1-2 普通じゃなくなった日

 まもなく俺は小さな村でアデルとして、父のアッシュ、母のマリアの間に産まれた。

 物心ついたのは4歳くらいだろうか?

 だんだん前世の記憶が蘇り今ではほとんど覚えている。


「はぁ、今日は最悪の日だ。どうせ村人だからな」


 今日は成記祭。

 15になり役職を与えられたものを祝う、この村の一年に一度の大きな祭りだ。

 この世界では15から大人らしい。

 そして、今日は俺の15になる誕生日でもあるのだ。


「おーい!急がねーと遅刻すっぞ!」

「アデル。行ってきますのハグは?」

「母さん!俺ももう大人なんだから」


 いつもと変わらない朝。


「それじゃあ行ってくる」


 こうして俺は家を出て、成記祭のある教会へ向かった。


「アデルー!」

 

聞き覚えのある声だ。


「アデル!おはよう!」

「ミレーか」


 彼女はミレー。俺の幼なじみだ。

 彼女とは、物心ついたときからよく遊んでいた。


「ついに私たちも大人か。どんな役職になるのかな、楽しみだね!」

「そういやお前も今日が誕生日だったっな」

「ひどー!初恋の相手の誕生日を忘れるなんて!」


俺の頬がみるみる赤くなっていく。


「だ、だだ、だれがお前なんかに恋するんだよ!!」


 なんで俺はこんなにムキになってるんだ。


「へー、そうなんだ。顔赤いけど?」

「う、うるせぇ!そんなことより早く行くぞ!」

「んふふ。そうね。行きましょう!」


 何故だかこいつの前では落ち着かない。

 まさか……いやそんなのありえないか。


「でもお前はいいよなぁ。やっぱり魔法使いか。いや、もしかしたら賢者かも?!」


 彼女は5歳から魔法を使えていた天才だ。


「言い過ぎだよ。世界にはもっとすごい人がいるんだよ。私なんかじゃなれないよ。第一私がこの村をでたらどうするの?」

「どーもしねーよ」

「だってアデルは魔法も使えなきゃ、剣も使えないんだよ。絶対村人じゃん。そんな人をおいて旅なんて、恐ろしいよ」


 くそ、なんで村人なんだ。

 てか、全部当たってて何も言えねぇ。


「いいすぎだろ……」

「アデル!着いたよ!」

「今日から俺も村人か」


 と言いつつも少し期待しながらドアを開いた。


「おー、アデルにミレーか」

「神父さーん!おはよう!」

「神父さん、も、もしかしたらの話だけど、神が言った役職が外れる..なんてことないよねぇー……?」


 馬鹿か俺は。


「何をおかしな事を言っておるのじゃ。まぁ、神の言うことが外れるなどないだろーが。」

「だ、だよねー」


 まぁ、分かっていた。

 分かってはいたが、信じたくはなかった。


「では、早速だがはじめるぞ。準備はいいか?」

「はい!もちろんです」

「できてるよ」


 心の準備はできている。

 どんなに足掻いても村人なんだ。


「我々の創造主たる者よ、今この者たちに、新たな運命の道を開きたまえ」


どこからか、光の玉が飛んできて体の中へ入っていった。


……。


「終わっ……たのか?」

「あぁ。ステータスプレートが見られるようになったはずじゃ。そこにお主らのステータスが表示されておる」


きましたステータスプレート。


「どうやって見るんだ?」

「右人差し指をまっすぐ伸ばし、上へ曲げてみろ」


言われた通りにやってみた。

目の前に自分のステータスが表示された。

もちろん俺は村人だったが、さすがにガッカリはしなかった。

それよりミレーの方を気になった。


「おいミレー。お前のやくしょ」

「ぇ……えぇぇぇぇぇえええ!」

「な、なんだ!どうした!」

「け、けけけ、けけ、けん……」

「けん?なんだよそれ。俺にみせてみ……賢者だとぉぉぉぉおお!?」


 そういえば、賢者がもうすぐ現れるとか言ってたような。

まさかミレーだったとは。


「そ、それは本当か?!スキルはどうじゃ!」


そういえば、増えることも減ることもないその人固有のスキルがあるんだっけ。


「魔力増幅Sに魔力強化S……さらに全属性魔力適性Sじゃと……」

「さすが賢者様だなおい。チートすぎんだろ……俺にもスキルってあるのかな?」


スキルハンターSSSだと


「なんだこれ。SSSってやべえじゃん!でも、どうせ村人の俺に扱えるわけねーよな」


 ミレーのことで騒がしくなった教会内。

 そんなことは気にする余裕がないくらいに俺は落胆していた。 

「よりにもよって幼馴染を賢者に選ぶなんて……」

 

「い、いそいで王都に知らせなければ!」

「私が賢者だなんて……」

「なんで賢者で嬉しくないんだよ……」


彼は知らなかった。

彼のスキルは賢者をも超える力を手に入れる事が可能であることに。












 





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る