第3話 回顧①

 俺は少しだけ優秀で少しだけ恵まれていた。

 地方の田舎町で生まれた。俺は勉強も運動も上から5番位をキープする少しだけ優秀な子供だった。ポイントは決して1番ではないということだ。そのまま地元でそこそこ優秀な自称進学校に入学。部活は勿論帰宅部。打ち込むことも無く青春をそこそこに謳歌しながら、そこそこの有名私大に入学した。

 …と今なら俯瞰して考えられるが当時の俺は完全に自分は優秀で所謂「特別な奴」と勘違いしていた。過去の自分をぶん殴ってやりたい。しかし大学入学とともに自分は普通の人間であることに気づく。

 俺の入学した大学は小学校から大学まである金持ちマンモス私大であった。そのため同級生には本物の金持ちがわんさかいた。俺の両親は地元ではそこそこ名の知れた会社に勤めており「お袋の口癖はお金がないお金がない」であったがその日の食事に困ることもなく、小遣いも少額ながらくれる。教育についても行きたいと言えば学習塾の費用を出してくれた。そんな両親を俺は尊敬しているし、立派だと思った。俺も大学卒業後は大企業に入り、嫁さん貰って子供作って家を建てて…しかし、大学での友人の親はどこどこの企業の役員だの、会社を経営しているだと、次元が違った…大きなマンションを借りて高級車に乗ってブランドに身をつつ、そんな友人たちをみて自分を知った。 


 彼らは試験らしい試験を経験したこともなく勉強の方は苦手なので良くノートや試験対策を教えてやる代わりに金を貰っていた。入学当初は金持ちに驚いていたが自分でも上手く共存して生活できていた。いや、どこかで見下していたんだと思う。これから就職活動という大きなふるいがある。そのときにこいつらは確実に落とされる。苦悩や努力や我慢を知らない。たまたま金持ちの親の元に生まれただけのぼんくらだ。今思えばこの頃から俺の心と頭は金に支配されていたのかもしれない…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る