第3話
なぜこのようなことを調べているのか考えていると冬月が声をかけてきた。
「先輩、何か見つけましたか?」
一度スクラップ帳を閉じ、手に持っていたスクラップ帳を上げる。
「ああ、このスクラップ帳だな。黄野町変死事件についての記事が多く書かれていたよ」
「そうですか。こっちは電話台の横にこんなメモを見つけました」
そう言って冬月がポストイットを見せてきた。
メモには
「電話に張り付けられていたので恐らくこの人に連絡を取ったものだと思います」
「そうか、どこかで見たことある名前のような気がするな」
「もしかしてですが、変死事件の生存者では?」
「そういわれてみたら、確かにその可能性が高いかもしれない」
少し悩んだが見覚えのある名前だった。
そのうえに警察署でも黄野町変死事件については署内でずっと耳にするほどの事件だし、知らないはずがない。これは一度署に戻って調べるべきだろう。恐らく資料もいくつか見つかるかもしれない。
ふと本棚に目をやるとそこにはオカルトに関する本が並べられている。
また、変死事件についての書物も多い。
「この人かなりのオカルト好きなんだな」
よほどオカルトに関心がなければここまで徹底しないだろう。
目には留まったもののこれといって今回の事件に関係のありそうなものではなさそうだ。
とりあえず、雷道の電話番号をメモに取っておく。
「ここまで徹底的にオカルト関係のものが多いなんてすごいですね」
「まあ、どこからどこまで信じていい情報かは分からないだろうけどな。オカルトなんて真実かどうかも定かでないものが多いし」
メモを取り終わり、本棚を眺める。多少のオカルトに関する知識は俺自身もそれなりにあるが、真実かどうかわからないものが多い。
この仕事をしていると色々な知識を習得するがオカルトというのは妙に事件に絡むことが多いのだ。
最後にもう一度部屋を見てみるが他に気になるものは見つからず、特にこれ以上の成果は見受けられないと思い、
「これ以上は特に気になるものがないな。署に戻ろうか」
冬月の右肩を軽くたたく。
その時、なぜ驚いたのか冬月の体がビクンと弾み、こちらにふり返る。
「な、何ですかいきなり!」
一歩後ろに下がり両手を胸に当て驚愕の表情を浮かべ俺を見ている。
どうしてその様な反応するのか困惑していると、玄関の方を向き歩き始めた。
「か、帰るんですよね。行きますよ!」
冬月は俺を取り残し、足早に津村の部屋から出て行く。
俺は一人冬月の背中を眺めて茫然としていた。
「どうしたんだ? 冬月のやつ」
少々疑問に思ったが、たまにあることだし気にすることはないだろう。
その後は管理人に顔を見せると感謝の言葉を述べて一礼し、車へと向かった。
駐車場へ着くと、今度は不貞腐れた表情の冬月がこちらを見ている。
「ど、どうしたんだよ」
「先輩! 遅いですよ! 先輩が来ないと車に乗れないじゃないですか!」
「そりゃあ俺が車の鍵持ってるんだし当然だろ」
そう言うもやや不満げな表情は変わらず、そのまま車に乗り込んだ。
こいつ、優秀なんだけどたまにこういうのあるよな……
そして乗り込むと警察署へと戻っていくこととする。とりあえずは資料確認でいいのだろうが……
「うーむ、この後どうするか」
「先輩、今回の行方不明事件と黄野町変死事件って何か関係あったりするのですかね?」
「あぁ、少なくとも俺は何かしらの関係があるのじゃないかと睨んでる。まぁ直感的にそう思ったわけだからあまり根拠があるわけではないが」
「でも、先輩はいつも考えすぎなところがありますし、今回だって何もつながりのあるわけじゃ……」
「津村は黄野町での変死事件について調べてたんだ。そのために雷道と接触した。恐らくそこで聞けた話を頼りに黄野町に向かったが現地で何かに巻き込まれた。というのが俺の推測だ」
「なるほど……そんな大きな話でもあったのですかね」
「恐らくそうだろう。とりあえず、黄野町変死事件についてもう少し調べよう。もしかするかもしれない」
「……そうですか。ところで今はどこに向かってるんですか?」
「あぁ、一度署に戻って資料室に行こうと思ってる。一応調べておくに越したことはないし」
そのまま俺たちは車を走らせ署へ戻るのだった。
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