3-2 異世界のお決まりごと

 恐る恐るドアを開ける。


「こ、これがギルドか。まんまじゃねぇか」


 たくさんの冒険者がいた。そして、奥にカウンターらしきものがある。


「どうやらあそこがカウンターみたいだな。」

「そうですね」


 カウンターへと向かう途中、ゴリマッチョな男が前に立った。


「おいおい、何しに来たんだ。ここはガキの来る場所じゃねぇぞ」

「冒険者登録に来たんだ」


 その瞬間ギルドにいる全員が笑い出した。


「お前らみたいなガキがか!」


 イラっときたが、面倒な事になるのは避けたかったので無視して歩いた。


「あんた受付の人か?俺達、冒険者登録したいんだが」

「それでは、お名前と役職をどうぞ」


 マジかよ。村人とか言ったらまた絡んでくるよな。


「私はエミリ。僧侶です」

「そちらは?」

「あ、あぁ。俺は、その……むら……びとだ」


 ギルド内が静まり返った。


「あ、あの、役職は?」

「だから村人だって!」


 再びギルド内は笑いにつつまれた。


「村人が、冒険者だと!」

「笑わせんな!」


 さすがに我慢の限界だった。


「お前ら、そろそろ黙れよ」

「なんだとテメェ?!村人ふぜぃ」

『グラビティウォール』


 突如目の前の冒険者全員が地面に押しつけられた。


「な、なん、なんだこ、れ」


「次は手加減しねぇぞ」


 イメージするとやりすぎてしまうことがあるので、この世界にある魔法を使う事にしたのだ。


「や、やべぇ!」

「化け物だ!!」


 冒険者はみんな逃げてしまった。


「この魔法って、やばいのか?」

「やばいも何も!最上級魔法ですよ?!なぜ村人のあなたが?」


 どうやら魔法にも階級があるらしい。


「それより、さっさと冒険者登録しようぜ」

「じゃ、じゃあ、ステータスプレートを表示してください」


 ステータスプレートを表示した。


「名前がエミリ。僧侶でレベル13。

HPが803、MPは450。レベル13にしてはどちらもなかなかの高さですね。合格です」

「やった!」


 805って高い方なのかよ。しかもレベル13で。


「名前がアデル。村人でレベル69?!」

「めっちゃ上がってんじゃん!」


 そうか!あのドラゴンか!まぁ、割と強いドラゴンみたいだったし、確か経験値増量SSSのスキルもあるから普通か。


「HPが188683……MPが217642……」

「結構あがってんな、まぁ68も上がったからこんなもんか」


……。


「いやいやおかしいでしょ!何この桁外れの数値!?てか68上がってもこんな数値にならないから!」

「アデルさんって何者なんですか?!」


 まぁ、そりゃ驚くか。


「と、とりあえず、2人は合格です」

「ふぅ、とりあえず冒険者になれたから一安心だな」

「あなたたちは、冒険者になったばかりなので、1番下のDランク冒険者からです」


 Sの文字ばかりだからDってなんか違和感があるな。


「それと、これをつけてください」


 どうやら、鉄でできた指輪のようだ。


「このリングで階級を表します。1番下のDランクが、このアイアンリング。順番にCがブロンズ、Bがシルバー、Aがゴールド、最高ランクのSがプラチナと、なっています」


 よくあるシステムのようだ。


「ランクアップはクエストクリアなどの実績で決まります」

「なるほどな、大体わかったよ。ありがとな」


 今日はもう暗いし、宿を探して寝よう。明日は早速クエストをうけてみるか。


「なぁエミリ。ここら辺に宿はあるか?よかったら連れてってくれ」

「いいですけど、お金あるんですか?」


 そういえば、荷物何も持ってきてねーじゃん!せめてお金だけでも持ってくればよかった。


「その感じじゃ、ないんですね」

「う、うん」

「仕方ないですね。私がだしてあげますよ。今日はお世話になりましたから」

「ほ、ほんとか!?ありがとう!!」


 こうして、無事に寝床が確保できた。と、思っていたが。


「な、なんで同じ部屋なんだ?」

「この先何があるかわからないから、なるべく節約しないとダメです。そ、それに、1人はこわいから……」


 1人が無理なくせに、よく冒険者になろうと思ったな。今日俺がいなかったらどうするつもりだったんだ。


「とりあえず今日はもう寝るか」


 ベッドに入ろうとした瞬間。


「アデルさんは床で寝てくださいよ!」

「なんで、俺がこんな汚いとこで!お前が床で寝ろよ」

「嫌ですよ!」


 よくこれで店だしてるな、ってくらいに床はほこりだらけで汚かった。


「じゃあ、二人でベッドを使いましょう」

「は?」

「ここからこっちは私で、ここからあっちはアデルさんです」


 おいおい嘘だろ。

 いくら床を回避できたとは言え、女の子と一緒のベッドで寝るなんて。


「まさか恥ずかしいんですか?」

「ん、んなわけねぇだろ!いいじゃんそれ!」


 こうして、二人で寝ることになった。


「ったく、こんなんでよく眠れるな」


 エミリはすぐに眠りについたが、彼女いない歴=年齢の俺は慣れておらず、なかなか眠りに着く事ができない。


「んん……」


 ビクッ!背中になにやら柔らかい感覚が。

 

「ま、まさか……」


 そして、眠れないまま夜が明けた。


「はぁーぁ。おはようございます。アデルさん」

「ぁぁ。おはよう……」

「どうしたんですか?顔色が悪いですよ」


 お前のせいだ!と思ったが、もはや言う元気もなかった。


「先が思いやられる……」








 

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