第6話 いい腕
ブージはとっさに腰に差した拳銃を手に取り狙いもつけずに真後ろの謎の声に向かって連続で発砲した。
暗い部屋に数度の一瞬の閃光が走る。
直後、謎の声の主は床にゆっくりと真後ろに倒れた。
(はあ……はあ……まだ人が残ってやがったか……)
あまりにも突然の邂逅に、発砲した後の数十秒は息もできなかった。
全身から嫌な汗が噴き出していた。
重要な生き証人を殺したことよりも、もし無言で後ろから攻撃されていたらと考えると、仕方なかったことだと割り切ることは簡単だった。
謎の声の主、おそらくアレクサンダーという名の全裸男にライトを近づけると、額が見事に打ち抜かれていた。
「へ……へへ……俺の腕も捨てたもんじゃないな」
そんなことをつぶやきながらバクバクとなり続ける心臓を鎮めるために、振り返った時に口から離れたタバコを拾って咥え直し、ようやく平静を取り戻していく。
「チッ……気味が悪くなっちまったな。さっさと引き上げよう」
ブージがもう短くなってしまったタバコを吐き捨て、資料をこのまま放置して後で回収班に頼もうと考え、帰ろうと小銃を手に取り踵を返した時、
「いい腕してるねぇ、きみぃ」
またブージはとっさに小銃を向けようとしたが、体が反応しなかった。いや、反応する体はもうなかったのだ。
小銃を持っていたはずの両腕が根元からなくなっていた。
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