャーンに向かって、紫色の髪を振り乱し、攻撃を繰り出す始末。ただ俺は叫んだ。
愛美ちゃん。愛美。とちゃんをつけたり呼び捨てにしたり……。だけど、その声は全く届かなかった。
俺を無視して、ババギャーンに立ち向かうその姿に驚愕した。そして突然現れた巨大蚊にも
でも……。でも……。
でも……でも、でも、でも、でも、でもぉおおおおお!!
ババギャーンレッドが突然、復活して空気の層みたいなやつを、
腑に落ちないというか、俺の胸の中心あたりが、脈打つ感じが抜けなかった。怪人が炸裂した瞬間に大きく心臓の音がした。もう無我夢中で、泣き喚き、どうしようもなくなった。その時だった。もう感情が抑えきれなかった。周りの状況など、目にも耳にも入らない。
俺は心底から思った。こんな戦いなんてどうでもいい!
その瞬間に俺は雄叫びを挙げた。どうしていいのかわからない雄叫び。それは人間の声とは程遠い、何かがまたもや、定着した雄叫びだった。身体中に力が漲る。
力が溢れて、俺の中の何かが発動した。
「フォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
(くそったれがぁーーーーー!)そう叫んだつもりだったのに、声になっていなかった……。
「フォフォフォフォッフォ!」(許せない!)
「フォフォフォフォフォフォフォフォフォ!(バババギャーンのレッド!!)
「フォフォフォフォッフォフォ」(
そのレッドは、こちらを向いて、驚きの感情むき出しで立ちすくんでいる。今だよ!今、俺のこの渾身のパンチをお見舞いしてやる!
「お前は!あの水島駅の怪人……なのか???」
「フォオオオオオオ!フォォオ!!」(今更何を!お前の事が好きな愛美をお前はぁ!)
俺は、ゆっくりと足を響かせながら、レッドの元へと近づく。座席など軽々しく吹っ飛ばし、そしてレッドは怯えた様子で、見ながら何やら口ずさんで剣を構えた。
「あの時とは違うんだぁ。俺の回復力を見くびるな。発動、パワーブレード!」
何がパワーブレードだ。今の俺は、無性に虫の居所が悪い。つうか、悪すぎる。お前を許せない感情でいっぱいなんだヨォ。
「フォフォフォフォオオオオオオオオオオ!」
構える剣先から空気が凝縮されて剣が歪んで見えた。それがお前の必殺技か。それで愛美を殺ったのか? えぇ? えぇ? おい! レッドォ!
「フォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
必殺技を繰り出そうとするレッドにも怯えず、俺はゆっくりと椅子を蹴散らしながら映画館後方へと進む。
「食らえ、怪人め。俺の渾身のパワーブレード、発動、波動爆裂切り!!!」
そう叫んだ瞬間。俺に向かって、斬撃が飛んでくる。これを受ければ爆発する手はずか。手はずかぁぁぁぁぁぁあああ。
「フォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
ブオン!!と鈍い空を切る音を鳴らしながら、斬撃が俺に向かって・・・・。無我夢中な俺のもう一つの体は、左腕を下から上に降り出し、手首あたりから鞭の様な武器を振り上げた。その瞬間、斬撃と鞭がバチバチと当たる感覚と激しい音。
目の前に、雷でも落ちたかの様な、光が放たれた。一瞬にしてその光が消えた。消えたかと思われた光は、左出入り口の方へ斬撃が飛び壁に激突して、大きな音がした!
「ぎゃあぁぁぁ!」
「うおぉぉぉぉお!」
「助け……」
何人もの人の声が俺の耳に飛び込んできた。
多分壁に当たった斬撃の衝撃で、壁が崩れて落ちてきたんだろう。そんなことはもうどうでもいい!俺はそれを飛ばしたレッドが許せないんだぁ!
「フォォォォォォッォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
その叫びを挙げながら、俺は無心で反応して、レッドに体当たりを食らわせていた。鈍い、骨が折れる様な、音がしたかと思うと、レッドは映画館の最上階席の壁に激突した。それを見るか否かで、俺は右腕を構えた。無我夢中で、波動と呼ばれる空圧を繰り出していた。
「フォォォォォォッォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
「グオォ!」
一瞬で最上階席のレッドに波動が打ち当たり、レッドは壁を突き破って飛んで行った。
「フォォォォォォッォォォオオオオオオオ!」(ざまぁみろ。これがお前への仕打ちだ!)
俺は怒りに狂った。その放たれた波動と共に俺の体が光に満ちた。
そして映画館内全域に、俺自身から発せられる波動。
俺と、愛美の体のみを、シャボン玉のようなバリアに包んだ以外、全てを吹き飛ばす、衝撃波を一瞬にして繰り出した。
「グオオッォオ!」
「ぎゃあああああ!」
「ギャオス!!」
「グハァ!!」
「ギャァーーン!」
「ピンク!!」
「グリーン!」
「レッドォ!!」
「ぎゃああああ!!」
バババギャーン含む、人間たちの雄叫びが俺の中に響くと、同時に壁に吹っ飛ぶ様が、見えた。
「フォオオオオオオ!!」(俺は怒ってんだぁ!!)
館内に充満していた様な白い粉末が、人間たちに吸い込まれて行く。口から鼻から、耳から、目から……。粉末がどういう訳か、映画館にいた人たちに吸い込まれていった……。
そして、それを吸い込むと急に息苦しむ人たちの姿。これが、俺の力なのか?
「ぐぅぐるじいい……たすげ……てぇ」
「くるしいぃよぉ……」
「フォオオオオオオ!?」(何が起こっている!?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます