6-2 新たな仲間を求めて

「しっかしどうしたもんかな」

「お金がないせいで飯も食えねえし宿もとれねえ」


 もともとゴブリン退治のクエストの報酬が手に入るつもりだったが、ゴブリンの死体を持ってくることができなかったため、報酬をもらうことができなかった。

 屋台に出ている焼き鳥らしき食べ物を見ているときだった。


「おい、あれってもしかしてサルヴァン家じゃないか?」

「まじかよ!世界でも数少ない料理人一家の貴族がなぜここに?」

「そういえば明日コックの選抜試験があったよな」

「まさかサルヴァン家がここセルジオのコックになるのか?」


 どうやら料理人であり、貴族でもあるサルヴァン家が明日のコック選抜試験に参加するらしい。


「貴族か、めんどくさそうだな」


「おいあれ!長男のベルス様じゃないか?!」

「次男のマルス様に、三男のロジス様まで!!」

「まさか3兄弟全員出場するのか?」


 そこには平民に向かって手を振っている3兄弟の姿が見える。

 しかしそこには3兄弟ともう一人か弱そうな青年が一人歩いている。


「あの青年ももしかしてサルヴァン家なのか?」

「しかしサルヴァン家に四男がいるなんて聞いたことないぞ」


 ベストにはサルヴァン家の紋章がついていたのでおそらく雑用か何かだろう。


「なんだか嫌な感じがするな」


 後をつけてみることにした。


「俺らって結構有名なんだな」

「当たり前だろ。世界でも数少ない料理人の貴族だからな」

「でもよ、なんでこの出来損ないまでついてきたんだ?」

「そりゃ雑用として使うために決まってんだろ」

「こんな奴が兄弟だなんて、サルヴァンの恥さらしが!」

「おいアイン!お前は人前に出ることを禁ずる。お前みたいな出来損ないが兄弟だとばれたら恥ずかしくてサルヴァンを名乗れなくなっちまうからな」


 なるほどね。


「胸糞悪い連中だぜ」


 体が勝手に動いてしまった。


「誰だ貴様は!」

「お前らみたいなくそ野郎に名乗るななんてないんだよ」

「なっ!貴様、今誰を侮辱したのか分かっているのか?!」

「誰が侮辱したって?侮辱したのはお前らだろ」

「実の弟のくせによく雑用任せたりあんなこと言えるよな」

「弟だってよ!こんな奴血のつながっているだけのごみだろ」


 弟を蹴りながら笑っている。


「ゴミくずどもが何を言ってんだ」

「貴様あまり調子に乗るなよ」

「第一貴様みたいな愚民が貴族様の家庭の事情に首を突っ込んでんじゃねぇよ!」

「お前らみたいなゴミでも貴族になれるなんて世の中何が起こるかわからないもんだな」

「知ってたか?貴族はな一人や二人ぐらい殺したってな、なんてことないんだぜ」


 ベルスたちはナイフを取り出した。


「俺とやるのか?手加減できそうにないからやめといたほうがいいぞ」

「その減らず口、すぐに黙らせてやるよ!」


 そう言って襲い掛かってきた瞬間 


「もうやめてください!」


 突如アインが叫んだ。

 

「もう、やめてください。全部僕が悪いんです。僕が出来損ないだからいけないんです。だからもう僕たちに関わらないでください」


 ベルスたちが一斉に笑い出す。


「助けようとした相手にここまで言われたならな」

「本人がゴミだって言ってんだからゴミなんだよ」

「おいお前!本当にそれでいいのか?!一生ゴミとしてこいつに笑いものにされて生きていくのか?!」

「いいいん……です。だからもうこれ以上は」


 その瞬間アインをつかんだ。


「一つ聞いていいか?お前って料理できるか?」


 明らかにそんなことを聞くタイミングではなかっただろう。だが、どうしても確認しておきたかった。


「い、いきなりどうしたんですか」

「できるのかできないのか聞いてんだ」

「で、できますけど」

「ならちょうどいいや、お前俺の仲間になれ」


 そう言って、返事も聞かないままテレポート改を心の中で唱える。

 場所は…とりあえずとなりの国まで行くか


 「無理ですぅぅうう!」 

 

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