第17話モーション(side木崎真也)
爆煙が上がった上空にケタタマシイ喚き声。上空を見ると白装束に赤い斑点に紫髪の女の姿。口が赤く頬まで上がった口角に笑い声。
「キャキャキャキャキャ、坊や達なにやってるのぉ?」
「なっ!何だぁ!あれは……」
エキストラ達が上空を見て叫んだ。全員かどうかわからないが、エキストラの中にもWORLDの社員はいるはずだが、みんな一様に怯えた表情を浮かべている。子供役のエキストラ達が爆煙の近くで咳き込み、フラフラとその場に倒れていく。するとすぐさまブルーの
「貴様ぁ、何をしたぁ!」
そうブルーの
さすがにヒーロースーツとまではいかないが、このパワードスーツも中々の推進力だ。軽く足を蹴った瞬間に上空30m以上は飛ぶ事ができた。そしてその勢いのまま白装束の女に向かってタックルを試みた。
「ヌギュゥ!!」
白装束の女は俺のタックルが当たり、さらに上へと少し体が上がった。いける!と踏んだ俺は、ブルーの
「爆裂ソード!」
しかし、まだまだ訓練が足りないのか、爆裂ソードと呼ばれる武器は一瞬光を放ち出現しかけたが、途中で消えた……。
否、消えたんじゃない!こっこいつは……。白装束の女が少し上空で腕を構えて何やら唱えているのがわかった。
「フューイ、モーション! モーション!」
意識はあるものの、体がスローモーションのようにゆっくりと動いている。地上をみるとブルーの
チッ、こいつは何だ。俺の体の動きがわるい。そう思った瞬間だった。上空の俺の下からグリーンの山本が白装束目がけて突進。グリーンのパワードスーツの腰に装着されたグリーンビット(ブーメランのように飛ぶ武器)をその白装束の女の目頭にヒットさせた。白装束の女は目を押さえながら叫んだ。
「ウニューー。目がぁ! 目がぁ!」
ようやくそれで、体の自由が効いた俺は、我に帰り地上のブルーを手助けしようと地上に降りようとした。その時、いきなりグリーンの山本にタックルを食らわされた。
「グォ、なっ、何を!」
「フンッ、お前にはまだ隊長は無理だ。俺に任せろ」
俺はそのまま地面に叩きつけられた。しかし衝撃はパワードスーツが守っているのか、あまり痛みを感じることなくすぐに立ち上がる。
「何をしやがる、グリーン」
「フン、ようく見ておけ! 俺がこんな
言い放ったグリーンは両手にグリーンビットを持ち、怪人に迫っていった。
女怪人は、目から手を離すとすぐさま両手を
「フューイ! モーション!」
俺は、ブルーと一緒に子供達を爆煙から遠ざけようとしていた。
すると上空からグリーンの叫ぶ声。上空を見るとグリーンが金縛りにあったかのように動いていない。何も
かと思われた寸前で、ブルーの挙動が止まった。そしてまたもや空中で金縛りにあったかのように止まったままだった。俺は、ピンクの鳥居に子供達を預けようとしたが、またもやあの言葉。
「ヒューイ! モーション! モーション!」
その言葉で、地上のピンクの鳥居と子供が固まったまま動けていない。その意味がようやくわかった気がした。しかし、ピンクの鳥居と鳥居に抱えられた子供は上空に上がっていく。カメラマン他スタッフもただ状況を見守るとの、逃げていくスタッフもいる。それはそうだろう。こんな撮影通常ではありえないのだから。しかし状況は悪化した。またもや白装束の女の声とともに、今度はいきなり俺の近くで飛んでいた蝶々が巨大化して現れた。
「なんだぁ、こっこいつは!」
その蝶々の巨大羽により、俺は一瞬で飛ばされて上空30mまで……。そして動けなくなった。残るは、キャストの
「ヒューイ!モーションスピー……」
白装束の女が何やら叫ぼうとしたが、俺は耳を塞いだ。しかし、ブルーをはじめ、グリーン、ピンクと子供は更に上空へと上がっていった。そして急に風が吹いた。
ブルー、グリーン、ピンクと子供はまとめて地面に叩きつけられるように落下をし始める。俺はその怪人の声を途中で聞かなかったことで、体が動き、まとまって落ちてくるグリーン達の元へと空を蹴った。
俺は叫んだ。動けない体、落下する子供を必死に守ろうとするグリーンの姿を見て叫んだ。「間に合え!俺のパワードスーツ!」
地面に叩きつけられる前に、俺は力一杯空を蹴った。ただ夢中だった。
「グリーン!!!」
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