第2話

 しばらく車を走らせるとメモに書かれていた住所に到着する。

 そこはマンションのようで、ごく普通の七階建てのものだ。


「書いてる住所によるとこのマンションみたいだな。とりあえず管理人がいるだろうか」


「まずは部屋を開けてもらわないといけませんからね」


「無理なら管理会社に連絡して鍵を持ってきてもらうことになりそうだな」


「そこは仕方ないですよ。とりあえず聞きにいかないとですよ」


 冬月がそう言い俺たちは車から降り、マンションの管理人室へ向かう。

 マンションに入ってすぐのところに管理人室があり、窓越しに見える中年の男性に警察手帳を掲げながら声をかける。


「すみません。警察のものなのですがこのマンションの管理人でしょうか?」


「ええ、僕がそうです」


 そう言うと部屋の扉を開け、管理人が部屋から出て来てくれた。

 少し困惑した様子の管理人に俺は質問する。


「こちらに住んでいる津村さんが行方不明になられたとのことで、何か手掛かりがないかと思いまして尋ねさせていただきました。すみませんが部屋の鍵をお借りできないでしょうか?」


「それはまた大変そうですね。ちょっと待ってくださいね」


 管理人の男性はそう言うと、一度部屋へ戻ると鍵を持って再び出てくる。

 俺たちの心配とは別にちゃんと鍵があったようで少し安心した。そして、津村の部屋まで案内されて鍵を開けてくれる。


「ありがとうございます」


「どうぞ、また帰るときに顔を出してください」


 管理人さんがそう言うと俺は一礼し、管理人さんは下へ降りていく。

 中に入ると、まず目に行くのは大量の本が仕舞われている本棚だ。そして、部屋は綺麗に片付いており荒らされた形跡などまるでないことからこの家から連れ去らわれた線は消える。

 俺はさすが女性の部屋だなと思うも、ここまで整理されていると探すのも忍びない。


「すごく丁寧に片付けられていますね」


「ああ、そうだな。ちょっと探すのに抵抗があるな。というか俺の部屋とは全然違うな。ここまで片付いているのってすごいよな」


「先輩はちゃんと片付けをしてください。いつもデスクも少し散らかってるじゃないですか。それとさっさと捜査しますよ」


 俺が笑いながら言うと、ため息をつかれ厳しい言動を突き付けられた。これには言い返す言葉もない。

 どうしても整理整頓は少し苦手で、デスクも自分の部屋も整理できているとは言えない状態なのだ。

 冬月にはいつも注意されている。


 その後、冬月は何か手掛かりになりそうなものを探し始め、あたりを見回している。

 続けて俺も何か目ぼしいものがないか探し始める。


 気になるものは多かったが、特に目に留まったのはデスクの上に置かれている新聞記事のスクラップ帳だ。

 何の記事なのか気になり読んでみると大半がオカルトに関する記事で、特に『黄野町変死事件』の記事が多く載っており、おそらく津村由香という人物はオカルトめいたこと……怪異のようなものを取り上げるようなジャーナリストなのではないかと思った。


『黄野町変死事件』……


 確かあれは二十年前に起きた謎が多い怪事件のはず。

 町内の多くは崩壊して住人のほとんどが死亡している状態で見つかったとか。

 そんな難解な事件で今でも解決がされてないんだったはずだ。

 生存者は二名だが消息不明……それでお手上げ状態だったはず。

 それをどうしてこの人が調べているんだ?

 

 もしかして、まだ何か秘密が隠されているのだろうか……

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