六話 戦闘準備

遅くなりました。大学が春休みに入ったので、更新速度上げられると思います。

本家に行って遺産貰ってくる話書こうと思いましたが、需要無さそうなので止めました。



 本家に行って自分と氷夜の分の遺産の回収と、魔術犯罪者に関する情報源の確保を行った後、氷華は自らを戦闘の道具として使う為の準備を行っていた。

 とりあえず戦闘用の礼装を準備しなくてはならない。服は動き易い物の方が良いので、とりあえずスカートは有り得ないだろう。しかし、防御面を考えれば露出は無い方が良いし、布面積が多いと魔術が組み込みやすい。という訳でズボンとブラウスにコートと言う物になった。

 他にも各種礼装を用意し、素早く取り出す事が出来るように準備しておいた。


 次は本人の技量だ。魔術に関しては知識量、構築速度共に問題ない。元々そこに特化して設計されている上、暇さえあれば魔術を使っていたのだから。問題は魔術と直接関係ない戦闘技術の方である。魔術だけでもある程度は戦えるだろうが、氷華は圧倒的に不利な敵の本拠地で戦う必要が有るのだ。出来る事は多いに越したことは無い。

 真面目に剣術を学んでも良いのだが、その時間は無いし、そもそも魔術を交えた剣術を学べる場所は少ない。また、氷華には剣の才能が有る訳ではないので、普通にやっても物になるとは限らない。そこで、彼女の強みである演算能力を生かす事にした。

 簡単な話だ。相手の動きを観察し、それに合わせて最適な動きを毎回考えればいい。普通はそんな事をしている暇は無いのだが、氷華の演算力なら可能だ。それを何度も繰り返せばそのうち身に付く可能性も有る。


 最後にして最大の問題は、一時的に自分が自分で無くなってしまう事だ。恐らく生命の危機などのきっかけで兵器としての側面が前面に出てくるのだろう。これは非常に不味い。

 自分の意識が消滅するのは良い。いや、本当は自分が自分じゃ無くなるようで物凄く怖いのだが、今の氷華は自分が怖いと感じる程度の事は問題だと思えない程度には自己評価が低い。。本気でそう考えるからこそ彼女は世界中の魔術師を敵に回すような行動を取れるのだ。

 さらに言えば、記憶も一応残ってはいる。最初は思い出せなかったが、ゆっくり頭の中を整理すれば何が起きたかは把握できた。思考が人間か兵器か切り替わるだけで、記憶組織は同じなので当然と言えば当然だ。パソコンで例えるとハードディスクを違う端末で使うような物だろう。

 では何が問題かと言えば、意識が消滅している間は自分が何をするのか分からない点だ。その間に何かをやらかして、無関係の人間に被害を出してしまうかもしれない。しかし、その間は戦闘能力が向上する上に余計な感情を排除できるので、仮に可能だったとしても封印するのは惜しい。よって、人格を任意に切り替え可能にし、意識消失中も有る程度行動をコントロール出来る様にならなければならない。

 前者は恐らく可能だ。魔術を行使する為には意思を魔術的動作と繋げる必要が有る。そしてそのためには自らの無意識領域をコントロールする必要が有る。これを応用すれば人格の切り替えを行う事が出来るだろう。

 問題は後者だ。こちらはどうしようもない。戦闘用人格の時はそもそも意識が無いのだから、無意識領域のコントロールも何もない。少しだけ意識を残す事も可能かもしれないが、そんな絶妙なバランスを保つのは難しいだろう。この為通常時から戦闘用人格に切り替えるのは可能だが、逆は難しくなる可能性も有る。

 仕方が無いのでアプローチを変える事にした。意識を残すのではなく、無理やり行動を縛ることにした。要は条件指定術式の応用だ。一般人を守らなければならない、他人を害する魔術師以外に危害を加えてはならない、戦闘終了後には日常用人格に戻らなくてはならない等の制約を設け、それを破った場合は致命傷を負うような術式を自らに仕込む。兵器用の人格は氷華自身の損害を避けるので、当然違反する行動は取れなくなる。

 他人に同じ事をするなら相当な彼我の実力差が必要だが、自分にかけるなら抵抗しなければ良いだけの事だ。最も自分にそんな事をする人はまず居ないのだが。


 一ヵ月程で自由に戦闘用人格に切り替えられるようになった。試しにやってみただけで特に戦闘状態とかでは無かったのに、戦闘終了後には戻らなくてはいけないという制限が有るので直ぐに戻ってしまったが、それは実践なら問題ないだろう。こうして氷華が魔術師を殺す為の準備は整った。


 だが、この時彼女は一つのミスを犯した。意識消失中に他人に危害を加えてしまわないかを心配するのなら、安易に人格が切り替わらない様にする訓練が必要だったのだ。これにより、氷華をさらに追い詰めるとある悲劇が発生する事になる。

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