悪意

 今日も母からの理不尽な暴力を受ける。今日は最悪の日になるだろう。

 今日は滅多に来ない父が来る。父は母と離婚し一人で暮らしている。父は酒と煙草たばこをねっから年中やっている。その父から母と俺は暴力を受けていた。その父のせいで母はああなってしまったのだろうか?いや、そんなことはどうでもいい。親は敵だ。

時間は夜。そろそろ父が来る時間だ。

ガチャ

鍵が開く音だ。扉が開いた。俺はその扉はいつもと違う重い扉に見えた。

「ただいま、酒はあるか?早くよこせ!」

強い口調で言う。口が酒臭い。

母は言われた通り酒を貢ぐ。まるで奴隷みたいだ。しかしその奴隷とは俺のことだろう。

「ぷはぁ…やっぱ酒はうめぇ…つまみといったらやっぱり焼き鳥だな。ん?なんだ、お前いたのか」

冷たい言葉が俺の心に刺さる。

「……」

黙っていた。口を聞きたくない。自分の部屋に行こうとすると…背中に激痛が奔った。背中を触ると血が流れていた。父を向くと割れた酒瓶を持っていた。酒瓶で殴られたのか?とボーとした頭で考えた。

「返事しろよ!クソが!死んじまえ!悪魔が!」

俺は悪意しかない言葉を抵抗もせずに受けた。

そして俺は背中に包帯を巻きベットに横向きになった。俺は『復讐してやる』と心から誓った。俺は悪魔と契約したかのように殺意に支配された。気がつくとカッターナイフを手にしていた。そしてリビングへ向かう。右手にはカッターナイフを。左手にはこの間見つけた四ツ葉のクローバーを。しかし俺は我に帰った。呼吸が荒い。思考が追いつかない。俺は気持ちを制圧し就寝することにした。

父を殺すことはなかった夜が明け朝になった。自分の殺意はまだ眠っている。俺は父を殺したいのか?と考えリビングへ向かう。

「おはよう」

「おぉ!おはよう!」

機嫌がいい。何かあったのだろうか。

「おい!宝クジ10万当たった!10万も!昼酒買いにいくぞ!お前も好きなジュース買ってやるよ!」

本当に機嫌がいい。しかし俺にはそれさへ恐怖であった。

「ありがとう、父さん」

そう答え朝食を取る。そして昼、

「高い酒だ!ワインも買うぞ!…お前はオレジンジュースでいいのか?分かった。買ってやる」

そういいレジへ向かった。カゴの中にはカクテルやワインなど高い酒があった。

家に帰ると早速酒を飲む。

「一緒に飲もうぜ。相談したいことがある。」

そう父がいう。俺は分かったという。

「俺はお前にいつも暴力をしてたな…昨日もだ。そんな俺が憎い。だから今日で酒を辞める。だからこんな豪遊してるんだ。俺はあいつと結婚してから全てが変わった。暴力を受けた。そんなストレスをお前に向けることにした。警察へ言う。その考えは俺にはなかったんだ。あってもかっこ悪いという理由で警察には言わなかっただろう。」

父がそういう。

「酒は人の本性を表す。俺はあんなクソ野郎だ。だけど辞められない。酒を、煙草を、暴力を…お前に言いたい。俺を許してくれなんて言わない。むしろ、殺したい。と思ってるだろう。分かってる。だから言う。俺みたいにならないでくれ…頼む…」

そう父が言う。いつのまにか父に対する殺意が消え子どもの頃の思い出が蘇った。








 「あんたなんか消えちまえ!」

母がいう。

「やめて!やめてよ!」

口で抵抗する。

「口答えするな!」

「おい、やめろ!警察に言うぞ!」

「うっさい!」

そういい台所から包丁を持ち父の腹部に刺した。

そこからの記憶は思い出せない。





 俺は気づいた。俺の人生ストーリーで本当の悪を。本当に殺すべきやつを。

「あぁ…許すよ…だから父さん…ここに残ってくれ…」

俺は泣きながら言う。

「…あぁ!分かった。辛かっただろ?お前を助けてやるからな…」

父も泣きながら答える。その日は父と一緒に寝た。父は酒に勝ち優しい父に完全に戻った。

 俺は父が寝たのを確認すると母の部屋にいき枕元に四ツ葉のクローバーを置いた。

「あらここでまた暮らすの?おかえりなさい、あなた」

母が言う。

「あぁただいま」

そう父が答える。俺の中で革命が起きた。その革命は自分の中で信頼出来る人が出来たのだと感じた。

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