8. 復讐 (シュターナ家)

セレナーデがエリザによって保護されて10日がたった頃。

人間界では『行方不明者』として扱われているセレナーデであったが、誰一人として心配するようなことはなかった。

捜索もされていない......

セレナーデがやっと死んだのではないかと喜ぶ者もいれば、セレナーデでストレスを発散出来ない者はイライラするだけであった。


そんな中、エリィはシュターナ公爵家に友人(取り巻き)を招きお茶会を開いていた。

そこにはリリィの姿もある。


エリィはとても演技が上手く、幼い頃から母親であるクエルから巧みな話術を教え込まれており、優秀であった。

そのためエリィは公爵家を継ぐことが決まっている。

エリィはセドリックに恋心を抱いているようだが......

リリィはそんなエリィに勝ち目はなく、父親のビンから将来は姉と公爵家を支えるよう言われてきた。

だから、このお茶会での役目は一つ。

エリィの『素晴らしさ』を皆に知らしめること......


「お姉様、ご無理はなさらないでくださいね?」


「まぁ、エリーベル様...どこかお体が悪いのですか?」


リリィが心配そうにエリィを気遣うと、

それを見たエリィの友人(取り巻き)は驚いた表情で問う。

エリィは優雅にお茶を飲むと


「大丈夫ですわ。」


と微笑んだ。


「お姉様は、セレナーデがいなくなってからというもの、心配で夜も眠れていませんわ。それに、セレナーデが無事であるようにと神殿へ赴き毎日祈っておりますの......」


リリィが微笑むエリィをチラリと見て声高々に言う。

それに周りはザワリとし、皆口々に


「なんてお優しいの!エリィ様の思いは、きっと女神様に届いていますわ!」


「でしたら私、快眠効果のあるお茶を持って来させますわ!」


「エリィ様、どうかご自分を大切にしてください!ご無理をなさらないで!!」


褒めたり、気に入られようとしたり、労ったり......

エリィはその中心でニコニコしているが、

心の中では何を思っているのか......

彼女達は本当にエリィを優しいと思っているのか..?


リリィは思う。

皆セレナーデがいなくなったのを喜んでいる。


そして、今リリィの話した内容は全て嘘。


セレナーデが自分の思い通り(死んでくれたはず)だから自分は有言実行したのだとお父様とお母様に自信満々に言っていた。


リリィもセレナーデがいなくなって良かったと思ったのだが、リリィには不可解なことがあった。


セレナーデがいなくなってから、順番にエリック......セドリック......ザック......エレミア......

といなくなっている。

正確には、いなくなったのではなくて...

出てこなくなった...?というのが正しい。

あの目立つ四人を急に見かけなくなってリリィは

セレナーデが怪しいと思い始めていた。

セレナーデは魔女ウランの生まれ変わりで、いじめられた仕返しにあの四人を 拐った のでは...?と。


エリィもセドリックを心配している......





お茶会が終わり、シュターナ家『全員』が揃い食事をしている。

シュターナ家にセレナーデはもう存在しない。


シュターナ家の日常は、エリィが得意気に自慢話をしてそれを 両親が笑っている。というのが普通......

でもそれにリリィは違和感を感じていた...




そしてその日の夜、シュターナ公爵家から悲鳴が聞こえてきたと領民の間で話題になった。


一方、使用人たちは突然『いなくなった』シュターナ家の人々に驚きを隠せないのだった.........






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る