2-2 やはり異世界転生は裏切らない
その日の夜、俺はミレーの家に行った。
「俺はあいつに……」
ドアをノックする。
「はーい」
ミレーの母親がでてきた。
「あら、アデルじゃない。こんな時間にどうしたの?」
「あの、ミレーはいますか?」
心臓が、バクバクしている。
「ミレー!アデルよー」
ミレーが階段を降りる音が聞こえる。
「どうしたの?アデル」
「ミレー、俺実は……」
「実、は?」
ミレーの顔がみるみる赤くなっていく。
「実は……明日ついていく事にした」
「だよねー、分かって……は?」
「急でごめん!」
チート能力はさっき手に入れたから仕方なかったのだ。
「いつもと違う雰囲気で、急にあんな言われ方したら、勘違いしちゃうじゃない……ばか」
なんの事かさっぱりわからなかった。
それよりも……
「な、なぁ。この犬どうにかしてくれ」
「もしかして、犬に怯えて震えてたの?」
俺は、小さく頷いた。
「はぁ。ばっかみたい」
彼女はそう言って、犬を小屋へ戻した。
「それよりなんで王都へ行きたいの?村人だし、戦うことは不可能でしょ?」
「あーいやー、なんか王都で商売したいな……ってね」
まだチート能力については、話さないことにした。
今話すといろいろと面倒だからだ。
「なによその理由。まぁ、アデルと離れ離れにならないで済むからいいか」
「騎士長に伝えといてくれ」
そう言って、俺は家へ帰った。
そして、あまり寝付けないまま出発の時間が来た。
「母さん、父さん!俺、王都に行くことにした」
「ふーん、いいんじゃない」
「おう、行ってこい」
……
「え?止めないの?」
思ってた反応とは違ったが、すんなりいけたから良しとしよう。
「アデル!遅いわよ!」
「悪りぃ悪りぃ」
「じゃあね!私達、いつかまた戻ってくるから!」
そう言って俺たちは村をでた。
「にしても、王都ってどんな感じなんだろうな」
「そうね、やっぱり賑わっているのかしら」
そんな会話をしながら、馬車を走らせていると急にドン!という音をたて、馬車が大きく揺れた。
「な、なんだ?!」
「一体何が起こったの?!」
騎士長が血相を変えてこちらへ急いで来た。
「大変だ!!このあたりでは出現しないはずのブラッディードラゴンが現れた!」
初めて聞く名前だ。
「そいつはそんなにやばいのか?」
「当たり前だ!Bランク冒険者が4人がかりで、やっと倒せるレベルだぞ!」
Aランク冒険者が4人がかりとは、かなりの強さだ。
しかし、なぜそのような魔物がこんな所に?
いや、今は逃げる事に集中しよう。
「ミレー!急ぐんだ」
「足が引っかかって、うまくでられない!」
ドラゴンがこちらに近づいてくる。
「まずい!」
どす黒い炎の息を勢いよくこちらに吐いてきた。
すぐさまミレー覆いかぶさった。
「く、くそ!背中がぁぁあ……痛くも痒くもないぞ?」
彼は思い出した。魔力耐性SSSのスキルがあることに。
「とりあえず、ダメージが入らないことは分かったが、どうやって倒す?」
ここで派手に魔法を使ってしまうと、みんなにバレて後々面倒なことになる。
「これなら……」
俺は1センチくらいの小さな氷の刃を想像し、ドラゴンに飛ばした。
「よし!」
そして、ドラゴンを体内から凍らせ凍死させるイメージをした。
「お願いだ!」
その直後ドラゴンは急に倒れた。
おそらく周りは、急にドラゴンが倒れた!なんて思っていることだろう。だが本当は、アデルの魔法により凍死しているのだ。
「今のうちに行くぞ!」
そう言って騎士長は馬に乗り込んだ。
俺たちも馬車に乗り込み、先へ進んだ。
「さっきのドラゴンどうしたんだろうね」
「さ、さぁな」
どうやらバレてないみたいだったので良かったが、あんな修羅場はゴメンだ。
「アデル見て!あれって!」
「なんだ?!あのとてつもなくデカい城は!おまけに街まであるぞ!」
初めてみる王都に興奮を隠しきれなかった。
「なんか異世界系のラノベって感じしてきたぁ!」
「何それ?」
「なんでもねー!」
こうして俺の最高な冒険は始まった。
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