8-1 再出発に向けて
「すげぇ!これ本当に食っていいのか?」
「もちろんです!召し上がってください」
目の前に広がるのは、すべて最高ランクの食材で作られた最高ランクの料理たち。
もともと、選抜試験で使うはずだったらしいが、さっきの騒動があったせいで開催が延期になったのだ。
それで、材料がもったいないということになり、お礼もかねて料理をご馳走してくれることになった。
「なんだこれ?!うますぎる!」
「そりゃあ兄上の作った料理だからね」
長男はすぐに目を覚ましたが、次男三男はまだ気を失っているらしい。
「旅をするにはお金が必要だと思うので、これを」
そう言って、小さな布袋を差し出した。
「少ないですが、ぜひお役に立てればと」
「ありがとう!」
触った感じだと10枚程度ってところか。
いくら入っているのかは分からないが、一文無しの俺達には少しだけでもうれしいかぎりだ。
「それと、宿をとっておりますので今日はそちらでお休みになられてください」
「そこまでやってくれんのか……」
ここまでよくしてもらうとさすがに怖いぜ。
第一、俺がヘルメッセンジャーを倒したわけじゃないのに。
威嚇……そんなわけないか。
「それよりアデルさん。これからどうするんですか?」
「そうだな。仲間集めかな」
「そうなんですね。どんな人を仲間にしたいんですか?」
「攻撃魔法を使えるやつに、僧侶かな」
「攻撃魔法使えないんですか?」
「使えはするけど……」
イメージってついついやりすぎるんだよな……かと言って魔法を使うにしても全く知らないし。
そもそも、なぜイメージした魔法って名前を決めなくてもいいんだ?
さすがに得体のしれない力を使いまくるのも怖いよな。
それに、テレポート改を使ったら魔法使えなくなるから攻撃魔法を使えるやつは欲しいよな。僧侶も。
「MP切れになったら困るだろう」
「たしかにそうですね」
◇
「ミレー!そいつは任せたぞ!」
「わかったわ!」
ふぅ。一度大きく深呼吸をする。
「フレアサンダー!」
その瞬間、強大なサンダーの音とともに、灼熱の炎が敵を焼き尽くす。
「す、すごい……」
「レベル12でもう2属性魔法を使うとはな……」
「さすがだな!ミレー」
「ロイスの剣技の方がすごいわよ」
「今日はここらへんで休むか}
「近くに村があるみたいよ」
勇者ロイスが率いる勇者パーティーは、現在ミレーのレベル上げを行っている。
「着いたぞ」
私たちの村より少し大きいわね。
村では子供たちが無邪気に遊んでいる。
昔はアデルと一緒にこうやって遊んでたなぁ。
「ミレー、どうかしたの?」
「ううん。少し昔のことを思い出して」
「そうなのね。明日も早いからしっかり休んでおいてね」
「うん」
アデルは今どうしてるんだろう。
村人のくせに冒険者やるって、何を考えてるんだか。
私がいないと何もできないくせに……よし!私、もっと頑張らなくちゃ!
アデルが戦わなくていいように私たちが魔王を倒さないと。
◇
くしゅん!!
「風でも引いたのかな?」
こんだけ強くなっても病原体には勝てないとは……
それより、明日のために買い出しに出かけるか。
「おいアイン!」
「はーい!どうしたんですか?」
「食料とかの買い出しに行くぞ。料理するために材料とか必要だろ?」
「わかりました!」
早速繁華街へと向かう。
「なるべく日が持つものにしてくれよ」
「はい!」
それにしても人多くないか。
長年村にいたせいで、人混みが珍しく感じてしまう。
せっかく繁華街に来たし、何か役に立ちそうな道具でも探してみるか。
「見るからに胡散臭そうな店があるな」
とりあえずそこに行ってみることにした。
「ん?」
ふと、隣を通っていた女性が気になった。
「あいつ、どっかで……」
気のせいかな?
賢者の幼なじみより村人の俺の方が強かったんだが 希島カツキ @kattuntun
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