第18話お前がリーダー(side木崎真也)
空を蹴り、急降下していく子供とグリーンたちを捕まえようと必死だった。
「ヒューイ! モーション!」
その言葉を聞いた後、意識が飛んだ。いや大きな音とともに微かに聞こえる人の声。声?否、これは叫びだ。嘘れゆく意識朦朧とした中、地面に叩きつけられていた俺の腕には子供がしっかりと抱えられていた。どういうことだ?俺は一体あの瞬間何ができたのか……。
自分でも見当がつかない。それにこの薄ら瞼まぶたから見える戦闘模様。
……緑の戦士……。あれは、ヒーロー……。
「お前達、初陣にしてはよくやったぁ。後は任せろ! そこでゆっくりとしておけ」
「……え……えい……が……さん……」
薄れゆく目の前の戦闘景色。マジマジと見て勉強にしたかった。必死で意識を保とうとした。だがそれは一瞬の出来事だった。その白装束の女怪人が必殺技なのか、繰り出す叫びを挙げた。
「タイマー! モーショ……ムギュウ」
ヒーローの栄華さんが、手のひらから何やら発動した。時空が歪むとはこのことか?空間が歪曲状に変化して、白装束の女の頭から胴体を空気の層が包み薄っぺらく圧縮された。女怪人の体が凹んでいく様がゆっくりと見えた。そしてそのまま女怪人が叫び、弾けるように爆発する。
「ムギューーラァラァラァ!」
通常の爆発とは違い、風船が音を立てて割れる音に似た、大きなパーンという音。
たったそれだけの一瞬の出来事だった。まざまざと見せつけられたヒーローという強さ。俺はまだまだ力不足だと感じた。そしてその光景を見て安心したのか俺は意識を失った。
気がつけば病院、否、ここはWORLD支部の医務室のベッドの上だった。体をゆっくりと起こした。腕にはギブスがはめられていた。俺が起きたのがわかったのか、ベッド脇の椅子に腰掛けていたグリーンの山本が笑顔だった。
その時、俺は我に帰り、急に子供のことを心配して聞いてみた。すると・・・。
「大丈夫だ、木崎。お前のお陰で子供は、かすり傷程度で済んだ」
「あぁ……よかった」
肩を撫で下ろし、グリーンに笑顔を見せた。
「いや、俺一人じゃ無理だった。結局俺はヒーローの
その言葉を飲み込んだグリーンの山本だったが、一つ付け加えて俺に言った。
「そうだな。ヒーローは強いな……。でも、いや、俺たちももっと強くならないとダメだ!そして、お前はやっぱり栄華さんも認めたように、俺たちのリーダーだよ……」
グリーンの山本が、そういう言葉を口にしたのは初めてだった。それを疑問に思った俺は、山本に事情を聞いた。
「いや、窮地に陥った俺たちだったが、お前一人は諦めずに、しかも俺たちより普通の子供を助けようと必死だった。俺ならまず戦闘力を見せたいと思って一人怪人を退治しようとしていたのにな。お前はサポートもできる良いリーダーだよ。本当に今回の初陣でそれがわかった。自分の保身だけじゃなくて、周りのことも見ているお前はやっぱり俺たちのリーダーだ!頼むぜ、これからも!」
グリーンから手を差し出されて、俺は左腕を出そう外したが、ギブスだった。
「あっ、悪り、怪我してたな?」
「おまえっ、バカにしやがって、ハハハッ!」
お互い笑いに包まれた。そして俺たちは必死にその後、訓練に励んだ。もちろんみんなの回復を待って今までとは違い、仲間意識で、全員で、ヒーローに追いつけ、追い越せで、頑張ったんだ。
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【感覚が戻る事舞台挨拶の戦闘シーン】
そうだよぉ。あの時があるから、今のチーム体制があるんだ。俺たちは一人じゃない。ヒーローには及ばないかもしれないが、俺たちは5人で爆裂戦隊!しかも以前、負けたあの白装束の女怪人、タイマーなんかに二度も屈辱を味あわせられる事があって堪るか。そんな思いが、脳裏に薄れゆく意識の中で、映像が見えたんだ。見えたんだ!見えたんだ!そうだ!見えたら、もう俺たちは負けられない!否、俺はこんな下等怪人になんて、負けられないんだぁ。
急にパワードスーツに力が漲った。ドンドン膨れ上がる感情とともに、パワーが湧いてくる。
「まっ負けて堪るかぁ。俺は、否、俺たちは、もうあの頃の戦隊じゃないんだぁ」
カッと目を見開き薄れゆく意識から一気に漲る力。そのパワー一心を白装束の紫髪の女怪人、タイマーへと打つける俺だった。
「波動砲、発動。パワーブレード」
「なっなにぃ、ムギュー! しっしぶといヤツめ! まだ意識があったとは……」
「お前の事はもう既にお見通しだ。タイマー」
そうだった。あの後、タイマーをどう封じ込めたのか、ヒーローである栄華さんに詳しく聞いたんだよ。俺はそれで今の俺になる事ができた。だから……。
「行くぞぉ、タイマー。お前の弱点は見切っている!」
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