7.アイアンゴーレムとゴッド剣
「お前のような奴は即退場させてやるぜ!」
俺は"俺の武器"をアイアンゴーレムに向けて翳す。
「俺の"バールのようなもの"でな!!」
俺は"バールのようなもの"を後ろでに構え、アイアンゴーレムに向けて駆ける。そして奴に向けて振り抜いた!
バシュゥゥン!! コォォォン
「オボボボボボボボボ」
衝突の衝撃が俺の全身を駆け巡り、口からおかしな音が漏れた。
あれ、おかしいな? 爆散しないぞ? アイアンゴーレムの腕に命中した"バールのようなもの"は、奴の腕に僅かにへこみを作っただけだ。
「あー、あれだわ。"必殺"って防御無視攻撃だけど、防御無視しても攻撃力が足らせんから効かぁせんのだわ~」
ルゥ氏が「納得」という表情で解説してくれました。呑気に解説してる場合ぢゃないですよ?
「ごふぅぅっ!!」
腹に強烈な衝撃を受けた直後、気が付けば壁に張り付いていた。視界の先数mには短い脚を振り上げた格好のアイアンゴーレムが……。奴め、足短い癖に俺を蹴飛ばしやがったな。
「ご、ごどぶふぅ(ゴッド服が無ければ、即死だった)」
かっこつけてセリフを言うつもりが、口から洩れたのは謎の音だった。だめだ、言えてねぇ! 腹にイイ奴入れられて声出ない!!
「アースパワー!」
ルゥ氏が唱えると、地面から湧き出した光が彼女体に入り込み、体が鈍い光を放つ。あれは確か、力を上げる魔法だ。
「メルト!」
シルファ嬢は両手を翳し、その手から吹き出す熱風がアイアンゴーレムを炙る。あれは防御を下げる魔法か。
「おらぁ!!」
ルゥ氏が大剣を振り下ろす。ゴゥッという音と共に振り下ろされた大剣は、しかしアイアンゴーレムの腕で止められる。
「おらおらおらぁぁぁぁ!!」
それでもお構いなしと、ルゥ氏は連撃を打ち込む。ギャリギャリと金属同士のぶつかり合う耳障りな音が響くが、ゴーレムにダメージが入ったようには見えない。
「ルゥ!!」
シルファ嬢の声で、ルゥ氏は飛び退く。
「フレイムピラー!!」
アイアンゴーレムを強烈な火柱が炙る、が、奴の様子に変化が無い。むしろ赤熱した状態でフレイムピラーを乗り越え、尚もこちらに向かってくる。
「あかん、手に負えんがん(手に負えないわ)」
「でも逃げ道塞がれてまっとるし……(逃げ道塞がれてしまっているし)」
なら、強力な武器があれば……。
俺はめり込んでいた壁から這い出し、"収納"に手を入れる。
神の像(休憩中)←デスクでスマホ見てるだけ
銀貨
神の像(デスクワークのふり)←仕事のふりしてスマホ見てる
髪の像 ←頭部のみ
草団子
ゴッド剣の鞘
神の像(昼食中)←カ■リーメ●ト
塩パン
「な、なに並べとんの?」
シルファ嬢が焦りつつも、「次々と不気味な像を並べる」という奇行を行っている俺に問う。
俺には使えないが、ルゥ氏ならゴッド剣を使えるのではないだろうか。もうそれに賭けるしかない。ってか、なんで鞘だけ出てくるんだよ!! 別々に"収納"されてんじゃねぇよ!
神の像(デスクワーク中)
回復薬
塩パン
神の像(昼食中)←コンビニおにぎり
神の像(内職中)←アフィリエイトブログを書いている。閲覧者1名(自分)
金貨
くそぅ! カーリングのために神の像作りすぎた! 神の像コレクションをコンプリートしそうだ! ってか何種類あんだよ!
銀貨
ゴッド剣
「でた!」
ぼよーん サクッ
「あ」
取り出した瞬間に弾き飛ばされたゴッド剣は、そのままアイアンゴーレムの肩に突き刺さった。うそん、すごい。鉄もあんなにサックリとイケちゃうのね。
俺は鞘を手に、ゴッド剣に戻れと念じる。ゴッド剣はアイアンゴーレムから抜け、こちらに向かってくる。
「ん?」
飛んでくるゴッド剣の姿に、俺は閃く。タイミングを合わせ、飛んでくるゴッド剣の柄に軽く触れる。
ぽよーん トスッ
再び弾かれたゴッド剣が今度はアイアンゴーレムの腕に突き刺さった。
「おほっ!!」
ぽよーん サクッ ヒュ
ぽよーん トスッ ヒュ
ぽよーん サクッ ヒュ
ぱよーん ザクッ ヒュ
ぽよーん シャッ ヒュ
ぽよーん サクッ ヒュ
「あははははははははははははは」
ぽよーん サクッ ヒュ
ぽよーん サクッ ヒュ
ぽよーん トスッ ヒュ
ぱよーん トスッ ヒュ
ぽよーん ザクッ ヒュ
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」
ぽよーん ぽよーん ぽよーん ぽよーん ぽよーん ぽよーん ぽよーん ぽよーん
サクッ トスッ サクッ ドスッ サクッ ザクッ サクッ ドスッ
ヒュ ヒュ ヒュ ヒュ ヒュ ヒュ ヒュ ヒュ
「なんか、おそぎゃぁ(怖い)」
「……」
「はい、すみません、ちょっと調子に乗りました」
気が付けば、アイアンゴーレムだったモノは、10cm角の金属片になっていましたとさ。
「あ、これ戦利品かな」
10cm角金属片の山の中、1つだけ様子の異なる黒い石が落ちていた。
「そ、それ吸魔石やん!」
「味噌危険、触れたら魔力が吸われてまう……」
「え?」
俺は既に黒い石を拾い上げてしまっていた。おぉぉぉ、確かに体から何かが抜けていくぅぅぅぅ……
「な、なんともあれせんの?」
いえ、なんともなくはないです。MPはすごい勢いで吸われてます。が、それ以上に回復しているだけです。
そう、俺の攻撃魔法はなぜか相手が回復してしまう。効果が逆転していると言っていい。なら消費MPはどうなっているのか。なんと使うたびに回復しているのだ! もう意味わかんない。
ということで、こんな魔法がありました。
闇属性魔法(出典:魔法辞典)
中級:ジャンプ 短距離転移。転移可能距離は数十m程度。元々魔力消費が高く、距離が少し伸びるだけで劇的に使用量が増える。
これ、俺は使っても1mmすら移動しません。しませんが、ものすごい勢いでMPが回復します。つくづく、俺は"転移"とは縁が無いらしい。なので、この魔法は俺にとってはMP回復魔法なわけだ。自分で言ってて意味不明だな、MP回復魔法。
ということで、俺は飛べないのに"ジャンプ"し続けることで、吸魔石を持ち続けても平気でした。
「俺んらには持ち運べぇせんし、実質倒したのも味噌やし、吸魔石は味噌のでええよ、なぁ、シルファ?」
「うん」
「……」
魔力吸う石って、使い道がわからんが、とりあえず"収納"しとこ。
「見ぃつけたがね……」
いつの間にか、真っ黒なローブを纏い、フードで顔を隠した男が立っていた。
「あ……」
あいつだ、俺が不貞腐れてカーリングしているときに通りかかって、スッ転んだ奴だ。
「知っとる人?」
シルファ嬢が俺を見て聞いてくる。えーっと、とりあえず「ワカリマセーン」という顔をしておいた。
「秘密結社マギ・アソシアを敵に回すとどうなるか、教えたるがね」
「ま、マギ・アソシア!?」
「え? 味噌串カツ?」
ルゥ氏が驚きの声を挙げ、シルファ嬢が酷い聞き間違いをする。どういう聞き間違いだよ! 全然違うからね!?
「知っているのか、ルゥ氏!」
とりあえずシルファ嬢は無視し、予定調和としてルゥ氏に聞いておく。たぶん「出典:民明書房」とかじゃないかな。
「魔法が世界を支配するとか、たぁけたこと言っとる奴らだがん……(バカなこと言ってる奴らだ……)」
「たぁけ言う奴がたぁけだがね!」
ルゥ氏の言葉に、黒ローブ男が地団駄踏みながら反論する。リアル地団駄って初めて見たわ。っていうか受け答えも小学生かよ。
黒ローブの発言に、ルゥ氏は「やれやれ」といった表情を見せる。それが更に黒ローブをヒートアップさせたようだ。なんだろう、俺帰っていいかな……。
ルゥ氏としばし睨み合った黒ローブは、チラリと俺の方に顔を向け「あっ」と小さく声を挙げた。
「そりゃぁそうと、おみゃぁさんっ! この間の──」
「そぉい!!」
奴が何か言う前に、俺は手から出した水の初級魔法「キュアリキド」をぶっかけた。
「ぶばっ!」
黒ローブはそのまま仰向けに倒れ、
「あばばばばばばばばばば」
奇声を発しながらブルブルと激しく痙攣を始めた。
「よし! 今のうちに帰ろう!!」
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※余談:キュアリキド
水属性魔法(出典:魔法辞典)
初級2:キュアリキド 状態異常を解除する水を生み出す。回復(小)
→習熟度マイナス最大であるため効果が反転し、力弱体、速度低下、防御低下、毒、麻痺、小ダメージになる。
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