第7話 貨幣と価値

 無能な国の長が有能な海外の統率者を国から追い出した。残った指示を待つ自国の労働者は何をすればよいのかわからなくなり、投資家達はそんな国の支援を次々とやめた。気づいたときには政府からの援助も遅く国としての価値は完全になくなった。

 国の価値を示すものそれは、貨幣つまり金である。その貨幣価値がなくなったのである。その結果ジンバブエではハイパーインフレが起こり物価が急上昇、チョコボール一箱1億円などというおかしなことになっている。また、それを買うために1億円紙幣が刷られる始末だ。要は国の破綻である。

 こんなことがほんとに起こるんだな…俺は驚きや世界経済への不安に対してない知識なりに考えてみたもののやはり他人事で現実感のない話に思えた。しかし、なぜか心臓はバクバク震え、高揚感が止まらなかった。それは自分より遠い国で起こった自分には関係のない出来事ではあるが、自分を縛り付けている鎖がちぎれたことを示していたからだ。「金」生まれてから死ぬまでいつの間にか価値を植え付けられ、人間を縛り、夢を与え夢を奪う、鎖である。それは人の大きさを測る物差しにも、人に安心を与える薬にも人の命を奪う凶器にもなる。その金が死んだ瞬間をみた。そんな気がしていた。


 しかし、今の俺の世界ではそんなことは起こらない。その証拠に今日も朝6時にスマホからMr.Childrenの歌が聞こえてきた。鉛のような体で最寄り駅のホームに向かう。何も変わらない日常…

そのとき…「ドン!!!」大きな音とともに全身に痛みが走った。

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