14.【エピローグ】真ヒロインとハーレム?

「お、おごぉ、ぉぉ」

 "大魔導士"らしいエメルドは、地面に落下しながらも生きていた。いやまぁ、穴という穴から、いろいろと垂れ流してるので、とても"無事"な状態ではないが……。

「生きとるがん……」

 "酷いこと"になっているエメルドを見下ろしていた俺の横に、ルゥ氏が来て呟く。なぜか俺の背後では、シルファ嬢同士(本物と黒い奴)とで、杖を使った決闘が始まっている。何やってるんすかシルファ嬢。

ってまうか? ソレが外れせんなら、"力"はのーなってない(無くなってない)」

 エメルドの右手に腕輪のようにくっついている6つの宝珠を指さし、ルゥ氏が告げる。と同時に、その手に持つ大剣にはわずかに力が籠る。

「い、いや……」

 ──なにも殺すことは……

 そう言いかけて、俺はやめた。コイツが目覚めたときに"心を入れ替えている"なんて都合のいい展開があるとは思えない。

「これ外れないかな……」

 俺はしゃがみ込み、奴の右手に嵌っている腕輪状の宝珠を持ち上げる。一緒に腕が持ち上がり、そこから外れる様子が無い。

「取れせんなら、ってまうか、腕を切断してまうか、どっちかだな」

 更に背後から、ギルド長がそう言いながら近づく。"る"よりは、"腕切断"のがマシ? っていうか、なんで俺がコイツのために悩んでるんだ?

「しかし、その後に、この宝珠どうしよまいか……」

 ギルド長の悩む声が聞こえた直後、俺の手にあった宝珠が強い光を放ち始めた。

「えっ!?」

「み、味噌!!」

「離れやぁぁ!!」

 ま、まさか、エメルドが起きた!? いや、何かに反応して?……



「あ」

 この光見たことある。これ宝珠が発光してんじゃないわ……、これ、




 彩色済み神の像(三徹後のランナーズハイ中)




 ヤバイ顔色した神の像に変貌した。色付きだからよくわかるわー。

「製作スキルかよっ!!」

 俺はカラー神の像を投げつけた。頑丈なソレは傷一つ付かなかった。ってか、すごい宝珠素材にして、出来上がるのはよりによってソレかよ。

「……」

「宝珠の問題は……、解決してまったな……」

 ギルド長の呟きと共に、闇ダンジョン入口の地下空間には、なんとも言えない空気が流れた。






「ご主人様、今日はわたくしと闇ダンジョンいこみゃぁかなも(行きませんか)」

 冒険者ギルドの入り口をくぐった俺に、黒髪ショートの美人が楚々とした雰囲気で尋ねてきた。彼女はディアン・ソノバ。なんと、元マギ・アソシアで、俺が水魔法で"尋問"した彼女だ。

 闇ダンジョンから戻って数日後に突然彼女が冒険者として現れ、俺を"ご主人様"と呼んで頻繁にパーティーの要請をしてくるようになった。まさか、隙を狙って復讐でもされるんだろうか……。

「あの、えっと──」

「何言っとんの、今日はもう私と水ダンジョン行く約束しとる」

 俺の声を遮り、銀髪美少女魔法使いのシルファ嬢が割り込んできた。

「あんたさんみたいな、根暗な小娘引っ込んどりゃぁせ」

「ね、根暗!?」

 ディアンとシルファ嬢による、闇魔法と光魔法の対決が始まってしまった。ギルドの職員があわあわしている。


「あの二人も、毎日よーやるわ」

 いつの間にか赤髪巨乳大剣使いのルゥ氏が、俺の横に居た。彼女が二人の戦いを眺めつつ呟く。

「あんなんほっといて、俺と二人で行ってまお(行ってしまおう)」

「ルゥ、抜け駆けはあかん」

「ちょうすいとりゃぁすなも(調子に乗ってますね)」

 結果、対決は三つ巴になった。


「はっ! これはまさかハーレム!?」

「わ、私は味噌なんて何とも思っとらんからね」

「お、俺だって!」

「わたしくはいつでもだゃじょぉぶだなも(わたくしはいつでも大丈夫です)」

 俺の言葉に瞬時に反応する三人。そしてディアンの言葉で再び荒れる二人。


「よし、一人で行こう」

「ご主人様!」

「あ、逃げた」

「お、俺、ほんとに味噌のことなんとも思っとらせんからね!!」

 などと叫びながら、3人が俺の後を追いかけてきた。

 なんか俺、ハーレム主人公みたいじゃね? こりゃ、無双も来ちゃうんじゃね?



 俺たちの異世界生活はまだまだこれからだ!!



 あれ……、なんか打ち切りっぽい?

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神様がくれたスキルはバグだらけ たろいも @dicen

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