第八話 「平穏な場所」

 あと数刻で陽が落ちる頃、レジストリアの活動拠点は賑わっていた。カイトとメイ、そして水雨が帰還したからである。

三名が帰還した頃の校門には見張り係にも大勢の少年少女が待ち構えており、白い息を吐きながら期待の眼差しを向けていた。そんな彼らの期待通り戻ってきたリーダーと幹部、そして天使の姿を見て大賑わい。

当然、電子空間のチャットも次々と更新されていき、三名の写真やハッシュタグが大量に流れた。

 カイトらがメンバーに拘束されなくなったのは夕食の時間で、三名は四人分の夕食を持ってとある教室へと向かった。レジストリアの規則上、仮面をしたまま食事が可能な者は学食堂でそのまま食べているものの、顔全体を覆っている仮面をしている者は教室内で仕切りを作ったり、素顔を知っている者同士で集まって談笑しながら食事を取っている。

 ほとんどの場合は顔見知り同士で食べている為、電子空間内に校舎の見取り図を掲載した空間を作り、各教室に入室者の氏名や入室制限等を書き込む事が可能。それによって、現在まで組織内でのトラブルなく円満が保たれ、士気も高まっている。

教室の引き戸を開けると、教室の中央に机を五つくっつけており、対角線上にレイジとサキが座っていた。レイジは楽な姿勢でサキは今朝と同じ格好で座っており、二人とも電子端末を操作している。二人同室にいながら会話も無いように見えるが、ファンサービスとして他愛のない話を電子空間でしている。そしてそれは双方のファンから肯定的に受け止められており、メイの尽力と各員のマナーの良さからレイジとサキの会話に割って入る者もいなかった。

カイトらに気付いたサキは立ち上がり、それぞれの顔を見渡してこう伝える。

「おかえり」

「ただいま!」

カイトたちは声を揃えて返答し、その後すぐにカイトが切りだした。

「それじゃあみんなで夕飯を食べよう、ウサのそれは汚れたらダメだから避けておこうな」

「わかった」

「これはウサ、そしてこっちがゼロのご飯だヨ!」

そう言って水雨が机に二人の夕食を置いた。それに対してサキとレイジが感謝を述べると、ここぞとばかりに胸を張ってこう言った。

「どういたしましテ!」

なぜ水雨が誇らしげにしているのか分からないサキは、不思議そうに頭を傾げさせる。その一方でカイトとメイはそれぞれ席に付き、自分の前に持っていた夕食を置いた。

 今日の献立は、トテポとニジンがごろごろ入った温かいスィトゥーとパン。そしてボトルに入った水が机に並んでおり、各々が顔から仮面や布を外したところでそれぞれに食事を始めた。

その様子を水雨は頬杖をついて眺めており、開戦から4度目の夕食ともなればその視線にも慣れたものである。会話もないまま時間が過ぎ、初めに食べ終わったメイがサキに声を掛けた。

「ねぇ、ウサ。ギサウの仮面って今どこに置いてるの?」

「あっち」

そう言ってサキが指差したのは、教室の後方にある背の低いロッカーの上である。

「わかった。早速直そうか」

「ありがとう」

という会話がなされている傍ら、レイジは食べ終わって早々に自信の電子端末をカイトへ見せた。その画面に映し出されていたのは、今朝見張りをしていた青年による投稿だ。

カイトはスィトゥーを頬張りながら画面に映し出されている文字、そして三秒程の黒い画面の動画が載せられている投稿を見て動揺を隠せなかった。口の中の野菜を急いで噛んで飲み込み、目を瞬かせながらレイジに言う。

「え、ちょっと待て。何それ」

「お前が今日出立した時、正面玄関に見張りがいたろ?そいつがにも録音してしまったけど、リーダーである我らがスマイリーさまがカッコいい台詞をの様に言ったから、せっかくだからと全体公開したという的な顛末だ」

「いや、え?あれ録音されてたの?」

「みたいだな。もう何万再生も共有もされてるから今更消せないし、きっとメンバー全員が端末に保存してると思う」

と言い合っていると、ギサウの仮面と道具を持って戻ってきたメイが会話に参入した。

「何かあったの?」

「あぁ、我らがリーダーのカッコいい場面。目も保存したらどうだ?」

「いやいや、しなくて良いから……」

少し萎縮気味なカイトに対し、メイはきっぱりと告げる。

「私は自分で録音したものがあるから。そっちの方が音質良いし」

「えっ」

予想出来なかった答えではないが、カイトとしてはあまり受け入れ難いその返答に驚きの声が出た。付け加えるなら、レイジとサキはメイのカイトに対する感情やそれによる行動は今に始まった事ではないと知っている。その為二人は何気ない日常風景として流し、サキはパンの最後の一口を頬張りレイジは食器をまとめた。

 ただ一人カイトだけがポカンとした表情をしているものの、今は仮面を付けていないのでやや滑稽に見える。そんなカイトをそのままに、着席したメイは仮面の修理に取り掛かった。

仮面に付いたままの切れた紐を外し、道具入れから新品で強度のある紐を取り出した。更に紐を結び付けていた部分が壊れないよう、補強を施してサキへ手渡した。

「はい、お待ちどおさま」

「ありがとう」

そう言ってギサウの仮面を受け取り、顔に付ける。そのまま頭を左右に振ったり上やら下やらを見て、一通り動かした後にサキはメイの方を無言のまま見た。

サキが言おうとしている事を何となく察したメイは、こう告げる。

「ピッタリ良い感じ?」

「うん」

と答えるサキの声は普段より楽し気で、寝る前に鏡で何度も見る程にとても喜んでいた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 開戦から四日目の今日。市街地で三つの組織による騒動があった一方で、南東の農産業地域では穏やかな一日が流れている。

開戦までは厳しい出荷量に苦しめられてきたが、現在はその半分以下の労力で間に合っている。それも木洩の”植物の生長を自在に操る”魔術によって種の状態から数分後には出荷出来る状態になり、品質も従来のものより瑞々しく立派な実を収穫する事が出来る。

それによってチョウ帝国民全員に食料が行き渡り、尚且つ農作業も苦痛を帯びたものではなくなった。ほとんどの者が自身の畑を手入れしたり、隣人の畑を手伝ったりと互いに助け合うことも可能となった。

 この農産業地域を取り纏めるウォーマーは自身の作業を早々に片づけ、手伝いが必要な場所はないか怪我や病気の者はいないか、木洩と共に訪ねて回っている。しかし、何だかんだ農作業が速く片付くのはどこも同じで、最終的にメリルのパン作りを手伝うのが日常となりつつある。

 今日もまた、陽が昇ると同時に家を出たウォーマーは日課の墓参りへ向かった。もちろん、彼のすぐ後ろを木洩がついて来ている。

ウォーマーと木洩の間に会話はなく、朝焼けの畦道を足音だけが埋め尽くしていった。時折遠くから聞こえてくるリトの鳴き声がやけに耳に残り、多くが眠る時間に生命の存在を実感する。

 しかし、彼らが向かう場所に生命の息吹はすでになく、それがウォーマーの心情を陰らせ続けている原因とも言える。かと言って蘇りを望んでいるわけではない。

だからこうして毎日二回、顔を見せに行くことで彼自身に巣くうわだかまりを消化しているのだ。だが、それを共にしている木洩はその行為に全く関心がないらしく、ウォーマーが話しかけたりするまで無言と無反応を続けている。

 早朝の冷たい風を頬に感じ、目的の場所に辿り着く。昨日と変わらない風景に少しの安堵感を抱き、今となっては見慣れてしまった墓標に跪いた。

木洩に気を使ってか、言葉を口に出さずに胸の内に留めた。昨日あった些細な出来事、集落の皆は感染せずに元気にしている事、理不尽な攻撃を受けることなく今日まで生きている事。思いつく限りの報告を心の中で終えた後、ゆっくりと立ち上がり木洩に軽く声を掛ける。

「お待たせしました。納屋の方へ行きましょう」

「わかりました」

穏やかに答える木洩に対しウォーマーは弱々しく愛想笑いをし、墓標から離れて集合墓地の入り口に向かって歩き出した。


 ウォーマーらが農具を取りに帰宅すると、ちょうど家から出てきたジョートに会った。彼の自宅から少し離れた養鶏場へ向かっているらしく、ウォーマーに気づくと小走りで駆け寄って来た。

「おはようございます!今日も早いですね」

「おはよう、ジョート君も早いね」

「はい、僕が頑張らないとみんな困ってしまうので」

と、はきはきと語ったジョートだが、顔はまだ少し眠たそうにしている。

「あぁ、そうだね。私も同じ気持ちだよ」

ウォーマーもジョートも家族を全員失った者同士、近しい点はあるやも知れない。気丈に振る舞うジョートに対してなるべく明るく見せようと、ウォーマーはやや楽し気に話す。

「でも、今日でこの内戦も折り返しになる。壁の向こうではどんな争いが行われているか私にはわからないが、きっと素晴らしい未来を切り開いてくれる者が残ると信じているよ」

希望的なことを語るウォーマーの話を聞き、ジョートも自分に言い聞かせるようにこう語る。

「そうですよ!七日目を越えた先の未来はやってきます、そのために家畜も畑も良い状態にしていないとですね」

「うん。それじゃあ今日も頑張ろうか」

「はい!天使様、今日もお力をお借りしますね!」

そうしてジョートは手を振りながら走っていった。木洩は薄黄緑色の瞳を柔らかく細めて笑い、ウォーマーもまた穏やかな表情で彼に向かって手を振り返した。

ジョートの姿が見えなくなってから、ウォーマーは木洩に声を掛ける。

「では、農具を持って畑へ行きましょうか」

「わかりました」

短調な会話を終えた彼らは自宅横の納屋へ行き、必要な道具を持って畑へ急ぐ。自分の畑が終わり次第に他を手伝う為でもあるが、ウォーマーの斜め後ろを無言のままついてくる木洩から言い知れない圧力を感じるのである。

木洩としては全くそういう意識はないものの、機械的に必要最低限の会話しか行わない相手に不安を抱くのはウォーマーだけではないだろう。

それに加えて相手は神によって創られた存在で、その天使の中でも木洩は人の心が分からない。彼の唯一の家族であるヌイのジェリーも木洩は近寄り難いのか、ここ数日はテーブルの下に隠れたり毛布に頭だけ隠したり等している。

 足早に突き進むウォーマーのすぐ後ろを、息も乱さず適度な距離を保ってついて来る木洩には名状し難い感情が浮かび上がるものだ。この国に住まう多くの生命を救っている存在ではあるが、当の木洩自身は人間の感性とかけ離れている。

 後ろを付いてくる木洩を一度見てしまえば、これからの三日間とあるかもしれない未来にもその顔は呼び起されるかもしれない。そう思ったウォーマーは決して振り向く事はなかった。

そしてそれは畑に着いてからも同じである。



 ようやく畑の作業が収束した頃には太陽がすっかり顔を出し、小さなリトたちが翼を羽ばたかせて木々や草原を飛び回っていた。ウォーマーが所有している畑の敷地近隣の畑作業も収束しつつあり、明日の出荷用の出荷物も順に格納されている。日持ちしにくい作物は魔術の行使によって収穫し午前中に出荷され、穀類等の加工が可能な作物は魔術と手や機械等を用いて翌日に出荷する仕組みである。

 この仕組みは内戦初日に木洩が提案したもので、それらの作業を全て木洩のみが行えるという理由から提案されたものだった。しかし、これまで農作業と共に生きてきた人々がそう簡単に習慣を変えられる筈もなく、今も元気に作物の世話を行っている。

 ウォーマーの立つ畑周辺にまだ農作業を続けている者も見当たらず、そのままメリルのパン作りに加勢する事にした。ここでようやくウォーマーは木洩に声を掛ける。

「木洩様、今日の作業も滞りなく無事に完了しました。ありがとうございます」

「いえいえ、皆さんがそれぞれ考え行動した結果ですよ。僕はそのお手伝いをしているだけですから」

「それでもありがたいものです。では、パン作りの手伝いに行きましょう」

「わかりました」

そして彼らは連れ立って納屋へ農具を置いた後にメリルの自宅まで歩いて向かった。この農産業区域を端々まで歩き回る様な日課だが、これまで一週間続いた過重労働に比べれば彼にとって歩く事は苦痛ではない。

 とは言え、ウォーマーの自宅からそう遠くない場所にメリルの自宅はある為、これからの移動も苦にならない程度のものである。強いて言えば、連日と全く同じ言葉に感情を込めている様に語る木洩に僅かな畏怖を感じつつも、それに慣れつつある自分に内心驚いている。


 ウォーマーらが無言のままメリルの自宅に到着すると、丁度表で粉を挽いていたワンドに会った。作業の区切りが良かったのか、ウォーマーらに気が付くと親し気に声を掛けてくる。

「こんにちは、ウォーマーさんと木洩様」

「やぁ、こんにちは。ワンド君もご苦労さまだね、粉は残り少ないのかな?」

「まだありますけど、明日の天気が怪しいから余分に挽いておこうと思って」

そう言ってワンドはウォーマーから視線を外して遠く南方の空を見た。それに合わせてウォーマーと木洩も同じ方角の空を見る。

彼らは穏やかでやや暖かな風を肌に感じ、上空の晴天と比べて遠くの空には重く厚い雲が浮かんでいるのが見えた。今夜中から降り始めるか、明け方に通り雨の様に降るかは不明だ。

「確かに、これは明日辺り降りそうだね」

「ですよね。中でメリルとペトラさんが成形してるので、ウォーマーさんたちには焼く担当お願いしたいと言っていましたよ」

「そうか、じゃあ早速手伝わないといけないね」

と言ってウォーマーは袖を捲り、意気込みよく建物へ入った。

「お願いします、木洩様も無理のない程度で」

「わかりました」

そう答える木洩は優しく穏やかなものだ。ウォーマーを先頭に連れ立って歩く彼らを見送り、ワンドは再び小麦を挽く作業へと戻る。

ワンドから見ても木洩の不気味さは明らかだが、顔を合わせる度に増していく畏怖の感情は誰に告げる事も出来ずにいた。身近な家族やメリルは木洩を崇高な存在としてありがたがっており、口を滑らせて”木洩は不気味である”等と言えばすぐにでも糾弾されかねない。

 木洩の存在は宛ら自然に周囲と溶け込んでいるが、一度違和感を覚えれば全てが狂っている様に見えてしまう現象そのもの。そして段々と違和感に囚われた者は自ら破滅してしまうのだろう。

ワンドはそれをどことなく察し、それ以上深く考える事なく自分の作業に没頭した。密かに想う大切な人の為に。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 各組織がそれぞれの目的を目指して奮闘した今日、宮廷のある一室では無空が茫然と立っていた。無空の足元には柔らかい布団で眠りこける男の姿があり、それを前にして呆れているとも忌避しているとも言える感情を抱いている。

 暫く経ってようやく目覚めた男は、ぶよぶよとした肉体を動かしながら数分かけて起き上がる。そして息を荒らげながら無空に向かってこう言った。

「腹減った、何か持ってこい」

その相槌とでも言う様に男の腹はぐぅと鳴り、言葉だけでなく肉体からも訴えかけてきた。横暴な言葉使いで言われた無空だが、そんな態度に動じる事なく淡々と告げる。

「わかりました。ではあなたの空腹をなかった事にしてあげましょう、これで満腹感は得られますね」

「は?」

と言う男の驚嘆した声をそのままに、無空は彼に手の平を向ける。するとたちまち腹の虫は鳴き止み、男は腹を不思議そうに抱えた。

「ん?満腹になったからって食べ物は食べるだろ、頭悪いのか?」

「本当にどうしようもない存在ですね、あなたは。この三日間です」

そう語られたが、男は暫くポカンと口を開けて思考を停止させた。そしてようやく頭が働き始めたのか、ゆっくりと言葉を口にした。

「お前、今とんでもない事言ったな!?三日?半日の間違いじゃなくてか??」

「半日寝るのも人間の生命活動としては特異的ではありますが、先程言った通りあなたは三日間丁度寝ていました。元気そうで何よりですね」

淡々と述べられた世辞だが、今の男にとってそんな事は何の慰めにもならなかった。

「お前、自分で何をしたか分かってるのか?嘘なら早く謝れ!」

「はい。そして、いいえ。あなたの言葉は”はい”か”いいえ”で答えられるので良いですね」

「良い訳ないだろぉ!ちゃんとした言葉で説明しろ!!」

「いいえ。いいえ。もし説明したとして、あなたの脳では理解出来ません」

「ボクをバカにしてるのかぁ!!」

「はい、勿論です。それが何か?」

ぼろぼろと頬を大粒の涙が伝い落ち、悲しみに歪んだ口許からは単純な感情を煮詰めた言葉が吐き出される。

「食べ物持ってこなかったり、ずっと眠らせたり、はいとかいいえとか全部……なんでボクに向かってこんな最低な事が出来るんだよぉ!ボクは何も悪くないのにぃぃ!!」

「いいえ」

これまで恩情を掛けていた無空も面倒になったのか、文節区切りの返答ではなく投げつけられる言葉を纏めて一言だけの返事となった。目の前の男はさめざめと泣く様な性格ではないのか、わなわなと震えて無空に向かって太い腕を振り上げようとした。と、言うのも、彼の行為はその動作の直前で強制的に停止させられた為だ。

 先程まで起き上がっていた肉ダルマとも言える四肢は布団に投げ打たれ、握りしめていた拳は力なく枕へ埋もれていった。無空が魔術を発動したからである。

これまではこの男の知性、あるいはこの状況下で覚醒するかも知れない何かしらがあるかもしれないと考え、魔術の行使を目に見えて分かる様にしていた。

しかし、三日間の睡眠の最中に寝言を呟く事も眠ったまま起き上がる事もなく、ただいびきを掻きながら眠っていた男だ。数日後に死を予見されているにも関わらずである。

 そうして無空はこれ以上この男は成長も進歩もしないだろうと判断し、魔術を行使して再び眠らせたのだった。その判断を肯定する様に、数分と経たずにいびきを掻き始める。そんな男に侮蔑の眼差しを向け、無空がこう呟く。

「煩わしい……御方の指示でなければすぐにでも黙らせていたものを」

そしてそのまま部屋を出て行った。



 どの様な形であれ、この男の監視と帝国民の保護は他の天使が努めようと思えば可能だ。しかし、現状の様にこの男を生かし、帝国民を最大限保護する事に関しては無空が最も長けている。


木洩では駄目だ。この男の精神を崩壊させ、薬漬けの廃人と化すだろう。


火晴では駄目だ。この男が持つ全てを拒絶し、消し炭にしてしまうだろう。


土呼では駄目だ。この男に有無を言わさず閉じ込め、ささやかな山が出来上がるだろう。


金陽では駄目だ。この男に女神の教えを一方的に語り、蠢く黄金に包んでしまうだろう。


水雨では駄目だ。この男と会話が成立せず、自害させてしまうだろう。


その為に無空が選ばれたのだろう。

この男の崩壊させず、燃やさず、埋めず、調教せず、自害させずに七日間を全うすると、無空ならばそれらの問題は起こり得ないとよく知っているからだ。

これはまさに創造主として当然とも言うべき采配である。

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