第10話 そうやって

子供も出産予定日が2週間後にせまった頃、

私は、どうにか入院せず持ちこたえていた。

腹の胎児は小さく、どうにか予定日までは持ちこたえたいと思っていた。

あまりに小さく生まれてしまうと、

さらに遠い病院まで行かねばならず、それは避けたかった。


まだ2週間も前なのに、母は連日電話をよこした。

『まだ生まれないのか?』と。

あまりのしつこさに、ベビーベットにヌイグルミを寝かせた写真を

母に送ったりしていた。


そうして、律義に出産予定日の朝、陣痛なるものが来たのだ。

2560グラムと、ギリギリ未熟児でもなく、スーパー安産的な速さで

子は生まれて来た。

女の子だった。

入院生活で体力のない私は、そのまま動けなくなってしまったので

母にはメールで伝えた。

クズは自分の両親に連絡を入れていた。


体力がなかろうが動けなかろうが、もう子は生まれてしまったのだから

休む時間は少なかった。

幸いな事に、生まれてすぐ同室でメンドウを観ろ、という病院ではなかったので

少しは休めた方なのかもしれないが。

それでも、3時間置きに助産師が呼びにきて

出もしない母乳をあげなくてはならない。

まだ歩くのがおぼつかなかった私は、車イスで移動された。


翌朝、少しは回復し、歩けるようにはなっていたが

疲労はMAXだった。

義両親にも、子を見に来ることは遠慮してもらっていたのだが

夕方、突然、母・叔父・祖母の一行がやって来たのだ。

確かに、その日から世間は3連休ではあったが

何も聞かされていなかったので驚いた。

しかも夕方なので、面会時間もすぐ終わる。

『明日の昼過ぎに、また面会来てから帰るから』

『赤子、相撲取りみたいで、ブサイクね』

と言って帰って行った。

クズが、それを義両親に伝えてしまったらしく、

私は、文句を言われた挙句、明日は義両親も来ることになってしまった。


母は、約束通りの時間に来たが、義両親は30分ほど遅れて来た。

しかも、なぜか義兄夫婦までいる。

人数が人数なので、面会用の部屋に移動したが

寝転がれる訳もなく、会話もなく、ただただ疲れた。


私の都合は、母だけでなく、義両親にも関係ないようだった。

母は、遅れて来た義実家の人々を

『配慮がない』と言っていたが、母にも十分配慮はないなと思った。




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