四話 知人

◇清水寺

「皆さんお土産大変そうですね」

「初日から買うと重いと思うんだけどな」

「それはそうでしょうね。とはいえいつでも帰るという物でもないので仕方が無いのでしょう」


 清水寺へ向かう道へは様々な店が有るので、皆お土産を買っている。氷華と優斗は買う相手が居ないので、人混みを嫌って少し離れた所で待っていた。


「優斗さんは何か買う物無いのですか?」

「そもそも実家ここだからわざわざ買うまでの物が無いんだよな。氷華はどうなの?」

「私味分からないのでお菓子の類は無意味ですから。エミリアさんの分はもう買いましたし」

「もう? 早いな」


 しばらく姿が見えないと思ったら買い物をしていたらしい。


「琴音さんは両親に買っていくらしいですね」

「まあそれが普通だろうな」

「ええ」


 一般的に修学旅行にでは家族や親戚等にお土産を買っていくものだ。いくら魔術師でも親と縁がない氷華や優斗はかなり特殊な事例だろう。


「……それにしても暇だな」

「暇ですね。魔術の話でもしましょうか」

「まあそうだな。京都は宗教施設が多いし、歴史も有るから魔術師が多いんだよねー。この辺にもうちの門下の家が有った筈だし」

「もしかして知り合いいます?」

「居るけど……ああ、ここの人は結構まともだから心配しなくていいよ」

「あれ? 優斗さん?」


 噂をすれば何とやら、優斗の知り合いの魔術師がやってきた。


「ああ、ご無沙汰しています。風間さん」

「どうも、出奔したと聞いてきたのですが……ぎゃああああああああああああああああ」


 風間という優斗たちより数歳年上の魔術師が氷華を見た途端絶叫する。


「ああ、良くあるパターンですね」

「良くあるのか」

「ええ、だから弟子入りを希望する人なんて居ないと思っていたのですよ」


 氷華に恐怖や嫌悪ではなく、打算の無い純粋な好意を向ける優斗はかなり珍しい。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。俺別にだれも殺してませんから許してください」

「流石に可哀想だな……」

「あのー別にそういう訳では無く偶然通りかかっただけなのですが」

「え、本当に? そう言って油断させている隙に後ろからバッサリとかじゃなくて?」

「そんな事をするより正面から殺した方が早いのですが」

「は、言われてみれば確かにそうでした」


 ようやく落ち着いたようだ。


「はあ、すみませんでした。って言うか優斗さんよく一緒に居られますね」

「いや僕には殺される理由が無いからな」

「そうだとしても割り切れるのが凄いですよ……。貴方の知人にも殺された人が居るでしょうに」


 三人が話している所に琴音がやってくる。


「二人ともお待たせー」

「うん? 彼女は……いえ、では私はこの辺で」


 そう言い残して風間は去っていく。


「あの人誰?」

「僕の知り合いだよ」

「ああ、そういう事かー。そりゃあ居てもおかしくないよね」

「……あの、優斗さん。さっきの話……」


 さっきの話と言うのは恐らく優斗の知り合いも氷華に殺されているという事だろう。


「気にしなくていいよ。自分でも変だと思うけど、本当に全く気にならないから」

「でも……」

「いや本当に気を使っているとかじゃないからね。僕に対して引け目を感じる必要は全くないぞ。前も似たような事言ったけど、今の僕は氷華の味方だから」

「……ありがとうございます」

「何の話かよく分からないけど、仲が良さそうで何よりだよ」

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