4章 計画を考えているうちに、起こってしまうのが人生
1話 接触
さかのぼる事数刻前、兼次達がリディと合流をした頃。アレーシャとヴィタリーは、街の外側に向かって歩いていた。アレーシャは右手を、口にあてた。
「トロン、町外れまで来て」
そんなアレーシャを見ていたヴィタリーは
「戻るのか?」と彼女に話しかけた。
「ええ、そうよ。彼らを見つけないとね… 私の予想では、街の外に仲間がいると思うの。そこに合流しているはずよ」
アレーシャは、そう言うとヴィタリーを見た。彼は広場で見せた勢いは無く、何かを考えている様な険しい表情をしていた。
「どうしたの? らしくないわね…」
「何かわからないが、気が進まないんだよ。何と言うか・・・」
「あら、脅えているの?」
「ちげーよ、そんなんじゃねぇ。なんて言うかなー、なんか危険な感じがする」
「大丈夫よ、超能力を封じるシステムがあるでしょ?」
「そうだけどよー・・・ なんかなー」
「ほら、シッカリしてよ! 訓練受けたんでしょ?」
アレーシャは、ヴィタリーの背中を軽く叩くと。ヴィタリーは彼女に、気まずい表情を見せた。
しばらく歩いていた2人は、人気のない町外れまで来た。そこは人々が中央広場に集まっているせいか、何時もよりさらに人が居なかった。アレーシャは周囲を見渡し、人が居ない事を確認すると。ヴィタリーを連れて、細いわき道に入った。
「トロン、いいわよ。回収して」
アレーシャの言葉と同時に、上空の雲の中から一筋の光が照らされた。その光は2人を包み込むと、2人は街から姿を消した。
宇宙船に戻ってきた2人。ヴィタリーは適当な場所を見つけると、そこに腰かけた。そして、腕を組み何かを深く考えている様な表情で、アレーシャを見つめた。
「ちょっと! 計器の場所に座らないでよね」
アレーシャに言われヴィタリーは、不満気に立ち上がると彼女の側まで移動した。アレーシャは独り言のように、自動制御システム”トロン”に話かけた。
「トロン、街の周囲の生命反応を探し出して。そうね… 3人以上居るはずだわ」
『了解しました。検索を開始します』
暫らくすると、円形船室の中央にある円錐状の操作盤、そこから光が上に向かって放たれる。その光と共に空中に大きなスクリーンが現れた。そこには上空から見た、街の姿が映し出されていた。そして街の外には、4つの光る点が表示されていた。
『街の南側517m地点に、隣接している4つの生命反応を確認しました。時速3kmで街から遠ざかっております』
「ふふ、今日の私は冴てるわね… トロン、その生命反応の上まで移動して」
『了解しました』
予測が当たって上機嫌のアレーシャ、裏腹に徐々に不安が増していくヴィタリー。2人は移動している船内で、中央のスクリーンを黙って見つめていた。
『指定地点に到着しました』
「次は地上の生命反応に、ESPKシステムを照射しながら下降して」
『了解しました。ESPKシステム稼働しました。下降を開始します』
ESPKシステムは、超能力の効果を阻害する、特殊な電磁波である。機体は、それを照射しながら、ゆっくりと降下を始めた。雲をかき分けならが、徐々に対象に近づいていった。
「ヴィタリー、防御服に着替えましょう」
ヴィタリーに声をかけたアレーシャは、室内の端にドアに向かって歩き出した。ドアの前で停止した。彼女は振り返ると、ヴィタリーがスクリーンをまだ見つめていた。
「ヴィタリー!」
「あ… ああ。今行く」
アレーシャに強くせがまれ、ヴィタリーは重い足取りで彼女の方に歩き出した。中に入ると、2人は着ている原住民の服を脱ぎ始めた。薄い密着タイプの上着と下着を着ると、その上から金属光沢がある服を着こんだ。そして太ももに銃のポルダーをセットし、銃を差し込む。最後にカーボン素材のコートを着た。
2人は着替え終わると、ドアを開け再び中央に戻って来た。
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