恨み

 人を殺した。大きな過ちを犯してしまった。一瞬そう思ったがクソ野郎にされたことを思い出しその気持ちはなくなり「やってやった」という気持ちに支配された。クソ野郎の人生は今日で最終回エンディングを迎えた。俺の手で終止符しゅうしふを打ったのだ。最高の気分だ。誰にでも最期は来る。それを俺が打った。それだけの話だ。


















ピヨピヨとヒヨコの鳴き声がする。いつもの朝だ。そしていつもどおり起こされる。

「起きろ!寝てんじゃねぇよ!」

どうやら今日の母は機嫌が悪いようだ。

「今起きたから行く」

そう答える。そして、

「なんでこんなに長く寝てんだよ!こっちはやりたくない仕事をお前のせいでやってんだよ!早く起きて手伝えよ!」

今日も理不尽に振るわれる暴力。傷が他人に見えないよう体だけを一方的に。抵抗をしようか。昨日みたいに殺してやろうか。殺意という武器を手に殺してやろうか?そんな事を考えながら暴力を流した。そしていつもどおり学校へ向かう。




「えぇ…残念なお知らせがあります…昨晩、瀬腹せはら 大地だいちが自宅の玄関先で何者かに殺されていました。なので今日の授業は3時間だけやって帰ります。」

そう担任がHRホームルームで伝える。クソ野郎が死んだ事を再確認した俺は耳を傾けていた。

「あいつうざかったからなぁ〜死んだとなると可哀想だけど嬉しいさもあるよな」

「分かるwそれw」

「あいつ対に死んだかwそうだ今週の日曜日遊ぼうぜ!」

「いいねぇ〜」

などと声がする。どれだけ嫌われていたかすぐに分かった。次は自分かもしれないという恐怖に気づかずに死体となった偽友ともだちを嘲笑う。まるで自分には関係ないというかのように。

「おい、例の公園に夜11時集合な。仲間は呼ぶなよ?分かってるよな?」

俺は矢崎 やざき 星斗ほしとのその言葉に無言で頷く。次の目標ターゲットはこいつだと。











時間ぴったしだ。あいつはいた。

俺はこの復讐の分身である殺意カッターナイフを握りしめ背後から心臓に突き刺す。

「ぐぅわぁっ!?」

そう声を上げる。そして次に眼球に突き刺す。残酷にも周りはどこにもいない。誰かが目につくような場所ではないからだ。そして神はクソ野郎に無慈悲にも死という最高のプレゼントを届けた。周りには飛び散った新鮮な赤黒い血。美しいぐらいに流れる血。この瞬間また何かが自分の何かが崩壊した気分に陥った。そしてまた強い自分を手に入れた。そう錯覚する。もう本当の自分は帰って来ない。自分ではない何かが本当の自分を殺意という感情で殺し自分を支配した。そして自分ではない何かが本当の自分になる。

「次は…誰になる…次は誰が最期を迎える。次は…次は…」

そう独り言をこぼす。そして家に帰り赤く染まった頬や額を風呂で綺麗にするのだった。

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