3-1 異世界のお決まりごと
途中ドラゴンに襲われ、一時はどうなるかと思ったが、無事に王都に着くことができた。
「わぁー!すっごーい!」
街ではさまざまな店があり、たくさんの人で賑わっていた。
そして何よりも目立っていたのが、あの大きな城だ。
「今からあそこに行くのか……」
村から一歩も出たことがない彼女は、嬉しさの反面、不安を抱いていた。
「ここでお別れね、アデル。私達は一度お城へ行かないといけないの」
……。
返事がない。
まぁ、予想はしていたけど、こんなに早いとはね。
早速城へ向かった。
「ったく広すぎだろ。どこなんだここは」
ギルドを探しているうちに、道に迷ってしまったらしい。
「きゃー!」
女の叫び声が聞こえた。
急いで声のする方へ行くと。
「なぁ、いいじゃねぇか」
「は、はなしてください!」
男2人がおそらく俺と同じくらいの年齢の女に手を出そうとしている。
「おい!やめろ!」
「なんだテメェ?!」
「この女は俺らのもんだ!」
男2人がこちらに向かってくる。
「その子が嫌がってんだろ!」
と言いつつも内心かなり焦っていた。
やっぱそうなるよな。どうしよう。さすがに魔法使うと街にまで被害がでるし。
そうこうしてる間に男が殴りかかってきた。
「うるせぇ!ガキが!」
俺は思わず目をつむった。
助けようとしてやられるとかダサすぎんだろ。
なんてことを思いながら、殴られるのを覚悟した。
「あ、あにきぃぃ!」
目を開けると、殴りかかってきた男が壁に張り付いている。
「テ、テメェ!よくも!!」
もう1人が殴りかかる。
すると。
「!?」
身体が勝手に動き、見事に避けた。さらに、強烈な右フックまでお見舞いした。
「まさか、これもスキルの……」
「あ、ありがとうございます!」
見た感じ怪我はなさそうだ。
「あぁ。怪我はないみたいだな」
「はい。おかげさまで」
何であんなとこにいたんだ。まぁ、それより早くギルドに行かないとな。
「なぁ、お前ギルド知ってるか?」
「あなたもギルドに用があったのですね」
あなたもということは、彼女もギルドに用があるのだろうか。
「お前も用があるなら、連れてってくれないか?」
「そうですね。あなたには助けてもらったし、是非!」
これでどうにかギルドに辿り着けそうだ。
「それと、私はエミリです」
「俺はアデルだ。よろしくな」
「こちらこそ」
こうして俺たちはギルドへ向かった。
「エミリは何でギルドへ行くんだ?」
「実は冒険者登録しようと思って」
どうやら、彼女も冒険者になりたいらしい。
「そっか。俺と同じだな!」
「あなもなんですね。武闘家ですよね?」
「いや、村人だぞ」
俺はステータスプレートの役職の部分だけ見せた。
「む、むらびと?!」
「まぁ、驚くよな」
「あんなに凄い動き、てっきり武闘家かと」
それも、そうだ。村人に戦闘センスなんてないからな。
しかも、あの動きには本人が1番驚いている。
「着きましたよ」
「早っ!」
「だって私たちがいたのはギルドの裏にありますから」
衝撃の事実にショックを隠しきれない。
「まさかこんなにも方向音痴だったとは……」
「さぁ、入りましょう」
「お、おう」
いよいよ冒険者デビューか。
村人の役職をもらい、生涯村で普通の生活を送るはずだった俺が、ギルドの目の前にいるなんてな。
「よし!行くか!」
◇
「この先に王がおられる。くれぐれも、粗相のないように」
「はい」
とびらを開けると、赤いカーペットが敷いてあり、その先に王らしき人物が王座に座っている。
「ただいま戻りました」
「ご苦労であった。そなたが例の」
「はい。賢者の職を授かりました、ミレーです」
勇者らしき人物が見当たらない。まだ来ていないのかしら。
「今日は、よく来てくれた。そなたを呼んだのは、他でもない。勇者らと共に魔王の討伐に行ってもらうためだ」
「はい。存じ上げております」
魔王討伐が1番の目的だけど、今は魔王の居場所が分からないため、魔王を見つけるために、旅にでているらしい。
「早速明日から出てもらう。勇者パーティーは今、最寄りの村にいるらしい。明日そちらで合流してもらう」
明日にはもう出ないといけないのか。最後にアデルに会いたかったけど、そんな時間はなさそうね。
「今日はもう休んで、明日に備えなさい」
「わかりました。失礼します」
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