第18話 そのため

まだ、娘が保育園の年中さんだった事、

保育園が、実家(団地)の真下にあった事もあり

実家から、5分ぐらいの場所への引っ越しだったが

驚くほど快適な暮らしが始まった。


たしかに、古い建物だったが、実家が古い建物だったせいか

あまり困る事はなかった。

なにより、快適だった。自由だった。

娘を保育園に連れて行き、仕事へ出掛け、

帰りは迎えに行き、お風呂、洗濯、食事と

今までとやっている事は変わらないハズなのだが、

ものすごい解放感だった。


危険なものや触られたくない物は、手の届かない所にあるので

多少の娘のイタズラに怒らなくて済むのが、1番ラクだった。

やる事さえこなせば、ビールを飲んでも、何本タバコを吸おうが

誰にも文句を言われないのも快適だった。


何よりも自由を感じたのは、休みの日に

1日中、家で好きなように過ごせることだった。

実家にいる頃は、平日の休みの日がバレると、

家中の掃除やらなにやら予定を入れられてしまうので、

ほぼ外出していなければならず、

唯一の娘と一緒の休日である日曜日も、

洗濯や掃除(母は壁の隅々まで拭き掃除を求めるレベル)が終わると、

母が家にいるので、ほぼ外出していたからだ。

母は、孫を可愛がってはいたが

『毎日は疲れる。家でゆっくりできない』と言っていたので

外出するしかなかったのだが、

『金もないくせに、よくでかけるねぇ』とも言っていた。


実家にいる時は散々

『すぐ出て行くって言ってたくせに何年いるつもり?』と言っていたが

引っ越し先を決めて、保証人を頼んだ時には

『あと1年、貯金してからの方がいいんじゃないの?』と引き留められたりした。

結局、私は、母がいつも何を言いたいのかは理解できなかった。


でも、そんなことはどうでもいいや、と思えるほど

娘との2人暮らしは快適に、楽しく過ごしていた。


もちろん、家計簿はつけておらず、母には1度も提出しなかった。





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