第16話 そこでも

母たちが帰っていくと

クズお得意の『疲れたから・・・』で、

また数日、仕事を休まれた。


全く離婚に向けて進展する事もなかった来訪に落胆したものの

私は、懲りずに毎日のように母に電話した。

相変わらず『離婚には反対だ』という母に

辛い事、イヤな事、嘘をつかれた事、約束を守って貰えない事、等々

毎日、電話しては、毎日訴え続けた。


『話し合いには参加しなくていい』

『話が中断しない様に、赤子の面倒を見てくれるだけでいい』

と、言い続け、3か月目に、やっと母が折れてくれた。

また、冬が近づいていたので、私も必死だった。


クズとの話し合いは、1時間程で終わった。

あまりにあっけなさすぎる、と思ったらしく

口を出さない予定だった母の口出しで1時間延長はしたが、

結果は変わる事はなかった。


次の日、朝から『報告にいってくる』と言って出て行ったクズが

なかなか戻らなかったが、さすがに母も諦めたらしく

荷物を纏める私を横目に、孫と遊んでいた。


夕方になり、やっとクズから連絡が来て

義父母が来るといいだした。

義父は、離婚にもう反対し、クズの嘘を鵜呑みにしていた。

私は、義父にも判りやすく、約束を破っている事を説明した。

前回の離婚騒動から、まだ半年も経っていないのに

どうなってるのか教えて欲しいのは私の方だ、とも言った。

義父母からの猛攻撃に会っている時も、母は何も言わなかった。

期待もしていなかったし、それで良かったが、

義父が母に

『子どもの言ってることを信用するのが当たり前ですよね?』

と、同意を求めた所から、一気に風向きが変わった。

母は、義父に

『そんなに信用できるお子さんでいいですね、羨ましいです』

『私は、この子の事は、全く信用できませんから』

と言ったのだ。

ヒドイ事を言う親だなとも思ったが、この言葉で

義父はなにやら考え込み、離婚する事に納得してくれた。


そうして身の回りの物だけを持ち、私は実家へ帰る事になった。

他の荷物は、また別日に取りに来ることになった。


そして、私は、10数年ぶりに実家で暮らすことになった。


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