人魂
初めに会った時、火晴という
表情も硬くて多くを語ろうとしないし、自分からは詳しい情報を提供してくれない。魔術や生体の解析だって『自力で頑張って』とだけ言われたくらい。
最近は弟たち相手の研究ばかりだったから、弟たちと比べて少しだけ非協力的な態度に困惑もした。本当に少しだけね。
あと、僕を運ぶのが凄く雑だった。襟首掴まれて引きずり回されたのなんて初めての経験だったよ。
だけど、それらはあくまで表面的なものだと気づいた。
火晴は訊ねられれば明確に答えてくれるし、意見や助言が欲しい時にはきちんと返答してくれる。僕が研究ばかりしているのを心配してくれたり、適切なタイミングで休憩させようとしたりとかね。
そうした火晴の行動によって弟たちに搭載する新しい機能を思いつき、僕の研究にも多くの成果をもたらされた。特に休憩アラート機能はカザキにも共有したくらい便利。
少しずつだけど確実に、火晴の優しさに気づいてからは一緒に行動するのが楽しくなった。僕の勘違いじゃなければ、段々と火晴の方も僕に打ち解けてくれていると思っている。
僕と火晴は想定以上に相性が良いのかもしれない。これはまだ検証段階の仮説だけど。
相変わらず表情は硬いままだけど、それでも何となく感情が読めるようにもなった。感情が分かるようになってから、火晴の好きなものが分かるようになった。
火晴は晴天が好きみたいで、僕の研究を待っている間は窓辺で日向ぼっこしている。時間が合えば一緒に日向ぼっこ出来たらいいな。
それと、火晴は弟たちとも会話してくれる。頼めば合同実験だってしてくれるから、今までにないシチュエーションでの研究が可能になった。
火晴の魔術を再現出来たらと、夢みたいな理想を考えて止まない。
一緒の時間を過ごす間に考えてる事も何となくだけど分かるようになったし、もっと時間を重ねれば会話なんていらないくらい仲良くなれるかもしれない。検証は出来ないからあくまで憶測だけどね。
火晴が僕に与えてくれた魔術や生体の知識。それらはこれからも研究を続ける僕にとって、かけがえのないものになったと確信している。
あと数日で別れなきゃいけないのが純粋に寂しい。自分でも不思議なくらいにね。
でも、火晴には元の場所でしなきゃいけない事もあるだろうし、僕にだってやらなきゃいけない事がある。だから少し寂しいだけ。
悲観しなくても良い、っていうのは火晴が僕にくれた温かな思想が教えてくれた。
『与えられた愛は消えない』
それを火晴は
まるで火を起こせる程に地上を照らす快晴のように。
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