第10話インジゲーター(side栄華)

「前方、約二km。線路上です」

「了解だ」


 空中戦が出来る様になったのは、先代のお陰と言ってもいいだろう。コンピューター技術がここまで進化するとは、思ってみなかった。

 それは同じコンピュータ会社の迫り来る躍進から始まった。

 追いつけ追い越せとのし上がって来たライバル社、一社はWinnerのバル・ゲイトともう一社はgamerのラル・バッジョの影響だ。


 そのお陰で単体でコンピューター技術を開発する事に懸念を抱いた現会長は、そのライバル社と提携を結んだ。それが新たな技術の幕開けとなった。今、世界には三大コンピューター会社が存在する。それもこれも、今現在起こってるテロへの警告を受けての技術革新。


 会長はWinnerのバル・ゲイトの技術を革新的アイデアとして、世に新しいコンピューターを出した。それが前OS Xだった。共同開発のお陰でユーザーが拡大されていった。その裏技術をこのヒーロースーツにも転用し、今に至る。


 gamerとの共同開発も行った。これは新しいスマホの着手だった。

 それまで、日本ではWORLD社がシェアを占めていたが、それを追い越せと追随したのがgamerのAndroidだった。


 最初は対立していた二社だったが、世界で起こるテロと技術開発の波に押され、新たなスマホの開発が始まった。

 それがArtificial Intelligence(人工知能)略してAIだ。


 この技術は、人類をある方向へと導く事を防ぐ為と言う名目。

 だが、私はそれを全面的に賛成している訳ではない。

 今は、それより目の前の敵の存在が第一目的。


 敵のやつらは主に人体そのものを変形させて、人間と世界への破壊活動をする。今はまだそのテロ組織が断定的には分からない。


 この日本では、製薬会社が怪しいと言うあくまで噂だ。おおよその予測の範疇を越えない。

 ここ数年で日本では、製薬基準が緩んだ。病院でなくともコンビニや薬局、ドラッグスアなどで購入出来る事。


 その類いも全部良識的なものとは言えない。

 おまけに安価で手に入れる事の出来るドラッグも存在するという。

 その危険性を唱え、今警察などが動いている所だが、実際の話何処まで検挙出来ているものか不確かだ。

 そんなものが出回れば、精神を犯された人たちが、暴動を起こしたり、怪人へと変貌したりする事だってある。


 だから今私共は、全国の製薬会社への調査を実施している。

 もう時期その黒幕が上がる所だというのにこの異常事態だ。


 見えた!


「これより戦闘モードに入る」

「了解です。期待してます」

「あぁ、その前に、あいつらに連絡しておいてくれ!後処理を頼みたい」

「はい、その旨もう伝えてあります。しとめた後、駆けつけるようですよ。時間は余り無いらしいですが……」

「馬鹿野郎。舞台挨拶とこっち……どっちが大事だと伝えておけ」

「っっはっはい。ただ今」


 ったく、最近の若者と来たら、本業より人気取りか。

 まぁ、俺たちが影の真のヒーローを演じるには、テレビを使った主役のヒーローが必要だと思うが、ちょっとここ最近はテレビシリーズといい表舞台が多過ぎる。


まぁそれが狙いだったが……。


「昆虫型かぁ。かーるい軽い」


 ギュオォオオオオオオオ!


 線路上に立ちはだかるカブトムシ型の巨体怪獣。

 線路上の電車が停まる瞬間…。こっこの波動は!


 スローモーション……。


 この昆虫型と時空間が歪んだと言う事は、本体が別にいるという事だ。乗客達が車両から飛び出された。

 後ろの乗客達も慌てて、車両から飛び出しているのが分かる。


「余り悠長な事は言ってられんか。これで、決める」


ギュオオオオオオオオオオ!!


「波動砲、発射」


 腕を構え、カブトムシ目がけて波動を発射した。衝撃で飛び散るカブトムシ。


「フンッ。私もまだまだ捨てたものじゃない。処理完了したぁ。すぐに帰還する。バババギャーンに伝えたか?」

「はっはい。今向かってるようです」

「なら、後処理は頼むぞ。本体は多分人型だ。力が強いとは言えんからな」

「はい、伝えます」

「私は久しぶりの戦闘で汗が止まらんよ」

「ハハハハハッ。でも十分ですよぉ」

「うむっ」


 再び白煙立ち籠める場所から、私はWORLDへと帰還する途中だった。

WORLD通信本部から通信が入った。


「所長!新たな未確認物体。ってかぁ、こっこれは!」

「どうしたぁ!? そんなに慌てて、処理は簡単だろ?」

「いえ、バババギャーンの生命反応が……一気に奪われてます!」

「なっ何だとぉ!」

「ダメです。生命インジゲーターが見る見るうちに消耗して……やられます。まっまずいです!」

「チッ、新手か。それとも、本体の方か?」

「そっそれは、分かりません。とにかく5体とも、もう力がありません」

「わかったぁ。すぐに向かい直す」


 その時、緑のタイツの頭部分から、ヒデオの声が聞こえた。


「栄華さん、俺も向かいます」

「おいおい、お前はまだ治療中だろう」

「大丈夫…」

「無理するな!奴らを確認したら、引き取るぐらいは出来る!じっとしておけ!」

「しかし」

「所長である俺の命令だ。いいなぁ。まぁ戦闘はお前の方が上かも知れんが、撤退の仕方はまだまだ俺の方が上だ。ゆっくり見物でもしておけ。切るぞ」


 私は、また白煙立ち籠める場所にUターンして飛んで行った。

白煙が以前より、大きく上がっている。多分これはバババギャーンのせいだろう。奴らの戦法だからな。


ん? なんだ? こっこれは。


 巨体アリがバババギャーン目がけて突進した。

 バババギャーンは赤い血を噴き出して倒れていた。

 そのアリンコの隣にいる茶褐色の物体。

 これは…怪人だ。オーラ(波動)が凄まじく立っていた。


「おい、バババギャーン。お前らしっかりしろ」


 上空の私にその怪人は気づいた。斜め上のこちらを見ている。

 一瞬の出来事だった。目の前に何かが走った。


「うぅうぅうう……」


 気づけば線路上に倒れていた。空が見える。そしてゆっくりとこちらに近づく異様な地響きと足音。

 私は、その方向へと体を起こした。


「ん?こっこいつは……英雄ヒデオと戦闘した怪人かいじん……」


カイトなのか……。

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