第13話 そうすれば

この年の冬は、『近年、稀にみる大雪』と呼ばれるほどに

雪が降り続いていた。

クズは、相変わらず仕事帰りは、毎日のようにパチンコへ行き

『残業だった』と言い張った。

同じ会社に、知り合いがいるので、嘘はバレバレなのだが。

知り合いがいる事は、クズ本人も知っているのに

なぜ、そんなバレバレの嘘をつくのか、理解はできないままだった。


私は、吹雪のなか赤子を抱え、買い物へ行き

赤子が寝ているすきに、玄関前の雪かきをした。

雪を掻かなければドアがあかなくなってしまうからだ。

だが、慣れない雪かきは全く捗らず、次第に諦めた。

ドアが開かなければ、クズが、自分で雪を掻いてドアを開けるだけなのだから。

ついでに周りの雪も掻いてくれないかなぁという期待は

思っているだけでも、直接伝えてもかなう事はなかった。


日々の生活に必要な最低限の買い物は

徒歩で5分の距離にスーパーがあったので

どんなに吹雪いていても、子を自分のコートの中に押し込めて行けば

なんとかなった。

賛否はあるだろうが、まだ寝がえりもおぼつかない時期や

寝返りを完全にマスターしてしまえば

猛吹雪の日は、子が寝ている隙をついて

1人で買い物に行けば良かったからだ。


厄介な事が1つあった。

子のミルクやオムツなどは、徒歩20分のドラックストアにしか

売っていないのだ。

通常20分は、吹雪の日は30分以上掛る。

猛吹雪であったら40分は掛かる。

私は車の免許がない事を呪ったが、時すでに遅しだ。

こればかりは、クズに車を出してもらうしかなく

『休みの日まで動きたくない』というクズにお願いをしなければならないのだ。

ないと困る事を切実に訴え、懇願しなければならないのだ。


イヤがって買い物に出る割に、人の目があるところでは

クズは積極的に子を抱っこして運んでくれた。

私としては、オムツやミルクの方が重いので

そちらを持って欲しいのだが、なんのアピールかは判らないが

買い物中は、子を手放そうとはしなかった。


そんな長い冬だった。


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