純粋
内戦も残り二日。
ここ数日、水雨と常に一緒にいて分かったことが二つある。
一つ目は知能。
水雨はあんまり頭が良くない、というより地上の物や知識を知らない。
教えれば覚えてくれるケド、水雨が何を知らないかは本人に確認してみないと分からない。完全に手探り状態。
これもまぁ、当然と言えば当然だよね。
例えば俺が隣国のレリフィア王国へ行ったとして、これまでの習慣や価値観が全く通用しないというのは普通にあり得る。だって違う国だし、
困るとすれば……水雨の理解に合わせて説明を挟まなきゃいけないところかな。それも特段大変でもないし、水雨に一つずつ解説する事で改めて理解する場面もあるから利点の方が多い。
でも、いくら知能が低いからと言って考えなしっていう訳じゃない。
水雨は思うところがあれば自分の意見をはっきり言ってくれるし、しっかりと報告が出来るから十分に助かっている。言動が真っ直ぐ過ぎて刺さる人には刺さってしまうケド、それもまぁ……妥協点かな。
二つ目は行動。
水雨はすぐに興味が移り変わるみたい。小一時間無言で俺を凝視したかと思えば、何の前触れもなく天上を見つめたりする。極端な話、一分後の水雨が何をしているかなんて想像もつかない。
だけどそんな水雨でも必ず優先する行動があるらしい。
それはズバリ、俺たちレジストリアメンバーが怪我した時。
こんな事思うのは失礼かもしれないケド……絶妙なタイミングで面倒くさがって雑になったりする水雨が、少しでも俺たちが怪我するとすぐに治療しようとしてくる。空を飛んだ後は丁寧に着地させてくれたりとかね。
これにはたぶん理由がある。賢くない水雨でも絶対に守る決まり、それは恐らく絶対的な存在からの指示だ。
絶対的な存在と言えば、この内戦を指示した『御方』と呼ばれる創造主かな。名前からしてとんでもなく偉そうだし。
そうでもなきゃ、水雨が人間を『とんでもなく脆い』と思っているかだろうね。どちらでもあり得る。
さて、そうして水雨に対する理解を深めていた俺だけど、もう少しでその知識も不要となってしまうかも。
あと二日を過ぎれば、あるいは二日の間に俺が死ねば。水雨とはお別れだ。
俺にどんな行く末が待っているとしても、レジストリアのリーダーとして生きれた事。そして水雨と関われた事はかけがえのない記憶になった。
無邪気でありながら豪胆。
それが水雨、
まるで地上の穢れをありったけの水で流し去ろうとする大雨のみたいに。
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