5-1  唯一の弱点

「んん……もう朝か……」


 いつもよりもぐっすり眠れた。


「今日こそはクエストクリアしないとな」


 顔を洗おうかと、立ち上がった時に、昨日の本が目に入った。


「そういや昨日習得したスキルは……」


 早速スキルを確認する。


「……ないだと!」


 昨日習得したはずのスキルがなくなっている。


「確かに昨日習得したはず……」


 もう一度確認したが、やっぱりない。

 しかし、ひとつ気になるものがあった。


「なんだこれ?Newだと?いつ習得したんだ」


 創作の右下にNewと表示されている。おそらく、新しいスキルなのだろう。

 本を手にとり創作を調べるが、やはり載ってなかった。


「このスキルはなんなんだ?」


とりあえず顔を洗い、クエストに行く準備をした。


「そういや、ミレーは?」


ドアに紙らしきものが貼ってある。


  ごめんねアデル。調査が終わったらしく

  て、私戻らなきゃ。朝食はシェフに頼ん

  であるから。

  それと、よだれだなんて可愛いわね。

              ミレーより


「あ、あいつ……」


 朝食を食べ終え、まずはギルドへ向かう。


「うぃーっす」


 俺が入ってきた瞬間、周りは一斉に静かになる。


「はぁー、なんだよ」


 ため息を吐きながら進むと、受付に見覚えのある者が。


「おっ!エミリじゃないか!もう帰ってきてたのか」

「アデルさん!1日ぶりです」


 こいつは元気だな。帰ってきたばっかなのに、もうクエスト受ける気かよ。


「あーそうだ、俺地図わかんなくてさ、もっとわかりやすいのないか?」

「実は私もわかんないんです」


 まじかよ!と思いつつも、同類がいたことに少し安心した。


「だよなー、地図なんか使わずに、ここ行きたいって思うだけで行ける魔法とかねぇのか?」

「そんな魔法あるわけないじゃないですか」

「だよなーあ?!」


 急にビビビッ!とい感覚が、身体中をはしった。


「急にどうしたんですか?」

「い、いやなんでもねぇ」

「ん!?」


 目の前にいきなり、文字が現れたら。


[魔法の名前を決めてください]


 魔法の名前だと?!なんのことなんだ?


[魔法の名前を決めてください]


 何をいってんだ?ん?魔法の詳細か。見てみよう。


??? 思念するだけで、目的の場所へ移動

    できる。


 これってまさか?!俺がさっき言った魔法の事か?

 でもなんで?


[魔法の名前を決めてください。10秒以内に決まらなかった場合、消去されます]

[10、9、8


 今はそんな事考えてる暇ねぇ。


7、6、5、


 でも急に名前を決めろって言われたって、思いつかねぇよ。


4、3、2


 あぁ、もういい!


「テレポート改だ!!」


[テレポート改で登録しました]


 どうやら間に合ったようだ。

 だが、なんでこんなに居心地悪いんだ?

 周りを見渡すと、みんなからの冷たい視線が、俺に集まっている。


「こ、これはだな!」


 俺は耐えきれず、心の中で叫んだ。

「テ、テレポート改!北の山脈に!」


 その瞬間、俺は光に包まれ、目の前が真っ白になる。

 辺りの雰囲気が、一気に変わった。


「つ、ついた……のか?」


 視界が戻ってきた。


「なんだ?誰かいるのか?」


 視界がはっきりしたと同時に、思わず目を見開いた。


「う、うそだろ……」


 辺りには、数百と言わんばかりの小柄なゴブリンと、一匹の大きなゴブリンがいる。

 どうやら俺は、ゴブリンの集落に転移してしまったらしい。















 


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