第14話 そもそも
長い冬だった。
春になっても、クズの言動が変わる事はなく
ますます増長していった。
すでに離婚の意思を固めていたので、
春の終わりに、子を連れて家出した。
必要最低限の荷物を持ち、
残りの最低限は、宅急便で送った。
離婚したい理由と、離婚届、結婚指輪を置いていった。
春になってすぐに、母に離婚したいと告げてはいたが
『離婚は反対』と、聞く耳すら持ってもらえなかったので
東京の友人宅にお邪魔した。
友人は、快く受け入れてくれて、
クズとは正反対に、急いで仕事から帰り
子と遊んでくれた。
置いて貰っているのだからと作った、ささやかな夕食にも喜んでくれた。
東京に帰ってきていることを母に伝えたが
『友人によろしく』と言われただけだった。
かくして、何度かの電話での話し合いの末
『きちんと話し合いを』とクズの両親がしつこいので
雪国へと、私が子を連れて出向かなければならなかった。
母は、話し合いには来なかったように思う。
話し合いでは、
クズの借金を、私が肩代わりさせられている分を今すぐ返済する事。
これ以上、借金を増やさない事。
家事や子育てにもっと協力する事。
その3点をきちんと実行する事と
破られた場合は、子は私が引き取り有無を言わさず離婚する事を
条件として、とりあえずは離婚しない事に応じた。
夏が本格化する前に、友人にお礼を言い、雪国へと引き上げた。
家に戻り、さっそく私が肩代わりしている借金を返済してもらった。
クズは、始めこそイソイソと家に帰って、子の世話をしていたが
長くは続かなかった。
『実家へ行って来る』といってはパチンコへ行き
部屋の窓から脱走して飲みに行ったりしていた。
完済したハズの、クズ名義の借金も増えて行った。
私は、3日とあけず母に電話し『離婚したい』と言い続けた。
『何も解決されていないどころか、
まだ1ヵ月しか経っていないのに元に戻ってしまっている』と。
『離婚には反対』との立場は変えなかったが、
『お盆休みに4泊5日で、そっちに行く』と言ってくれた。
これで、少しは話し合いが出来ると、ほっとした。
そんな上手くいくはずはないのだが、期待してしまう私は
つくづく愚かだったと思う。
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