第3話 白煙
後ろから大声で叫んだバカのせいでブージの警戒は無駄になってしまったが、間違えなく廃墟の中まで聞こえるような大声だったのにもかかわらず、中からのレスポンスが何もないというのはこの廃墟に誰もいないのは間違いなさそうであった。
多少は持っていた警戒心も和らぎ躊躇なくブージは廃墟に足を踏み入れた。
廃墟の中は昼間であるにも関わらず薄暗く、床や壁などもところどころヒビなどがはいり、塗装も剥がれかけた様子が見て取れた。
部屋は十ほどしかなく、すべての部屋を見て回るのには十分とかからなかった。
そのほとんどには研究台であったであろう机や椅子しか残されておらず、有用な資料やサンプルなどは何一つなかった。
(マジでただの散歩になっちまったな……)
そんなことをブージは一人で考えながら一階の角部屋にあった、今にも壊れそうな椅子に恐る恐る腰かけ一服しようとタバコを取り出し口に咥えた。
火をつけようとマッチを取り出しこすろうとしたとき、
(うん?)
周りを薬品棚のようなものが並んでいることに気が付いた。
「引火とかしないよな……これ?」
そんなことをつぶやいたがもうとりだして、口に咥えてしまったタバコの魅力には抗えず火をつけた。
幸い心配が杞憂に終わり、気持ちよくタバコを吸い込んだ。
目下の心配事は途中までジープで来た道をすべて徒歩で帰らなくてはならないことであったが、そんな現実から目を逸らし煙幕でも張るようにブージは白煙を吐き出した。
「うん?」
その時、白煙が妙な揺らぎを見せた。
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